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鏡の空と雨の夜
 
 

by Merry Amor

[まえがき]
 この物語は別世界で実際にあったことですが、この世界においてはフィクションであり、実際の人物名、団体名等とは一切関係がありません。またこの作品内の描写は作者の政治的、宗教的思想とは強い関連性はありません。

 

[本編「鏡の空と雨の夜」]
 その一日は何の変哲もない朝から始まる。当たり前といえば当たり前。空見鏡也そらみきょうやは目覚まし時計の耳障りな音にたたき起こされ目覚まし時計を停止させるのに労力を使いその過程で睡魔に打ち勝ち目覚める。おおよそほとんどの学生が経験するような目覚め方でベッドから体を起こす。

 ベッドから体を起こした俺が最初にすることはカーテンを開けることだ。本音を言えばもっともっと後回しにしたいのだが、問題を先送りにするのは好みではない。カーテンを開けるまで外の様子は分からない。それはつまり俺がカーテンを開けるまでカーテンの外が俺によって都合よいようになっているかあるいはそうではないかは確定しないわけだが、それはあくまで理屈上の話。結局は外に出るまで、あるいはのちにカーテンを開くまでどっちだか分からずモヤモヤするだけのことだ。
 俺はベッドから降りて目の前のバスタオルでふさがれた鏡を見て、そして右手にある窓の前に立ち、カーテンを開く。
 カーテンの向こう側にあるのは、見たことないような異世界でも、核戦争後の崩壊した世界でもなく、いつも通りの街並み。そして、曇り空。雲を貫通して届く日光に対し背伸びをしながら俺は自分の覚醒を意識する。太陽光はサーカディアンリズム、いわゆる体内時計をリセットする作用があるというが、確かに起きて太陽の光を浴びるとより目が覚めていく気がする。
 そして、あぁ。よかった。空は曇り空だ。俺の一番大好きな天気。
 安心した俺は寝室を出てダイニングへ向かう。そこでは俺の母親が朝ご飯を作って待っている。父親はもうとっくに家を出たようだ。別に特別なことでもなくいつものことだ。俺は父親とあまり顔を合わせたことはない。仕事に出るのは早く、帰りは遅い。もちろん、父親がそうやって働いてくれるからこそ、母親はいまどき珍しい専業主婦をやっていけるのだ。以前、母親が「あの人は家事がからっきしダメだから、私を働かせるくらいなら、自分が二倍でも三倍でも働いてやるって言ってがんばってるのよ」と言っていたことがある。当時はよく分からなかったが、高校生になった今ならなんとなく分かる気がする。料理なんてからっきしだ。
 テレビから聞こえてくる天気予報により思考が途切れる。
「~ので曇り空が続きますが、昼からは晴れるでしょう」
 せっかくの楽しい気分が台無しだ。
 そんなことを考えているうちに家を出る時間になる。カバンの中身を最後に念のため確認して。
「いってきます」
 扉を開けて外の世界へ、自分たち学生の持つもう一つの居場所、学校へと向かった。

 そして学校だ。特に小難しい説明は必要ないだろう。日本に住む誰もが一度は通ったことのある場所、友達とバカ騒ぎし、授業を受け、そしていつかは卒業していく場所だ。季節ごとにある催し以外、妙なイベントもなく平和な場所だ。
 ……いや、そういえば一つ最近変わったことがあったな。
「おはよう、空見君」
 教室に入り席に着こうとすると隣の女子が挨拶してくる。
「あぁ、おはよう、天使あまつか
 彼女こそが最近変わった出来事の中心人物、天使深雪あまつかみゆきだ。一か月前に転校してきた、それ自体はまぁあり得ないことではない、もう一つ、彼女はとても、美少女なのだ。転校初日から、男子の間ではとっても話題になった。そして、その後しばらくしてまたしても話題になった、それは……。
「HRはじめるぞー、お前らー座れー」
 そこへ担任の教師が入ってくる。そんなに時間ぎりぎりだったのか。急いで荷物を自分の机の横に置き、椅子に座る。

 12時40分、三限目が終わり、昼休みが始まろうとしていた。さぁ昼飯だーと、元気のいい男子グループが騒ぎ始める中、俺は窓の外を見て、ため息をついていた。
「晴れ間がのぞき始めたわね。もう30分もしたら、すっかり晴れちゃうんじゃないかしら」
 びっくりして思わず体が反応する。別に驚くようなことではない。隣の席の天使がいきなり声をかけてきただけだ。
「そ、そうだな」
「あなたが晴れ空を嫌いなの、気づかれてないと思った?」
 今度は本当に硬直する。誰にも話したことがない秘密。天使が転校してきてしばらくしてきてから新たに話題になった一面、それは、彼女が見透かすような発言を繰り返す、ということだった。彼女に誰にも言っていない秘密を暴かれた者、数知れず。今や彼女は美人だけれど不気味だから遠巻きに眺められる高嶺の花、といった存在だ。こちらに関しては男子に限らず、女子からも同じだ。天使が誰とも一緒にならず一人で自分の席で弁当を食べているのはそこに起因すると思われる。……そんな客観的な解説を頭の中で繰り広げることで冷静さを持ち直す。しかし……、
「…………ねぇ、もう二度と晴れ空が来ないようになれば、って思わない?」
 天使は、その名前に似合わない悪魔のような表情で俺の冷静さを再び打ち砕いた。

 

「何で来てるんだろ、俺」
 俺は今、石造りの階段が始まる直前にいる。見上げれば鳥居が見える。ここは神社だ。……鳥居の向こうに見えるものを感じて目をそらす。俺は、晴れ空が嫌いだ。晴れた青い空を見ていると、それが自分を映し出しているように感じるのだ。いうなればそう、青空は逃げ場のない大きな鏡だ、少なくとも俺はそう感じる。俺は昔から鏡が苦手で、鏡を連想させる青空はもっと嫌いだった。
「……行くか」
 本当に晴れ空が出なくなるなんでことありえない。天使が変なからかい方をしてきただけだ。でも、なぜだろう、彼女の真剣な目を見ると、嘘には思えなかった。
 階段は随分長い。もともと階段に来るのさえ大変だったが。この神社は山の上にある。階段が始まるまでもずいぶんな山道で、ふと踊り場で振り返ると、ビルがニョキニョキと生えている風景を一望できる。隅っこのほうには小さな民家と大きな風車が並び、そしてその奥には山が、緑色の壁のごとく立ちはだかっている。俺の住む街はほぼ全部が山で囲まれている。街を出るには俺のように山を登って超えるか、いくつかの国道や線路の先にあるトンネルを抜けるしかない。
 そして登り切り、鳥居をくぐる。
「本当にあった……」
 鏡だ。鏡といっても俺の嫌いな鏡みたいに完全に自分の姿を映し出すわけじゃない。とってもきれいに石を磨いて、反射するようにしたものだ。詳しくないけど、なんか大昔によく祈りなんかに使われていたようなものじゃないだろうか。ほら、日本神話の三種の神器にもなんとかの鏡って名前の鏡があったはずだ。
 鏡の周り、その建物はすでにボロボロなのに、鏡だけは不自然に、美しい状態を保っていた。今鏡はこちらにきれいな装飾が施された側、裏面を見せている。ふと気になって回り込んで表を見てみると。
「!!」
 ただの石の……はずなのに……。その"鏡"はこちらを見ていた。鏡に映る自分が、まるで自分を見透かすように"自分の姿が映し出されていた"。
「………」
 思わずあとずさり、何を思ったか空を見上げる。"当然"、そこには自分が写っていた。
『…………ねぇ、もう二度と晴れ空が来ないようになれば、って思わない?』
「わぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
 ガシャンと、音を立てて鏡が砕ける。
「……え?」
 気が付いたら、自分は握りこぶしのまま腕を伸ばしていて、台座から落ちた鏡が砕けている。
『そこの山の奥に神社があるのは知ってる?』
「……やった、のか?」
 自分の握りこぶしを見つめる。
『そこに鏡が一枚あるの、それを砕いてきて』
「これで、晴れ空が、消える?」
 空を見上げる。
『そうしたら、もう二度と晴れ空なんて来なくなるから』
「……なんだ、消えたりなんて、しないじゃないか」
 空に映った自分の姿を見て、思わず頭を下げて。大きく息を吐いて肩を落とした。
「帰ろ」
 それが当然の帰結。砕けてしまった鏡のことは気になるが、だからといって修復することができるわけでもない。覆水盆に返らず、というやつだ。それにどうせ、もう誰も来ない寂れた神社なのだから。

「鏡也、おかえり。遅かったわね」
 母親が出迎えてくれる。
「あぁ、ただいま。ちょっと友達と寄り道してて」
「そう、まぁ夏が近づいて、日が長いものね」
「うん、そんな感じ」
 母親との会話もそこそこに二階に上ろうとすると、
「そうそう。さっきえーっと、天……使ちゃん? が来てたわよ」
「え、天使が?」
「えぇ、いつのまにかあんなかわいいガールフレンドを作るなんて、鏡也も隅におけないわね」
「そんなんじゃない。それで、何しに来たの?」
「さぁ、帰ってきてないわよって伝えたら、伝言だけって言われて」
 伝言?
「『鏡の件、ありがとう』って」
「!」
 ドクン、と心臓が高鳴るのを感じる。見透かされてる? どうして? まさか、どこからか見てたのか?
「それじゃ、晩御飯作るわね」
「あ、あぁ」
 まぁ、鏡を壊したところで何も起こらなかったのだ。どうせ、何も問題はないさ。ただ、ちょっと脅かしたかっただけだろう。俺が帰ってきてなかったから、鏡をどうにかしに行ったと判断したに違いない。もし、俺がいたら、「なんだ、結局壊しに行けなかったのね」なんていってからかうつもりだったのだろう。なんだ、考えてみれば、別段推測できないことじゃないじゃないか。
 さて、と、安心して……、晩飯まで少し寝るか。

 ザーザーという耳障りな音で俺は目を覚ました。雨の音だろう。青空は確かに嫌いだが、間違っても大雨は好きじゃない。というか好きな人などいないだろう。ちょっとした雨なら好きというやつもそれなりいるだろうが、いくらなんでも大雨が好きというやつはいないだろう。大雨は人の移動を妨げ、時には人の命すら奪う。いや、まぁそこまで行くのはごくごくわずかな例かもしれないが。
 一階に降りてみると。
【晩御飯の食材が足りなかったので少し買い物に行ってきます】
 と書置きが。時計を見るともう20時だ。少し遅いな。いつもなら既に晩御飯になっているころだ。父親が帰ってくるのがここまで遅いのはまだまだあり得るとしても。まぁ、この大雨で少し移動が大変なのだろう。もう少ししたら帰ってくる。俺はそう楽観し、テレビをつけることにした。
「突如発生したゲリラ豪雨はまったく止む気配を見せず、地域住民に避難を呼び掛けています」
 つけたテレビがいきなりそんなことを言い出した。いや、もちろんテレビが言ったわけではなくテレビのアナウンサーが言ったのだが。それより、地域住民に避難? もしかしたら母親は出かけた先で誰かに言われて先に避難したのかもしれない。連絡くらいほしかったが俺は携帯を持っていないし、難しいだろう。それにしたって家の非常食辺りは持ち出してしかるべきだ。もしかしたらまだスーパーにいるという可能性もある。
 とりあえず、非常用セットを持ってスーパーまで行って、母親がいないようなら避難所に行ってみよう。
 玄関に行ってみると、傘が三本とも置いてあった。うちの家には傘は五本ある。うち三本が今玄関に置いてある普通の傘で、残り二本は俺と父親が常に持ち歩いている折り畳み傘だ。折り畳み傘はあくまで携帯に優れているだけで強度や広さは普通の傘のほうが優れている。当然、こういう状況なら普通の傘を持っていく、はずだが三本ともある、ということは母親が傘を持っていかなかったということだ。スーパーで雨宿りしている可能性もあるな。傘を二本持って家を出ることにする。

 外に出てみると、本当にすごい雨だった。傘がボトボトボトとすごい音を立てている。きっとこの雨に当たったら痛いだろう。地面はすでに水の層ができかけている。
 これ、洪水警報が出てもおかしくないだろ。いや、もしかしたら出ているのかもしれない。避難を呼び掛けているくらいだし。もう少しニュースを聞いてくればよかった。とにかく、いつも母親が使ってる道をたどって、スーパーに向かう。足にさっそく水が侵食してくる。気持ち悪い。長靴があればよかったのだが、子供の時にはいてたものしか持っていない。当たり前だが今はもうはいらないだろう。
 いくつかの角を曲がって、大きい通りに出る。さっきまで全く人に出会わなかったが、大きい通りになると流石に車が走っているのが見える。うっすらとできた水の層を大きなしぶきを上げながら走っている。みんな方向は一定だ。避難所に向かっているのだろう。俺はその流れに逆らってスーパーへ向かう。傘はボトボトボトと大きな音を立てている。片手で持つのは少ししんどい。とはいえもう片手は母親のための傘でふさがっているのでどうしようもないのだが。いい加減足が冷えてきている。少し危険かもしれない。ようやくスーパーの明かりが見えてくる。避難所とは正反対の方向だからか人もまばらになってきている。
 スーパーに入ると、スーパーは閉店しようとしていた、まだ時間は早いが、店員たちも避難するのだろう。スーパーの中は床が少し高くなってるおかげでまだ浸水はしていないようだった。
「あの、俺のお母さんを見ませんでしたか? ……えと、ピンクのエプロンをつけててそれから、髪を後ろでまとめてたと思うんですけど」
 とりあえず手近な男性の店員に声をかける。迷惑かもしれないが、聞かないわけにはいかなかった。
「えーっと、その特徴だけじゃちょっと分からないかなぁ……」
 店員は困ったように笑う。
「あ、私分かるわよ。君、空見君でしょ。お母さんにはお世話になってるの」
 と、横から女性の店員が声をかけてくる。
「君のお母さんなら、避難の話を聞いて、避難所に向かったわよ。非常食なら家にいる鏡也が避難するときに持ってくるだろうって」
「そんな、でも、傘は?」
「傘ならうちで買ってったわよ」
 それは納得だ。傘くらい今時コンビニでも買える。少し考えが足りなかったようだ。
「それじゃあ、俺も避難所に」
「あ、待って」
 急いでスーパーを出ようとすると、その店員――おばさんって感じの人だ――に呼び止められる。
「今から私たちも避難するの。歩きは危険よ、私の車に乗っていったら?」
「本当ですか?」
 それはありがたい申し出だった。普通なら見知らぬ人の車に乗る等は危険な行為だが、今は非常時だ。足は水にぬれてすっかり冷えているし、バックパックも水を吸って重くなっている。正直これ以上歩かなくてすむならそれに越したことはないと思った。閉店作業が終わるまで待って、おばさんの厚意に甘えて車に乗せてもらう。
「水位が上がってる?」
 店員の一人が言う。見れば確かにさっきより水が昇ってきている。スーパーの方を振り返ると分かりやすかった。スーパーの床に届くくらいまで水位が上がっているのだ。
「のんびり閉店作業なんてしてる場合じゃなかったか」
 店長らしき人が後悔するようにつぶやく。
 ともかく、店員たちの車が一斉に動き出す。駐車場を出て左に指示器を出して、左折する。
 しばらく進むと、どんどん上がっていく水位によって車の進みが遅くなってしまう。
「タイヤのほとんどがもう水に沈んでる。これ以上は歩いたほうが安全かもしれないわね」
 窓から下の方をのぞき込んでいたおばさんがそう言う。ドアの半分以下あたりまで浸水するとドアは開かなくなってしまうという。その分で行けばまだ余裕はあるはずだが、このままではそれも時間の問題……。
「っていやいや、さすがにそこまで水位が上がるわけ……」
「私もそう思う……けど、そもそもそれを言ったらこんな早く水位が上がるなんて考えられないわ……」
 そう言われると自分も不安になってくる。悟りを開いたようなことを言うつもりはないが、人間、理屈と感情なら感情が勝つことだってある。そこまで理性的にはなれないものだ。まして、不安や恐怖に勝つのは難しい。でも……。
「降りてどうするんです? この水位の中歩くなんて、それこそ自殺行為じゃ……」
「どこか入れる高い建物を探しましょう。そこの屋上なら、なんとか助かるかもしれない。この雨だってそこまではこないでしょう」
 当たり前だ。いくらなんでもそれはない。
「念のため長靴を用意しておいてよかった。あなたの分もあるわ。本当は予備だけど、使って」
「あ、あぁ。ありがとう、ございます」
 二人で長靴をはいて車を降りる。急いで傘をさす。
 バシャバシャなんて長靴をはいて水たまりで遊んだことがある。雨で溜まった水の上を歩いたのなんてその時くらいだと思う。いまは、それとは比べ物にならない状況だ。感覚はむしろ川の浅いところを歩いているのに近い。うちの街には海はないから、川でよく遊んだ。もちろん、海に行ったことがないわけではない。斜めに掘られたトンネルを上り、隣の町にある海岸まで遊びに行ったことだってある。けれど圧倒的に川で遊んだ時のほうが多かった。もちろん、今は川で遊ぶよりも大変な状況だ。ザーザーととんでもない音を立てて降る雨の中川で遊んだことのある人間なんていないだろう。増水の危機だ。……そういえば川はどうしただろうか? こんなに冠水しているんだ。とっくにあふれ出しているかもしれない。
「おーい、あんたらもこっちへ来いよ!」
 上から男の声が聞こえる。50代くらいの男だろうか、建物の二階から顔を出して叫んでいる。
「逃げ込む建物を探してるんだろ? この中に入るといい」
 なお、男は叫ぶ。
「お言葉に甘えましょう。全然開いている建物なんてないし」
 とおばさん。少し歩いたがほとんどの建物はシャッターなどで閉じられていて開けられそうにない。ガラス戸ならたたき割って入りましょう、非常時だもの、なんて言ってはいたが、シャッター相手ではさすがに分が悪い。入れてくれるというなら渡りに船だ。
 男がシャッターを開けてくれる。二階に上るとそれなりの人数が逃げ込んでいた。
「俺はこのマンションの管理人でな。今は空き部屋を開放している。上から埋まっていっちまったから、下のほうしか空いてないが、とりあえず行こう」
 そう管理人らしい男が言いながら階段へ案内する。
 そして五階のある部屋へ案内される。
「雨が止んで、水が引くまでここの部屋を使うといい、ほら。これがカギだ」
 と管理人からおばさんに鍵が渡される。
「どうやら、家族と思われたみたいね」
 とおばさん。鍵を上げて部屋に入っていく。俺も続くと、そこはリビングダイニング、キッチンにお風呂にトイレ、そしてさらに三部屋の……いわゆる3LDKが広がっていた。
「空見、君」
 ふと、後ろから声がする。
 振り向くと、うちの制服を着た女性の姿が閉まりゆく扉の隙間から見えた。バタンと閉まる扉。
「すみません、ちょっと出てきます」
「え、ちょっと!」
 急いで扉を開ける。非常階段の方に彼女の姿。
「天使!」
 思わず声をかける。肝心の彼女はにこりともせず階段を登っていく。
「あ、待て」
 なんで追いかけているのだろう。自分でも謎だ。この状況で会った唯一の知り合いだから? とってもかわいい女の子だから? うちに来たり、鏡を割ったことを知っていたり、そういった妙なことについて問い詰めたいから? もちろんどれもその通りだろう。でも、なんとなく、本当になんとなく、彼女が何かを知っている気がして、追いかけないと手遅れになる気がして、そんな言葉にならないような得体のしれない不安から、彼女を追いかけていた。何度目かの踊り場で彼女を見失う。
「え」
 そこで違和感。ぴちゃぴちゃと足元で水の音がしたのだ。
「水位が上がってる?」
 いや、こんなのおかしい。俺が今いる階の手前まで水が迫ってるなんて。じゃあ、さっきまでいた階下の人たちはどうなったんだ?
 よろよろと、階段を登る。このままだと上がった水位に飲み込まれてしまう。そんな気がしてとにかく上へ、上へと階段を登っていく。
 そして、気が付くとそこはもう屋上だった。
「お疲れさま、空見君。本当は別にあなたがいる必要はないんだけど、お礼は必要だもんね」
 天使がにっこりと笑いながらそう告げる。
「どういう、ことだ?」
「本当にわからないの? ほら、これだよ」
 天使が右腕をこちらに向かって突き出し、パチンと指を鳴らす。
 そして、それが現れる。それは、鏡の破片。俺が割った、鏡の破片だった。
「完全に力を持って、この地を護っている間はこれに触れることはできなかった。でもあなたが壊してくれたおかげでこれは力を失って、こうして触れることもできる」
 天使が破片の一つを拾い上げる。
「これでアマテラスもここには干渉できない。ここは私達の神のモノよ」
 とても楽しそうに天使が笑う。破片をぽいとマンションの外側に放り投げる。
「それじゃあ、バイバイ、空見君。あなたは心優しきノアとは違うけど、でも、あなたは神の裁きを生き残ったのよ。誇りに思いなさい」
 天使がビルから身を投げる。
「おい!」
 慌てて追いかけるが、マンションの下にはただ水が満ちるのみで、人の影はなかった。
 話はよくわからなかったが、俺が鏡を割ったせいで、こうなったっていうのか……? ふと鏡の破片が目に入る。そこには当然自分の顔が映る。慌てて目を背ける。すると、一部のビルを除いて完全に水浸しになっている俺たちの街が視界に映る。ビルの建物の中に人影はないように見える。あの辺はオフィスビルだし、大抵の人が警報を聞いて避難してそのまま溺れてしまったんだろう。
 雨は止んでいる。これから先水位は下がっていくのだろう。俺以外に誰か生き残っただろうか? 仕事のはずの父は? まだオフィスに残っていてくれたりしないだろうか? 避難したはずの母は? どこか高台に逃げていたりしないだろうか?
 もうここには俺一人しか生き残っていないのだろうか。もし、そうだとしたら。
「ここにいるのは、俺と、”お前”だけだな」
 鏡の破片に向かって語りかける。そこにいるのは当然”俺”、別に俺と違ったことをしているわけでも妙な表情をしているわけでもない。ただの俺の今を映し出しているだけのものだ。
「”お前”がいることを救いに思うときが来るなんてな」
 鏡の中の”俺”に話しかける。より大きい自分と話すために、鏡の破片をつなぎわせて。そして、天使が捨てたピース以外のすべてのピースを重ね合わせた時、鏡が光り輝き。
「よくぞ戻した、人の子よ。妾はミヅハノメ。汝の止雨の願いにより参上した」
 へ……え? 目の前に現れたのは、古風な見た目の女性だった。
「ほう、何を媒介にしたかと思えば、アマテラスの護国鏡ではないか。……なるほど破損しておるな。それも欠片はすべてそろっておらぬ。アマテラスが呼ばれぬ筈よ。しかし、これほどの権能を以て起こされた奇跡なれば、妾ではどうしようもない。よかろう、手伝てつどうてやろうぞ。残りの欠片を探すのをな。それから先はアマテラスに頼むが良い」
 ミヅハノメを名乗った女性はあれやこれやをキョロキョロ眺めながらそんな長々と喋った。
「えー……っと?」
「呑み込みが悪いのう。汝はこの洪水を止めたいのであろう? であれば、その鏡を完成させ、アマテラスを呼ぶしかないと言うておるのだ。その鏡の残りの欠片はどこじゃ?」
「え、と。その向こうに落ちていきました」
「ふむ、水の中か。さっそく妾の出番というわけよな。汝に水の加護を授けよう。ただし、四半時しはんときだけじゃ。妾の権能はここでは大きく落ち込んでおる。何者か別の神がここの権能を支配しておるのだろうの」
 何を言っているのかさっぱりわからない。
「えーい、じれったいの。とっとと行け」
 ドンと、マンションから突き落とされる。ボチャンと水の中に落ちる。思わず、口から空気が漏れる。……あれ、息ができる……?
「それが妾の加護じゃ。大切に使うが良い。何度も言うが、四半時しか持たぬぞ」
 なんということだ。まるでアニメやゲームの世界じゃないか。それで、四半時ってどれくらいだ? 確か、時間は昔12分割にされてたわけだから、一時は二時間、その四分の一だから……30分?
「ほれ、時間がないぞ。欠片を探すのじゃ」
 そうだった。探さないと。と、真下を見ると、キラッと光を反射するものが見える。潜ろうと、腕で水をかくと信じられないくらい抵抗を感じず、あっさりと前に進む。これも加護の一つなんだろうか?
 周囲を見ると、たくさんの死体が浮かんでいた。……みんな、逃げそびれたんだ。恐る恐る、浮かぶ死体をかき分けながら進む。そういえば、天使の死体は無いようだった。まぁ、うすうすそんな気はしていたが、ミズハノメの加護のような力で逃げたのだろう。……彼女も何か特殊な存在なのか。
 そして、実にあっさりと欠片は見つかった。まっすぐ降りていくと光を反射するものが見えて、それに近づいてみるとそれが欠片だったのだ。
「よし、よく見つけた。そんなに早く見つかるとは、アマテラスも早くこの場に実態をあらわしたがってると見える。汝に任せて正解であった。さぁ、早く戻ってくるが良い」
 また水の中を泳いで水面に向かう。鏡の欠片を見ると、俺が映っている。さっきの天使の言葉を思い出す。俺が、唯一の生存者なんだろうか。
 何とか水面に出て、ミヅハノメに持ち上げてもらいマンションの上に戻る。
「さぁ、欠片をはめるがいい」
 ミヅハノメに言われるがまま、欠片をはめる。直後、鏡が光り輝き、以前の鏡そのままへと戻る。そして、鏡の光はまっすぐに雲を突き破り、一筋の光を地上にもたらした。つまり、今鏡と太陽の一直線上においてのみ雲が存在しない状況になった。そして、その太陽より、さらなる光の筋が俺の元へと舞い降りる。
「―――」
 声ならぬ声が俺に降り注ぐ。
「―――――――――――」
 また、だ。目の前の神々しい女性は明らかに口を開いている。しかし、俺にはその声が聞こえない。
「アマテラスよ、次元を一つ下げるが良い。これは単なる一つの人間に過ぎぬ。汝の素の声はこれには届かんだろう」
「……そのようですね」
 今度は聞こえた。見た目にたがわぬ美しい声だった。
「鏡也よ、あなたはこの鏡を壊した。私の加護を受け、この地を護っていたこの鏡をです。それを分かっていますか」
「いや、それは」
「無論、あなたは知らなかった。しかし、だから罰を逃れられるわけではありません」
「まて、アマテラス。そう言ってやるな。これはそのあと、この欠片を集め、鏡を復元したではないか」
「それは、私たちへの信仰ゆえではないでしょう、ミヅハノメ。自分の利益のために鏡を壊し、そのうえで、都合が悪くなったから鏡を直したに過ぎない」
「うーん、それもそうじゃのう……。ふむ、妾の出番は終わりのようだ。おぬし、頑張ってアマテラスを説得するんじゃな」
「え、ちょっと」
 ミヅハノメはそう言うが否や消えてしまった。アマテラス、それが彼女の名前? それが日本における神様の名前なのは知っているけど、彼女が?
「鏡也よ」
「あ、はい」
「あなたは反省し、二度とこのアマテラスに逆らわず、日本のために尽くすと誓いますか?」
 真剣そのものの表情でアマテラスは問う。
「日本に、尽くす?」
「はい。日本は今や我らだけでない様々な神の流入を許しています。このままではこの神に守られた美しき日本は失われてしまう。いま、この地のように」
「……!」
 ここみたいなことが、他でも?
「私はあなたを許せない。しかし、あなたが今回のことに反省し、贖罪をする、というのであれば、あなたを許そうと思います。私とて、この地がこのまま奪われていいと思っているわけではありません」
 そんなの迷うまでもない。
「あぁ、二度とこんなことはしない。そして、日本に尽くすよ。それが、知っているものの責任だと思うから」
 アマテラスという彼女の言うことが本当であれば、俺のように騙されてこんなことをしてしまう人間がまた現れるかもしれない、ということだ。俺のような思いをする人間がこれ以上増えるなんてのは、ごめんだ。俺は家族を失った。これからもそういったことが起きるというなら、阻止するのが俺の責任だと思った。
「よく言いました、鏡也。では、あなたにこれを授けましょう」
 アマテラスは腰から何かを取り出した。それは、竹の管のように見えた。
「管狐、それがこの管に住んでいます。もし、あなたに害をなすものがあればそれで身を護るといいでしょう。そして、この管は何があっても手放さぬこと」
「あぁ。分かったよ」
「よろしい。それでは行きなさい。この鏡を、あの社に戻すのです」
 アマテラスが社のほうを指さすと、マンションの淵から虹の橋が出現する。
「私の今の権能ではこれが限界です。早く行きなさい。彼の神の権能がさらに強くなればこの橋を維持するのすら困難になります。行きなさい!」
 俺はアマテラスのそんな声を背中に走り出す。虹の橋を渡っていくつものビルやマンションの屋上を乗り継ぐ。
「今のうちに私の話を聞きなさい」
 管狐の管から声が流れてくる
「この管は私の化身のまた化身。私の意識を写すこともできるのです。それより、管狐の使い方ですが、」
 使い方? 持っているだけでいいお守りじゃなかったのか。
「私の化身がその程度なわけないでしょう。管狐、と一言呼ぶだけでいい、あとはあなたの意識を反映して、管狐が戦ってくれます」
 思ったより簡単なようだった。
「それから、管狐の能力も、あなたの身体能力や霊力に依存します。今後はしっかりとそれらの能力を磨くことですね。今は一時的に私の霊力が乗っていますから、まぁ多少の無茶はできるでしょうけど」
 そうか、今後彼女の手伝いをするなら、自分を磨くこともしていかないといけないんだ。
 そして、たどり着く。この階段を登れば、社だ。以前ここに来たときは鳥居の向こうの晴れ空を見て目をそらして、視線を下げて登ったっけ。でも、今はそんな必要ない。
「ふぅん、来たんだね、空見君」
 鳥居の向こうから現れたのは、天使だった。
「天使、か」
「そう、天使てんし。私は御使い。最新の名で表すならミーカーイール」
 ミーカーイール、それはイスラム教における天使の名前であり、偉大な天使の一人、熾天使のことだ。最も通りのよい名前で彼女――女性だったという話は聞かないが――を呼ぶなら、その名はミカエル。ユダヤ教における四大天使、キリスト教における三大天使が一人。もちろん、そんなこと俺は知らない。きっとこの管を通してアマテラスが教えてくれているのだろう。
「私の役割は守護。そしてここはもう我らが神の地。それを壊そうというなら、私が相手になる」
 天使の、ミカエルの背中から孔雀のような文様の入った翼が現れる。そして右手には剣、左手には……天秤?
「さよなら。せっかく生かしてあげたのに、その命を無駄にするなんてっ!」
 剣をかざして飛びかかってくる!
「く、管狐!」
 咄嗟に叫ぶと、コーンと、鳴き声をあげて、俺のポケットに入れてあった竹の管から真っ白な細長い狐が現れる。それは即座に俺の周りをくるりと一周し、切りかかってきたミカエルを弾き飛ばす。
「くぅ。たかだか低級のアガシオン風情が!」
 ミカエルがさらに剣を振りかざしてくるが、管狐が展開した黄色い膜がその攻撃を弾き返す。しかし、これではとても話にならない。管狐では攻撃を防ぐので精一杯だ、というのではいつまでたっても俺たちは階段を登り鳥居を超えることはできない。鳥居を超えたいのは俺たちであって、ミカエルは最悪阻止できるだけでいいのだから、この状況で有利なのはミカエルの方だ。
 だが、管狐はどうやら俺やそしてミカエルが想像していた以上の存在だったらしい。ミカエルの攻撃が止んだタイミングを見計らい、コーンと一鳴きするや否や、一気にミカエルに向かっていく。
「なに!?」
 ミカエルはとっさに剣を振って防ごうとするも、相手は自由に移動可能な生物、きれいに太刀筋を避けて、翼にその運動エネルギーをぶつけた。
「ぐうっ」
 ミカエルがバランスを崩す。
「いまだ!」
 俺は走る。階段を登り、鳥居を超えるために。
「させるかぁ!」
 ミカエルが剣に炎をまとわせる。
 コーン、と管狐が鳴き、俺の周囲を一周りし、俺を護ろうとするが間に合わない。俺は恐怖に負けて目をつぶった。
「仕方ありませんね、私を信じたお礼にもう一つ加護を授けましょう」
 鏡から、そんな声が聞こえた。
 恐る恐る目を開けると、鏡から無数の紫色の触手のようなものが出現し、ミカエルに絡みついていた。
「これは……貴様、最高位の神の癖に、自らの加護を受けた鏡を別種の神の加護を受けた鏡と同一視したな!」
「うふふ、私はあなた方のように一人の神しか信じないというわけではありませんので。必要に応じれば、ホルスだろうと、トールだろうと、信仰することができます。あなたの神もその一人にしてもよいのですよ?」
「ふざけるな! 神は一人で良い! 他の神は皆、我らが神を脅かす悪魔だ!」
「そうですか、最初に言っておきます。そのショゴスは、私の力でも御せるものではありません、早々に退却し、あなたの神に助けを乞うた方が良いですよ?」
「くそ、くそ!!」
 ミカエルはその触手から逃れようと何度も何度も暴れ。
「覚えていろよ!」
 頭上に金色の円形のモノ――まさしく天使の輪のようだ――を出現させ、そして、消滅した。
「よく頑張りましたね、鏡也。ですが、あそこで目をつぶったのは減点です。次は、きちんと目を見開きなさい。そして、自分の力でどうしようもないなら、だれか他人の力を借りるのです。覚えておきなさい。諦めたものを助ける気はありません、今回は特別ですよ」
 アマテラスは笑い、そして俺に進むように手振りする。

 階段を登る。あのボロボロだった。社が見える。そして中央の台座だけ、やっぱりきれいなままそこに残っていた。台座に歩み寄り、そこに鏡を置く。直後、光があふれ、俺は気を失った。

 気が付くと、俺はベッドの上にいた。
「ここは?」
 そこは自分の家だった。
 一階に降りると、そこには、
【晩御飯の食材が足りなかったので少し買い物に行ってきます】
 という書置きの文字が。ふと外を見るが、外はとてもきれいな夕焼けが広がっていた。
「行くか」
 俺は靴をはき、何も持たずにスーパーに向かった。そこは人でにぎわっていた。
「あら、鏡也」
 スーパーにいたのは母親だった。あの、俺に親切にしてくれたおばさんと談笑していたようだ。
「あ、あの。その節はお世話になりました」
「ん? 何の話? おばさんと会ったのは初めてよね?」
 とおばさん。……あぁ、そうか。俺はきっと、リアルな夢を見ていたんだ。そう思い、母親と一緒に家に帰る。父親と三人で談笑し、そして部屋に戻る。夢とはいえ一度は失った両親だ。当たり前にいた二人とこうして話ができるのがこんなに幸せだとは、思わなかった。
 そして、部屋に帰る。ふいにバスタオルでふさがれた鏡が目に入る。
「もう、怖くない」
 俺は鏡にかけられたバスタオルを外し、その前に置いてあった椅子に座る。すると、お尻に何か違和感を覚えた。
「ん?」
 ポケットに何か入っていたのだ。
「夢じゃなかった、ってことか」
 そこにあったのは竹の管。俺を護ってくれた管狐だった。
「そうか、約束を、守らないとな」
 俺と同じような目にあった人間を助けないと。きっと必要になれば、またアマテラスが接触してくるのだろう。それまでは、いつも通りの生活を続けていよう。
「管狐は、常に持ち歩かないと、だよな」
 改めて管を手に持ちポケットに入れなおす。コーンと、鳴き声が聞こえた気がした。

 社に来てみた。寂れていたはずの社はとっても美しい見事な社へと生まれ変わっていた。そして中央にはあの鏡。どこか、あのアマテラスのような空気を感じた。どこかで見ているのかもしれない。ふと空を見上げる。そこには何も映っていない青空が広がっていた。
 ――もう、青空も怖くない。

 

[あとがき]
 こんにちは。このたびはキーワード小説「鏡の空と雨の夜」をお読みいただき、誠にありがとうございます。本作は私にとっては珍しい短編それ一作で完結する物語です。鏡也の人生はまだまだ続くでしょうが、鏡也の鏡と空にまつわる物語はここに完結し、もう続きはない、という状態です。もちろん、AWsの世界は常につながっています。彼がどこかで出てくることはあるかもしれませんけどね。今のところ予定はありませんが。
 さて、今回は日本神話とユダヤ、キリスト、イスラム(順番は誕生順)の聖書を出展としています。日本神話、神道的世界観はあらゆる神を許容するアニミズムな多神教、聖書的世界観は、三つの教えで少しずつ違いますが、名前すら必要ないような絶対的な神を崇める一神教。本作のテーマはその二つの対比でした。前々から書きたかったテーマなので持ってきたのですが、長さにマッチしなかったようで、正直に言って、満足に書きたいテーマを書き切れたとは思えません。そもそも状況からしてフェアじゃありません。日本神話側は大日如来や時としては一神教の神とさえ同一視される日本神話の最高神たる天照大神に対して、聖書側は高位の天使とはいえ、あくまで神の遣いでしかないミカエルです。もちろん、聖書側の偉大なる神を登場させるわけにはいかないのですけれど。
 そんなこんなで、話としては日本神話有利の話になっています。支配権を奪われている、という状況で日本神話不利を謳っていますが、割とやりたい放題やっています。話としても、ニトクリスの鏡(に一時的に変質したアマテラスの鏡)から出現したショゴスによって膨大されたこともあり、アマテラスの主張に一方的にミカエルが言い負かされた形になっています。また、シナリオ運びを見ても、「奪われようとしている日本を取り返す」と、聖書側が悪であるかのような描き方になってしまっています。
 これらの聖書側不利については、「話を短くまとめるために止むを得なかった」という言葉で納得していただくしかないかなと思います。本当は聖書側の正義をもっと書きたかった!
 言い訳を重ねるようですが、聖書側不遇、日本神話側優遇に見える状況になっているのは私の宗教的考えからではありません。そこだけ一つ誤解無きようお願いしたいです。

 さて、あとがきがとても長くなってしまいました。宗教関連の話は話し出すと止まりませんね。それでは今回はこの辺で。また、どこかの世界の記録を綴った作品のあとがきで。

 


 

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