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第二章『"生徒会長"中島なかじまアオイ』

 

――これ賢、これ徳、よく人を服す。(蜀の初代皇帝・劉備玄徳りゅうびげんとく)――

 

 目の前の敵をにらむように見据える。刀を持つ両手に力がかかるのを感じる。ふいに、敵が動く。
「やぁっ!」
 私は相手の動きが完了する前に相手に肉薄しようと刀を構えたまま距離をつめる。相手の動きは刀を真横に向ける構え、とても攻撃に向くものではない。おそらく何らかの"術"の行使だ。"術"が一切使えない私では"術"に対処するのは困難だ、ならば"術"が完成する前に叩くしかない。
 まもなく刀の届く距離。………今だ! 私は刀を左下から右上へ一文字に振るった。
「てやぁ」
「ふっ」
 カラン、何かが落ちる音がしたと同時、敵は私の刀をぎりぎりで回避して私の手首をつかんだ。
「ふぇ?」
 思わず妙な声が出た、直後。ドシンという音とともに私は地面に叩きつけられた。関節が極められ、腕を動かせない。
「私の勝ちですね、アンジェさん?」
「う、はい。ありがとうございました」
 こちらを見て微笑む――少し勝ち誇った表情で――敵に私は相手をしてもらったお礼をする。と、同時に私の体の動きを制限していた敵の……いや、中島さんの手が私の体から離れた。

 

「太刀筋は悪くありません、実戦経験の差でしょう、もっとも、対人の実戦経験なんてない方が良いのですが」
 と、中島さんが私に模擬戦の感想を言ってくれる。
「それはまったくですな。そういえば、君の父は実戦で技が磨かれるのが良いと君には基本しか教えなかったと聞く」
「ええ、それは事実です。と言ってもよく模擬戦をしてくださるので技は盗みやすいですが」
 そこへ守宮殿がやってきて、中島さんはそちらと話を始めてしまった。
 ……父上、か。さて、先に着替えて学校の準備をしておこう。

 

「おっはよー、アンジェ~」
 登校中、後ろからヒナタに抱き着かれた、
「うーん、これは汗の匂い。しかし、走っていたわけではない…………。朝からあの大きな道場で運動でも?」
 くんくんと鼻を鳴らしながらヒナタが囁きかけてくる。しかも、そのまま胸元にヒナタの手が動いていく、何やら指が怪しい動きをしている。
「な」
 左腕を大きく後ろに回してヒナタを払いつつ、ヒナタの方へ振り向く。
「いきなり人の匂いを嗅ぐなんて、へ、へ、変態ですか、あなたは」
「別に誰の匂いでも好き勝手嗅ぐわけじゃないよ、アンジェだけー」
 羞恥と混乱の中、なんとか絞り出した不満にヒナタはなにかおかしいことでも? とあっさりとした返事を返してくる。
「それから、アンジェ~、それ」
 と、ヒナタが手首だけ曲げて人差し指で腰のあたりを示す。
「ん?」
 そこには私の腕があった。両腕だ。片手で鞘を掴み、もう片手で刀の柄を握る。丁度そんなポーズを取っていた。もちろん、そこには刀などない。
「あはは、変なポーズー」
 思わず固まってしまった私にヒナタが笑う。
「ま、また私を馬鹿にして。これは…………、これは、つい癖でやってしまっただけです」
「癖で?  あはは、癖でって」
 さらに笑うヒナタ。まぁ、私が本当に刀を振るっているなんてこと、ヒナタが知るはずはないのだから、ゲームだかアニメだかの影響でよくこんなポーズを取っている、とかそういう誤解でもしているのだろう。
 というか……。
「ヒナタ、あなた……私の家を知ってましたっけ?」
 確かにこの辺りでは如月は珍しい苗字だ。表札を探せば見つけられるもしれない。しかし、わたしの家は月夜家だ。表札も月夜としかかかっていない。適当に探して見つかるものではない。
「あなた、まさか……」
 私の家を知るためにストーカーに手を染めたというのか。いや、友達なんだから自分の家くらいむしろお招きしてもおかしくない。事実、アキラは知っている。ただ、ヒナタは常々私に対する言動が色々と怪しく、つい誘わずにいたのだが……。
「いやいや、アキラに聞いただけだよ。二人で歩いてた時にね、ここがアンジェの家だーって。おっきな道場だよねぇ」
 なるほど、筋は通っている。
「そんなことより、早く行こ」
「え、えぇ。そうですね」

 

「アンジェちゃん、お客さんだよ」
 それは休み時間のこと。アキラが私に声をかけてきた。
「お客さん?」
 教室の外を見ると、なるほど、そこには生徒会長の中島さんが立っていた。
「何かご用ですか、生徒会長」
 私は、務めて他人行儀に中島さんに尋ねる。基本的に、魑魅魍魎がらみの話というのは隠されていなければならない。私と中島さんは魑魅魍魎がらみでしか関わりがない。下手に知り合いのように応対し、誰かにどこで知り合ったのかと聞かれると面倒だ。
「来なさい、如月アンジェ」
 向こうも同じらしく他人行儀に歩いていく。……普段からこのような喋り方のような気もするが。
 案内されたのは部室棟の使われていない部屋だった。
「放課後でもいいかと思ったのですが、」
 私が部屋に入り扉を閉じると、中島さんは振り向きながら話し始めた。
「放課後に少し用事が入ってしまいましたので今のうちに案内することになってしまいました」
「えーっと、昨日言っていた、学校は狙われているという話ですか?」
「そうです。最初に説明しておきます。この部室は生徒会の権利を使って確保してあります。左右の部室も無人。こっそりと会話するにはうってつけです。今後はこの部室に集合してください」
「誰も使ってないはずの部室にこっそり入っていくのが見えたら怪しくないですか?」
 権利の乱用ではないのかと思ったが、それよりも気になったことがあったので聞いてみる。
「そうですね…………。表向きは生徒会手伝い用の控室、とでもしておきましょうか。生徒会室とは少し距離がありますが、まぁ生徒会に変に突っ込みをしてくる生徒もいないでしょう」
 生徒会長って便利だな、と少し思った。
「もちろん、正直、こういった活動を楽にするためにこの立場にいます。実際、重要な龍脈結集地の学校の生徒会執行部メンバーにはだいたい一人は私たちのような事情を知っているものがいます。教師の場合もありますが」
 私の考えを読んだのか、そんな答えを返してくる。魑魅魍魎がらみの問題があった時、学校に影響を与えられる存在がいると便利なのだろう。
「完全にこれは余談ですけど、”私たち”の中には直接戦わずにそういった部分で”戦う”人たちもそれなりにいるのです。私はたまたま都合がよかったからですけど」
 はぁ、とため息を一つ。
「さて、では本題です。あなた方は普段、瘴気狩りをしているんでしたね?」
「はい。といっても、先日が初陣ですが」
 瘴気。毒々しい色をした霧のような”何か”。とっても簡単に言えば魑魅魍魎が気体のような状態になっている時の姿だ。
「えぇ、存じています。この地は大きな龍脈が通っていますから、瘴気もそれなりの頻度で出現しますから、また今夜にでもあなたの出番が来るでしょう」
 龍脈というのが何なのかは知らないけど、ここは瘴気が多い、というのは知っている。
「しかし、あなたにお願いしたいのは瘴気の相手ではないのです」
「え?」
 瘴気、それは私達が相手をする魑魅魍魎のことではないのか?
「やはり、瘴気以外の敵についてはまだ教えられていないのですね。……もうすぐチャイムが鳴る時間です。続きは放課後にでも。お二人の友達と別れたら、気づかれないように学校に、この部室に戻ってきてください。私はあなたが戻ってくるまでに用事を済ませておくので」
 そういって、中島さんは部屋を出た。と、すぐにチャイムが聞こえてくる。まずい。

 

 そうして放課後。いつも通りに、ということだったので、アキラとヒナタと三人で帰路についた。
「ねー、アンジェ―。生徒会長とどういうお話だったのー?」
 ヒナタが私の方に腕を載せて顔を近づけてくる。
「別に、ヒナタには関係のない話ですよ」
「へー。全体的に学業成績も素行も私の方が上なのになぁ」
 ……ん?
「あなた、あれだけ日ごろ居眠りしておいて、素行良好のつもりですか」
「ん? 私、顔を伏せてるだけで話は聞いてるよ? アンジェみたいに当てられて困惑したことないもーん」
 くっ。悔しいがその通りだ。明らかに寝息すら聞こえるのに、当てられたら即座に起き上がって回答する。
「それに、運動系の記録も私の方が上だしなー」
 それもその通りだ。普段から体を鍛えてる私よりヒナタの方がだいたいの記録が上だ。さすがに剣道では負けなかったが。考えてみたら無茶苦茶度合では魑魅魍魎よりこいつの方が化け物ではないだろうか。
「でも、私もアンジェちゃんに何の用事だったのか気になるな」
「あれ、アキラも知らないんだ」
「アキラとおしゃべりするなら私の肩から腕をどけてください。というか顔を近づけないでください」
「あれ、嫉妬? 大丈夫、私はアンジェしか眼中にないよー」
 どういう解釈だ。さらにヒナタが私に体を近づけてくる。
 アハハ、とアキラも苦笑いだ。というか少し引いてる? お願いだから私を同類とみるのはやめてほしい。
「そ、そろそろいつもの三叉路ですよ。また明日、ですね」
「んー?」
 ヒナタが口の右端に右人差し指を当てて、妙な視線をこちらに向ける。
「私、アンジェの家にちょっと行ってみたいなー?」
 なんで今日に限って。
「別にいいでしょ? 特に用事はないって言ってたよね?」
 怪しまれてはいけないと思い、用事はないと答えたのだ。
「え、えぇ。しかしだからと言って、ヒナタを迎える用意があるわけでは……」
「別に私はそんなの構わないよー」
 くっ、図々しい。
「ヒナタちゃん、アンジェちゃんは月夜家ってところに居候させてもらってる身なんだよ。そんな簡単に人を招けないよ」
「ふーん、そうなの?」
 アキラが助け舟をだしてくれる。
「え、えぇ。そうですね」
「そういうことなら仕方ないなー。またね、アンジェ」
「えぇ。それではまた」
 私は二人と分かれ家の方向へと歩いて行った。
「それにしても居候なんて、アンジェも苦労してるんだねぇ」
「うん、そうだね」
「本当、大変だね、アンジェ」
 後ろからヒナタとアキラの声が聞こえてくる。まだ三叉路で会話しているようだ、大きく回り道するしかないか。

 

「来ましたね、アンジェ」
「ごめんなさい、ちょっと回り道してきたので」
「別に構いません。むしろ見つからないように配慮感謝します。あ、あなたもそこへどうぞ」
 中島さんは椅子に腰を掛けた。言葉に甘えて私も座ることにする。
「さて、昼の話の続きですが。あなたが相手してきた瘴気は世界中で散見される怪異です。しかし、怪異は瘴気だけではないのです。例えば、妖怪、幽霊、悪魔といった伝承で語られるほとんどのオカルトは、実在する怪異なのです」
「え。確かにその話は聞きました。でもてっきりそれらも瘴気による被害が生み出したものだと」
「厳密に言えば、そう考えている派閥もあります。実際にはそうは考えていなくても、世界中に存在する土着の怪異を全部瘴気の名のもとに統一してしまえば説明も省けますからね。月夜家は宮内庁を含む霊害関連の組織と共同しながら世界中を旅しているので、そういう風な説明を徹底しているのでしょう」
「実際は瘴気と関係ない怪異も多いってことですか?」
「そうです。瘴気はそもそも、龍脈……オカルトな力が湧いてくる場所だと理解してください。ともかくそこから染み出たニュートラルな”力”が何らかの要因で変質したものです。実際、瘴気の被害は龍脈上に集中している。幽霊や妖怪、悪魔といった怪異は違います。そういった法則性と関係なく出現します。アメリカのセイレム魔女裁判を知っていますか?」
「いえ、知りません」
 聞いたこともない。高校の学習指導要領外ではないだろうか。
「そういう事件があったのです。集団ヒステリーだの様々な説がささやかれていますが、この事件は人の心を犯す怪異、霊団の大量発生によるものでした。しかし、セイレムは龍脈の支流すら通っていない辺境の地なのです。龍脈の通っていない地で発生した怪異の大量発生は他にもあります、例えば――」
「い、いえ。これ以上は結構です。私は別に瘴気と関連のない怪異について疑っているわけではありませんから」
 これ以上放っておくと延々と例示を並べそうだと感じた私は、慌てて止める。
「そうでしたね。さて、龍脈とは関係ないという話をした手前ですが、怪異達は龍脈の下にいたほうが基本的に強い力を発揮できます。これは邪本使いマギウス魔導具使いウィザード古術使いメイガスといった魔術師たちも同じです。要するにオカルトな力を使う存在は龍脈のある場所を好むのです。そして、この辺一帯の龍脈の中心、それがこの学校です」
 魔術師? この世界には魑魅魍魎以外にもずいぶんたくさんのオカルトが実在しているようだ。
「なんでこの学校がそんなことに?」
「えぇ。普通このような重要な場所、龍脈結集地は神社や寺、教会のようなある程度善良なオカルト使いによって抑えられます。学校がそれに先んじるなど普通はあり得ない。もちろん、ミスカトニック大学のような例もありますが、ここはそんな魔術学校でもない」
 魔術学校なんてものもあるのか。それを学べば、あるいは私ももっと強くなれるのだろうか。
「まぁ、その辺はおいおい調査していきます。とりあえず、この学校は色々なものに狙われる土壌にある、ということです」
「まだ狙われる可能性があるって程度なんですか? それとも、もう襲撃されたりとか……」
「えぇ、来ましたよ」
 中島さんが立ち上がり、校舎と反対方向の窓に視線を向ける。
 何らかの感知能力だろうか。それが中島家の血の力?
「屋上に上がりましょう。連中、飛びついてくるつもりのようです」
 そういいながら中島さんはロッカーから刀を取り出した。
「え? いつの間に」
 二本も。言うまでもなくもう片方は自分のモノだった。
「ご心配なく、月夜家から許可は得ていますから」
 私の許可は? いや、まぁ確かにあれは月夜家に預けているものではあるけれど。そんな文句を言う隙も無く、中島さんは、私の刀を私に投げてよこすと、すぐに走っていった。おいかけないと。
「その刀、鞘からなかなか綺麗ですけど、業物なんですか?」
「えぇ、この刀、弥水やすいはお祖父上からお譲りいただいた大切な刀です。……あなたのその刀と同じですね」
「そう、ですね」
 階段を登りながら言葉を交わす。確かに、この刀は父上が死ぬ直前に譲ってくれたものだ。今となっては唯一の形見と言っていい。
 屋上の扉を開けると、そこには蜘蛛のような化け物がいた。真っ黒くて、しかも私達くらいの大きさのものが、数匹。
「下級悪魔の一種、でしょうか? とりあえず、足の先が手のように五本に分かれて物を握れる形状をしていますね。剛腕蜘蛛悪魔、とでも呼びましょうか」
 弥水という銘らしい刀を抜きながら、中島さんは冷静に分析する。いや、呼び名はどうでもいいけど。
「中島さん、どうしますか?」
「アオイ、で結構です。どうする、とは? 敵を倒す以外にやることが?」
 中島さん、改めアオイさんはこちらを一瞥し、再び敵に視線を戻すと、そのまま言葉を続ける。
「いえ、”術”で先制するとか」
「あぁ。私達中島家の血の力は戦闘向けのものではないので、それは考えなくても大丈夫です。それより、乱戦になりますが、大丈夫ですか? 苦手なようなら、私が一人で戦ってもかまいませんが」
 納得したように、視線は敵に向けたまま答えるアオイさん。
「大丈夫です」
 私も刀を引き抜き、中段で構える。
「では、私は三匹やります。あなたは残り二匹を」
「はい!」
 私が返事をするより早く、アオイさんは敵の集団の中に突っ込んでいき、同時に複数を相手取って戦い始めた。私も負けてはいられない。
「はぁ!!」
 一番近くにいた敵に刀を振るう。敵は六本の足でバランスを保ったまま前の二本の足を高く振り上げて、威嚇するようなポーズを取る。さすがにそんな動作に動じる自分ではないけれど、なんだか敵がいきなり大きくなったような錯覚を覚える。あと、剛腕蜘蛛という名前に則るならこれは足ではなく腕というべきなのだろうか?
「くっ」
 そしてその錯覚のせいか、私の刀は敵を掠るにとどまってしまう。そして、振るった刀を引き戻そうとする私の腕に敵が組み付いてくる。
「この」
 慌てて、組み付いてきた敵を蹴り上げるが、全く動じない。それどころか口と思われる場所を大きく開けて私の腕に噛みついてくる。
「キャッ」
 と、自分の胸元あたりが煌めき、敵が吹き飛んだ。
「かまれて、ない?」
 一瞬困惑するが、もう一匹がこちらに飛びかかってくる。慌てて刀で受け止める。
「これじゃ、攻撃できない……!」
「大丈夫ですか」
 アオイさんが近づいてきてその敵を一刀両断する。
「え、えぇ」
 アオイさんが倒したのは今ので三匹目のようで、残りは二匹になっていた。
 二匹の敵は顔のようなものを見合わせると、山の方へと飛び去って行った。
「くっ、逃がしましたか。……あなたは、まだまだ鍛錬が必要みたいですね。このままでは体術メインの怪異が現れた時、対処できなくなる」
「はい……」
 なにも否定できない。
「あいつらは下級悪魔。上級悪魔によって生み出された使い魔です。上級悪魔たちは常にゲームという形で争っていて、下級悪魔はそのための駒のようです。この学校に集まる力はそのゲームを有利に進めるにはうってつけの場所でしょうね。……今のところあの虫に類似した下級悪魔を使う勢力しか目撃されていませんが、今後、彼らとゲームで争っている敵もこちらへ戦力を差し向けてくる確率が高い。これから戦いは厳しくなる可能性が高い。このままでは困ります」
「……はい」
 要するにあいつらは兵士で、指揮官がいて、ここは燃料とか資源を手に入れられる拠点だからここを狙っている、ということか。このあたりでこの学校が一番の拠点だとすれば、敗れてもさらに大きな戦力を差し向けてくるだろうし、お互いこの拠点を取りたいわけだから、どちらもこちらを狙ってくるだろう。ヒナタと遊んだ戦略ゲームを思い出す。
「まぁ、一度帰りましょう、守宮殿と相談も必要ですし」
「はい」
「刀はロッカーに戻しておいてください。今後は学校を拠点として行動してもらいます。瘴気もこの学校の周辺地域に一番多く出没しますし、特に問題はないでしょう」
「分かりました」
 気のない返事を返す。頭の中はさっきの戦いでいっぱいだった。全く、手も足も出なかったのだ。
「あ、そうそう。さっきの下級悪魔を吹き飛ばしたのが、如月家の血の力なんですか?」
「え?」
 血の力。長い歴史を持つ討魔師の家系がもつ秘術だ。でも、私は如月家のそれが何なのか知らない。さっきのが、そう……なのだろうか。
「如月家の血の力は宮内庁のデータにもありませんでした。防御系、なのでしょうか。それとも、何らかの力の制御?」
 アオイさんが自分の見解を色々と話している。宮内庁にもデータがないのか……。
「あ、そうですね。如月家は何らかの理由があって、他人には血の力を話さないと決めたのです。あまり詮索するべきではありませんね。失礼しました」
 そうなのか……。もし、父上があそこで死ななかったら、今頃私もきちんと血の力を使って戦えたのだろうか……。
 もし、もしもそうなら、私は次の戦いできちんと勝利を収めることができるのだろうか。

 

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