アフロディーネロマンス 第2章

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 『雪のちらつく夜だった。とても、月がきれいだったのを覚えている』(『Angel Dust』(著・Merry Amor)より)

 

「で?」
 ベンチに座った千晶が冷ややかな目で太一を見る。近くの公園に移動したのだ。
「あなた、覚えてるわよ、よくイベントに来てくれてるわよね。さっきのは何? ARを使って私を脅かして、あまつさえ助けたフリをして恩でも売ろうってわけ?」
 太一はその冷ややかな目を見て、密かにあっきーってオフだとこんな感じなんだ、と言う驚きと、覚えてくれてた、という喜びを噛み締めつつ、そして、慌ててもいた。憧れのアイドル、あっきーこと千晶は先程の戦いを太一の自作自演だと思っているこれは良くない。最悪出禁になる可能性もある。そうなっては生きてはいけない。
「い、いや、そんなんじゃない。今のはこのアフロディーネ・デバイスって装置の機能で、空間を情報方向に拡張してこのデバイスの装着者が招いた人か装着者以外立ち入れない空間を作れるんだ」
「ふぅん。許可なく相手に拡張現実ARを見せるってこと?」
「ARじゃないんだ。本当に空間を生成してるんだよ。ほら、こんな風に」
《Please set key》
《ムサシ》
《ピグマリオン:ムサシ》
 アフロディーネ・デバイスを起動する。
「空間を展開」
convert data entity expansion space情報実体空間を展開
 デバイスのボタンを押すと太一が先程の白い世界に移動し、千晶の視界から消える。
「な?」
「……なるほどね、じゃあそれが事実だとして、あなたはその装置で私をその空間に拉致したってわけ?」
「な、違う、違う、そうじゃないって」
 千晶の前提にある「太一の自作自演」と、先程までの太一の説明を複合すると千晶の解釈は自然ではあった。太一は慌ててさらに情報を加える。
「えっと、あれは別の、あのテケリリスライムを召喚したやつが生成した空間なんだ。あっきーはそう言うの興味ないって言ってたからわかんないかもしれないけど、あのスライムは安曇って奴が使役してる敵で……」
「つまり、あなたとは別にレプリショゴスを私にぶつけて面白がったやつがいるってこと? 幾ら何でも都合の良い主張すぎる……」
「へ? レプリショゴス?」
「あ」
 千晶はあくまで信用していないようだったが、太一が思わず聞き返したことで、自身も自分の言葉に気付いて止まる。太一は一度もレプリショゴス、などと口にしたことは無いのに、そう言ったことに関心がないと言ってたはずの千晶があの生物をそう呼んだのだ。
「あ、違うわよ、たまたま、アンジェ好きのファンがいただけよ」
「そうか」
 確かにファンの中には色々な人がいる、そういう事もある、のだろう。
「な、なら、分かってくれよ。力を使うにはこのオーブが必要なんだ。これの持ってるオーブはムサシのオーブだけ。実写版で演じてたからムサシは知ってるだろ?」
「まぁね。散々な評価だったけど」
「そんなことは無い。俺は三魔女ならドラマ版が一番大好きだよ。もちろん、その中でもあっきーの演じるムサシが一番だ」
「……なるほど、だから真の太刀の色が緑だったのね」
「へ?」
「……ファンから聞いたのよ」
 実はあっきーは隠れオタクなのでは、と疑い始めた太一だったが、状況を不利にしたくないので追求しない。そう、真の太刀は原作では無色透明。アニメ版では白い輪郭のみ、という演出だった。緑色の着色が行われているのはドラマ版の設定なのだ。
「で、このオーブは一人一つまでしか使えないんだ。趣味でガラテアを倒して集めてる奴もいるけど、あくまでトロフィー代わりで意味はない。あ、ガラテアってのは」
「もうたくさんよ。分かったのは、あなたがよっぽどの私のファンで、あなたにはさっきの状況を作れたらしいってことだけね。レプリショゴスがあなたのものじゃないことは私には判断がつかないわ」
 千晶が立ち上がる。
「待ってくれ。本当に俺はたまたま通りかかっただけなんだ。頼む、出禁だけは……」
《シン》
「え?」
 太一が振り返る。聞こえたのは確かにピグマリオンオーブの起動音声だった。
 そして暗闇から公園の明かりに照らされてその男が現れる。なかなかのイケメンだ、いや、要点はそこではない。腕に装着されたアフロディーネ・デバイスと、手に持ったピグマリオンオーブ、そして何より……。
《ピグマリオン:シン》
 聞いたことのない、そのピグマリオンの名前。
「死神……」
 男が”変身”し、最初に聞こえたのは千晶のそんな言葉。まさにそう、男はフードを被り、死神のような巨大な大鎌を装備していたのだ。

 


 

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