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飛艇少女メアリーと白銀の守護者 第4話「最初の行き先」

 
 

前回までのあらすじ(クリックタップで展開)

 大地がなく「死の雲海」と呼ばれる雲に覆われ、点々と存在する塔「ジッグラト」にしがみついたわずかな島々で人々が暮らし、空飛ぶ船「飛空挺」が島々を結んでいる世界。
 メアリー護衛商船のメアリーとマモルは唯一短徳で浮遊しているとされる伝説の浮遊大陸、アルカディアを目指して旅をしていた。

 一ヶ月ほど前、マモル・クツナは宇宙空間でオービタル・レイバー「トネリコ」に乗って、戦艦と戦闘してた。
 しかし、敵のFTLジャンプに巻き込まれ、未知の世界に転移してしまう。そこで飛空艇に変身できる少女、メアリー・ブリガンティンと出会う。
 メアリーに案内され、魔法増幅塔「ジッグラト」に向かったマモルはそこで、御子と呼ばれる存在からこの世界について聞かされる。この世界は「波」によって構成されており、歌やヴォカリーズで不思議な「魔法」を発生させられる。それはこの今住んでいる島でさえそうなのだ、と。
 そして、マモルのような異世界からの転移者「天からの落とし物」の秘密が、「アルカディア」に眠っていると聞いたマモルはそこに向かうことを決める。そのために、世界中を旅するメアリーのメアリー護衛商船団に所属することを決めるのだった。
 マモルとメアリーは空港への帰り道、山賊と出会う。躊躇するマモルの前で、躊躇なくメアリーは盗賊を殺そうとする。マモルは世界の正しさについて想いを馳せる。

「やったねマモル。お金を払うどころか、お金をもらっちゃったよ!」
 山賊を撃退……否、殺した事で、メアリーとマモルは相乗りの料金を支払うどころか、護衛のお礼を貰うことになった。
「それはよかったな。お金があって困ることはないだろう。『地獄の沙汰も金次第』というしな」
「じごくは分かんないけど、お金はいくらあっても困らないのはそうだね」
 とメアリーに返され、マモルはしまった、諺までは自動翻訳されないのか、と小さく呟く。
「それで、空港に戻ってきたが、これからどうするんだ」
「勿論、アルカディアを目指すよ! そのためにボクと一緒に行くことにしたんでしょ?」
 自信満々にメアリーが拳を握る。
「それはそうだが、前人未到の大陸なんだろ? どうやって行く? 誰かが航路を知ってるわけでもあるまい」
「う……」
 マモルの冷静なツッコミの前に、メアリーが拳を下ろす。
「まさか……何も考えてなかったのか……?」
 たっぷり一分待ってから、メアリーが何も言わないのを確認し、マモルは恐る恐る問いかける。
「……うん!」
 十秒後、メアリーが自信満々に頷く。
「なんてこった」
 マモルは思わず頭を抑える。流石に何かしらの考えはあるだろうと思っていたのだ。
「……あ、あの、もしかして協力関係終わり?」
 頭を抑えて黙り込んだマモルにメアリーが不安そうに声をかける。
「そんなわけないだろう。俺にはこの世界の知識もなければ、足もないんだ。君が頼りだよ、メアリー」
「マモル……。任せて、きっとなにか方法を考えてみせるから!」
 マモルはそんなメアリーを安心させるように微笑むと、メアリーも笑みを取り戻し、拳を握る。
 そんなころころ表情の変わるメアリーにマモルはふっと笑みを溢しつつ、思案する。
「俺も考えるよ。そもそもアルカディア行きは俺の目的のために必要なことだからな」
 とはいえ、すぐにアイデアが浮かぶはずもない。
 二人でうんうん唸ること数分。
「さしあたって、一つアイデアが浮かんだ」
「お、なになに?」
「アルカディアはジッグラトによらず空を飛んでいる大陸なんだろう? なら、トネリコの対地レーダが役立つかもしれない」
「対地レーダ?」
「あー、空中から地上の様子を探る装置だ。本当ならトネリコがジャンプ中や滑空中に使う装備だが、君の艦上からでも起動すれば周囲の地形を走査出来るはずだ」
「そうすると、どうなるの?」
「地図にない大陸があれば、発見出来る可能性がある」
「おぉ、それはすごいね!」
 メアリーが飛んで喜ぶ。
「まぁ、これでアルカディアを発見するにはこの惑星を文字通り全走査しなければならない可能性があるのだが……」
 マモルの提案を極めて簡単にまとめてしまうと「すごく目の良い機械に周囲を見渡してもらうことでアルカディアを探そう」でしかない。
 この方法でアルカディアを見つけるには、すごく目の良い機械――対地レーダ――の走査範囲にアルカディアが存在する必要がある。
 そのためには、アルカディアを発見するまでの間、アルカディアのある可能性がある全土……土はないので全空を対地レーダの走査範囲に入れていく必要がある。それは結局、このスカイワールド全空を飛び回らなければならないわけで、おおよそ現実的な方法論ではない。
「いいじゃん、なんのアテもないよりよっぽど良いよ! 巡ろうよ! この世界中を!」
 だが、メアリーはその提案を喜んで受け入れた。
(本当にこの困難さを分かっているんだろうな……)
 だが、その様子にマモルは少し不安そうだ。
「ちなみにその対地レーダ? の見える範囲は増やせないの? そうすれば効率が上がるよね?」
「……思ったほど考えなしじゃなかったか」
 メアリーの理にかなった提案にマモルが頷く。
「その通りだ。対地レーダの走査範囲を拡大できれば、アルカディア捜索の効率は上がる。そして、その方法自体はある」
「あるんだ! どうするの?」
「トネリコには幾つかのハードポイント……と言っても分からないか。色んな装置を取り付けられる機構がある。そこに取り付けられる装置の中には、肩に取り付ける増設レーダユニットがあったはずだ」
「じゃ、それ取り付けよう!」
 ずい、とメアリーがマモルに歩み寄る。
「そう出来たら良いんだが、手元にない」
 だが、マモルは首を横に振る。言うまでもないが、トネリコは人間で言うなら「着の身着のまま」でこの世界に来ており、追加装備など持ってきていない。
「じゃあさ、設計図みたいなものはないの?」
「設計図? 物質精製プラントで補給を受けるためのブループリントなら、コンピュータに入っているはずだが……」
 ここに物質精製プラントはないだろ? と言いかけて、マモルは気付いた。
「まさか」
「そ、御子様に作ってもらえばいいよ」
「そうか、その手があったか」
 この世界においては音波即ち詩で物質を生成できる。魔法増幅塔であるジッグラトはまさにこの世界における物質精製プラントだ。
「なら早速引き返そう」
 と、マモルが携帯コンピュータを操作して、増設レーダユニットのブループリントを呼び出しながら、ジッグラト行きの馬車を探す。
「あぁ、待って待って。この島じゃ無理だよ。あのオービタル・レイバー? サイズのものは作れない。それだけの余裕が御子様にないから」
 のを、メアリーが止める。
「む、なるほど、バッファがないわけか。ならもっと大きな規模のジッグラトがある島に行かねばならない、ということか」
「そゆこと」
 そう言って、メアリーが頷く。
「だからさ、まずは大きな規模のジッグラトまで仕事をしながら旅をしようよ」
「あぁ、そうだな。俺達の、最初の目的地だ」
 メアリーの言葉にマモルも頷く。

 

 そして、二人はターミナル宿と呼ばれる宿にやってきた。
「ここには色んな仕事が集まるんだ」
「仕事?」
「そ、そこの掲示板見てみて」
 メアリーが掲示板を指し示すので、マモルはそちらに視線を投げる。
「輸送依頼、魔物退治、空賊退治、山賊退治、なるほど、色々だな」
 魔物とはなんだろうか、と内心首を傾げつつ、マモルは頷く。
「やぁ、マスター。ボク、メアリー。輸送仕事を担うメアリー護衛商船団の団長さ」
「単艦だけどな」
「余計なこと言わないでいいの」
 カウンターに腰掛け、マスターに話しかけるメアリーに、思わずマモルが余計なことを言うと、メアリーに叱責される。
「ボクら、近くのファクトリーに行きたいんだ。道すがら、何か良い仕事無い?」
「あぁ、それなら、『チューケー』がおすすめだな。だが、『チューケー』直通の仕事はないな」
「なら近くや同じ方向の仕事でもいいよ。道すがらこなせればいいからさ」
「話が早いな。なら、何人か旅客輸送の仕事と貨物輸送の仕事がある」
 そう言って、マスターが指を立てると、店員の一人が何枚か紙を掲示板から剥がして持ってくる。
「ん」
 メアリーはざっとそれらに目を通して。
「これとこれはちょっとうちでは引き受けられないかな。それ以外は引き受けた。明日出港でも平気?」
「こっちで確認しておく。宿はもう決まってるのか?」
「ううん、これから。空いてる?」
「おう、まだ空いてるぜ」
「じゃ、泊まってくよ」
 そういって、メアリーが銅貨を数枚取り出してマスターに渡す。
「おう、じゃあまた晩飯時に降りてこい」
「行こ、マモル」
 そして、メアリーはマモルを伴って、二階に登っていった。
 

 To be continued...

 


 

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