塹壕の街の海老天うどん 第3章「決闘 上」
海産物を欲するイレタは、幻の海老天うどんを噂を聞く。
イレタはアマエルを連れて、幻のうどん屋を探し始めるのだった。
そんな中、イレタとアマエルにそれぞれ慕情を抱くグエルシェンとマリーヌは、「幻の海老天うどんを食べると二人が付き合ってしまう」と思い込み、妨害に走る。
探しているオレンジ色のガーベラを買い占めたグエルシェン。イレタとアマエルは、それを取り返すため、二人へ決闘を申し込む。
「決闘だなんて、どうしよう、イレタ」
グエルシェンの館を後にした二人は一度、近くの公園に移動した。ベンチに二人で並んで座る。
「動揺しないの。だいたい、力押しを止めたのはアマエルでしょ」
「そ、それはそうだけど……」
負けたら結婚だなんて、という言葉は不思議と口から出なかった。なんだか口にすると現実になってしまいそうで、イレタのことをそういう目で見たことはなかったはずなのに、不思議と嫌だった。
「ま、負けなきゃ良いのよ」
そんなアマエルの複雑な心境など知らぬとばかりに、イレタはあっさりとそう述べた。
「そんなこと言っても、マリーヌさんもグエルシェン君も成績優秀だよ。どうやって勝つのさ」
「何を言ってんのよ。そのために私達が演目を決める権利を勝ち取ったんでしょ。あれはよくやったわよ、アマエル」
イレタが嬉しそうにアマエルの首に腕を回して、もう片手で頭を撫で回す。
「あ、もう、やめてよイレタ」
とはいえ、珍しくイレタに褒められ、嫌な気分ではないアマエルは、しばらくイレタのされるがままにされるのであった。
「それで、種目はどうするの?」
「え、僕が考えるの?」
「そりゃそうでしょ。アマエルが勝ち取った権利だし、それに私じゃ力押ししか思いつかないし」
「あぁ……」
そういえばイレタはそうだった、と嘆息しつつ、アマエルはふむ、と考える。
「折角、五日間も期間が開くんだから、その間に準備ができる種目が良いよね」
「なるほど。相手はマリーヌが動けないから十分な準備が出来ないってわけね。くっくっく、悪くない考えね」
アマエルの提案をイレタは気に入ったらしく、笑い出した。
「それでそれで? 具体的にはどうするの?」
「んー、そうだな……」
目を輝かせて続きを尋ねるイレタにアマエルは考える。
「塹壕運動場で花冠戦……とか?」
塹壕運動場は、このトランシェヴィルの高校、その裏手にある小規模な塹壕で構成された運動場だ。
トランシェヴィルの高校生はここで塹壕戦の基本を学ぶ。
小規模と行ってもそれなりの面積があり、その内部は塹壕と言うよりは広大な迷路のようだ。
「花冠戦!? アマエルが?」
そんなアマエルの言葉にイレタが驚いたような顔をする。
花冠戦はこの世界で広く知られる魔法競技の一つだ。それぞれ決めた一つの花冠を被り、魔法を撃ち合い、時には武器を振るう。最終的に花冠を破壊したほうが勝ちだが、当然頭に被っている花冠を狙い合うわけだから、大怪我を負うことすらある。
当然のように危険なので、高校生が行うのは禁止されているし、そもそも所定の審判や安全が保障された状態でしか行っていけないというものである。四人がそれをするというのは、すなわち違法な花冠戦を行うという意味でもある。
気弱なアマエルの提案とはとても思えなかった。
「僕は純人間だから固有魔法が使えないし、不利だから避けたいけど、けど塹壕運動場を使うのはアリだと思うんだ」
「なるほど。五日間のうちに塹壕の構造を覚えて、戦い方を決めておくってわけね」
アマエルの言葉にイレタが頷く。
翌日。二人は再びグエルシェンの館を尋ねた。
「ふむ、塹壕運動場で花冠戦だね。分かったよ」
「花冠戦ですって? アマエル様が!? イレタさん、あなた、アマエル様を危険なことに巻き込むつもりですの?」
あっさりと受け入れたグエルシェンに対して、マリーヌは難色を示した。
「そのアマエルが決めたのよ。それに、決闘の種目は私達が決めて良いって約束だったでしょ?」
「そ、それはそうですが……。ほ、本当に良いんですね、アマエル様?」
「うん。当日はよろしくね」
「ア、アマエル様がよろしいなら……」
事前に決めておいた通り、毅然とアマエルが応じると、マリーヌもそれ以上は何も言えない。
「うふふ、見た? あのマリーヌの顔。なんでか知らないけど、マリーヌはあんたには強く出られないみたいよ。これはあんたがマリーヌと一騎打ちに持ち込んだらそのまま勝てちゃうかもね?」
そんなやり取りを経てイレタはご機嫌な様子で、塹壕運動場に歩いていく。
塹壕運動場は壁で覆われていて、出入り口は内側からしか開かないように鍵がかけられているが、身軽なイレタにかかれば、壁を乗り越えて内側から出入り口を開けることは容易い。
「さ、見つからないうちに入って」
「う、うん」
明確に校則違反である。自分で提案しておいて、本当に入っていのか、アマエルは一瞬逡巡する。
「どうしたの?」
「ううん、なんでもない」
イレタが首を傾げるのを見て、慌ててアマエルが出入り口を通り抜けて壁の内側に入る。
出入り口が閉じられ、再び鍵がかけられる。これで、よほどのことがない限りバレることはない。
「さて、武器は持ってきた?」
「うん。これだよ」
背負ってきたポールとポーチにしまっておいた刃を取り出し、ポールに刃をはめ込んで武器へと組み立てる。
「相変わらずのグレイヴか。純人間としては定石と言って良い武器よね」
ガリア発祥のポールアーム「グレイヴ」は、ポールアームらしい長いレンジと突く薙ぐと多機能に使える武器だ。2mのポールに55cmの刃のついたポールアーム。読者の諸兄には西洋風の薙刀である、と説明すれば理解が早いだろうか。
固有魔法を持たない純人間はこのグレイヴのようなポールアームで少しでも戦闘のレンジを稼ごうとする傾向がある。アマエルもその例に漏れない武器選びであった。
「そういうイレタは相変わらず武器は持たないの?」
「まぁね、私にはこれがあるから」
そう言ってガッツポーズのようなポーズを取るイレタの拳の先に魔法の爪が出現する。ケット・シー混血であるイレタが扱える固有魔法の一つだ。
「それじゃ、塹壕の構造把握と格闘戦の練習、やっていきましょうか」
かくして、アマエルとイレタの勝利のための練習が始まったのだった。
以前にも触れた通り、花冠は貴重である。このため、学生の身の上である二人は、練習でいちいち花冠を破壊していては、お金がいくらあっても足りない。
なので、二人に限らず、花冠のストックに余裕のない者は、そのへんの蔓状植物で作った偽物のサークレットで代用する。
「いくわよ!」
お互いに所定の距離を取ったと思った直後、イレタが一気に地面を蹴ってアマエルに肉薄する。
拳を握ったその先には魔法で出来た爪。
「っ!」
アマエルは咄嗟にグレイヴのポール部分でその爪の一撃を防御する。今度は反撃に転じたいところだったが……。
「あはは、守ってばかりじゃ勝てないわよ、アマエル!」
イレタは魔法の爪を展開し続け、連続で攻撃を仕掛けてくる。
対して、アマエルは必死でそれらの一撃に対して、ポール部分を合わせるのに必死で反撃に転じる余裕がない。
このままでは攻撃させてもらえない。そう感じたアマエルは後方に飛び下がり距離を取ってイレタを迎撃する姿勢に入り……。
「遅いわよ!」
それより早く、イレタが更に弾丸のように突っ込んでくる。
下段から放たれる鋭い切断攻撃がアマエルの蔓状植物で出来たサークレットを切り裂いた。
「アマエル、あんたの武器は確かに射程が長いけど、その分、懐に潜り込まれると取り回しの関係で、対処が難しくなる。近づかれにくくする対策か、近づかれてもいいような対処法があると良いわね」
思わず尻餅をついたアマエルにイレタが告げながら、右手を差し出す。
「うぅ、厳しいな、イレタは。分かったよ。ちょっと考えてみる」
差し出された手を取り、アマエルが立ち上がる。
「じゃ、考えている間に塹壕の構造を把握しましょ」
そう言って、イレタが歩き出す。アマエルもそれに続く。
それから、五日後。
ついに決闘の時がやってきた。
「大丈夫かな。……もし負けたら……」
イレタが結婚。と、チラリとイレタの方を見る。
ずきりとなぜか心が痛む。それだけは阻止せねばならない、と、そう感じる。
「どうしたのよ。あんなに練習してあんなに特訓したじゃない。大丈夫よ」
心配そうなアマエルの表情をどう取ったか、イレタがそう言って微笑む。
「やぁ待たせたね、イレタ君」
「おまたせしましたわ、アマエル様」
そこにグエルシェンとマリーヌがやってくる。
「来たわね。じゃ、誰も見てないうちに入るわよ」
慣れた様子でイレタが壁を越えて出入り口を開ける。
三人がイレタに招かれるように塹壕運動場へ入っていく。
「試合手順を再確認するわ。ここで左右に分かれて移動。その後、教会の鐘が鳴ったら試合開始よ」
「分かっているとも、イレタ君」
「大丈夫ですわ」
「じゃ、左右に分かれましょう」
グエルシェンとマリーヌは左へ、イレタとアマエルは右へ、それぞれ分かれる。
やがて、教会の鐘が鳴り響く。
「さぁ、行け、我が眷属よ!」
真っ先に動き出したのは、グエルシェン。手持ちのナイフで左掌に傷をつけて、その流れ出る血から小型のコウモリのような存在、従属種達を生み出して、空中に解き放つ。
空中に解き放たれた従属種達は素早くイレタとアマエルの位置を把握。グエルシェンとマリーヌにその所在を伝える。
「手筈通りに行くぞ。私はアマエル君。マリーヌ君はイレタ君だ。くれぐれも傷物にしてくれるなよ」
従属種を介してマリーヌにそう伝えながら、グエルシェンが走り出す。
「善処いたしますわ」
マリーヌも応じながら駆け出す。
そう、二人とて座して決闘の時を待っていただけではない。マリーヌの発情期が終わり次第、二人は決闘の手筈を簡単にではあるが決めていた。
そこで決まったのが三つ。グエルシェンが全体の状況を把握すること、マリーヌがイレタの足止めをすること、グエルシェンがアマエルを倒すこと、であった。
イレタの戦闘能力は高い。勝利するにはグエルシェンとマリーヌが手を取り合う必要がある。しかし、アマエルとてそれを黙ってみているはずもない。アマエルは強い方ではないが、事前に準備していることも加味すればイレタとの連携は厄介である可能性が高く、全員が一箇所に集まれば、負けるのはグエルシェン達の方である可能性が高かった。
そこで、二人のうち戦力的に強いグエルシェンが確実にアマエルを無力化し、その後に二人でイレタを倒す、というのが二人の作戦であった。
なので、最初に接敵したのはグエルシェンとアマエルであった。
「見つけたぞ、アマエル君。覚悟してもらおうか」
グエルシェンは腰の鞘からレイピアを抜刀する。
「もう見つかったのか」
対するアマエルもグレイヴを構え直し、グエルシェンの接近に備える。
「しっ!」
グエルシェンが駆け出す。
吸血鬼混血で強い膂力を持つグエルシェンの肉薄はイレタのそれを凌駕する。
「っ!」
しかし、アマエルもイレタ相手に肉薄攻撃の対処は特訓してきたばかり。接近しつつあるグエルシェンに対し、アマエルが先手を取ってグレイブで応じる。
「なかなかな反応速度じゃないか。だが、遠距離戦はどうかな?」
グエルシェンは踏み出した右足を突っ張って、そこに左足の脚力を添えて後方に跳躍。
「炎の……矢ぁっ!」
空中でグエルシェンは自身の花冠に意識を集中。左拳に炎の力を収束させ、アマエルに向けて放った。
対して、アマエルは前に駆け出すことで、炎の矢を回避し、地上に着地下ばかりのグエルシェンに横薙ぎの一撃を見舞う。
「ちぃっ」
グエルシェンは咄嗟にレイピアを空中に投げて右掌でそのグレイヴの刃を受け止める。
出血すると同時に固有魔法が発動し、血の壁となって、グエルシェンの身を守る。
アマエルの顔に驚きはない。グエルシェンは出血すればすぐさま固有魔法でその魔法を操って防御に移れる。それを知っているからこそ、アマエルも容赦なく攻撃が出来た。
空中から落下してきたレイピアを左手で受け止め、アマエルに伸ばす。
しかし、アマエルは後方に飛び下がってこれを回避する。
「なるほど、少しは出来るようだね。伊達にイレタ君と日夜ベタベタしているわけではないということか」
そう笑いながら、グエルシェンは再び、左拳に炎の力を収束させ、炎の矢を放とうとする。
「だが! 通路全体を覆う程に炎を放たれれば、避けられないだろう!」
みるみるうちに左拳の炎が巨大化していく。
「!」
慌てたようにアマエルが後方に走り出す。敵に背中を見せるほどの全力疾走。
だが、グエルシェンは交戦開始位置さえ想定していた。この位置からであれば、炎の矢を回避できるような通路は存在しない。
「行け、炎の矢だ!」
巨大な炎の矢が通路を覆うように進み、アマエルに迫る。
それはみるみるうちにアマエルに迫り、派手に爆炎を上げる。
「ふぅ、ちょっとやりすぎたかな。マリーヌ君には悪いことをしたね。だが、私のイレタ君に手を出すのがいけないのだよ」
煙と爆炎が晴れる。
そこにあったのは、壁であった。
「なんだと!?」
その壁からは魔力を感じる。間違いなく、魔法で作られた壁であった。
慌てて従属種から報告を受けると、アマエルは壁の向こうでどこかへと走り出していた。
否、そんなことより。
「イレタ君がこちらに来ている!?」
と言ったときには、もうイレタがグエルシェンに向かって跳躍攻撃を仕掛けたところだった。
塹壕から塹壕へ、一気に跳躍したイレタが空中で拳を握ると、その先に魔法の爪が出現する。
「馬鹿な! マリーヌは何をしている!」
慌ててマリーヌの元へ従属種を飛ばすが、それより、イレタが急降下してくるほうが早い。「はぁぁぁぁぁぁっ!」
グエルシェンに鋭い爪の一撃が襲いかかる。
対して、グエルシェンは咄嗟に左掌で防御。しかし、強烈な爪の一撃はグエルシェンに膨大な出血をさせる。その分、強固な血の壁が作られるが、グエルシェンのダメージも無視できない。
イレタは防御された反動を利用して後方に飛び下がる。
「そうか、ローズマリー。モノ探しの魔法で私の居場所を突き止めたのか」
グエルシェンはイレタの頭に被せられた花冠を見てなるほど、と呟く。
「えぇ。グエルシェンが生まれたときに打たれたそのレイピアを誇りに思っている、なんてのはみんな知ってるわ」
「アマエル君の壁もそうだが、戦闘用ではない花冠を被ってくるとはね」
「私にはこの爪さえあれば十分だもの。さぁ、行くわよ」
「させるか、炎の矢!」
イレタが地面を蹴ると同時、グエルシェンも左拳から炎の矢を放つ。
「なんのなんの!」
しかし、イレタは空中で器用にも姿勢を変え、左側面の壁を蹴って右側面の壁に斜め跳躍。
炎の矢を回避した上で、再び右側面の壁を蹴ってグエルシェンに迫った。
「くぅ」
もうグエルシェンの血も限界に近い。次に掌で防御するのは困難に近い。
ならば、レイピアで防御するか?
否、このレイピアは自分が生まれたときに打たれた大事なレイピアだ。万が一にも折るわけにもいかない。
結果、グエルシェンは後方に飛び下がる道を選ぶ。
だが、その後方に待つのは壁。
そう。アマエルはグエルシェンが狙ったから炎の矢を撃ちやすい場所にいたのではない。アマエルが待ち受けたから、そこにグエルシェンが来たのだ。
最初の驚いた様子からして、全てがブラフ。
「私を騙したのか!? アマエル・ブリー!!」
だから、グエルシェンがイレタという弾丸から逃げられる位置にいないのはすべてが必然であった。
イレタの鋭い一撃が、グエルシェンの花冠を切断。ここに、グエルシェンは無力化された。
「アマエル様、どうしても戦うのですか?」
その頃、マリーヌはアマエルと相対していた。
「うん。イレタがグエルシェン君を倒すまでの間、君を足止めする。それが僕の仕事だから」
そう言って、イレタがグレイヴを構える。
「そうですか、残念です」
静かにマリーヌが腰に下げた蛇の意匠が施された鞘から朱色に輝く剣を抜く。
「むやみに痛みつける趣味はございませんが、お覚悟を」
「ん」
真正面で正眼の構えを取るマリーヌに、アマエルがゴクリとつばを飲み込む。
直後、マリーヌの尻尾が三本に増えたかと思うと、二本の尻尾が分離し、左右に移動する。そして尻尾の見た目がマリーヌそのものに変化する。
「それがマリーヌさんの本気なんだね」
それは初めて見る魔法だった。恐らくマリーヌの、妖狐混血が持つ固有魔法なのだろうが、フラジスタンに妖狐の伝承は殆どなく、流石にイレタとアマエルも備えることが難しかった。
「先ほど面白いことをおっしゃいましたわね、アマエル様。なんでも、私を足止めする、とか?」
三人のマリーヌが同じ顔で同じように微笑む。
「そのようなことが果たして可能かどうか、試してみるとよろしいですわ」
マリーヌが一斉にアマエルに迫る。
(定石から言って、他の二つが幻覚か幻術の類!)
アマエルは素早くそう判断し、真っ先に肉薄してきた正面のマリーヌの剣をグレイヴのポールで受け止める。
左右に散ったマリーヌの剣がアマエルの花冠に迫る。
アマエルの考えが正しいなら、これは幻覚か幻術による幻。いずれにせよダメージは生じないはず。
だが、それなら……。
「うふふ」
眼の前のマリーヌのこの余裕の表情はなんだ。
推定幻であるはずのマリーヌが持つ剣がアマエルに迫る。
「っ!」
どうしようもなく嫌な予感がして、アマエルは咄嗟に後方に飛び下がる。
左右のマリーヌの剣がアマエルの髪の毛に触れ、それを切断する。
「本当に実体!?」
「あら、自分を信じきれなかったのでしょうか? それとも、勘と言う奴かしら? いずれにしても、結果的に、流石はアマエル様ですわ」
その様子にマリーヌが微笑む。その両脇にマリーヌ。
三人のマリーヌが上品に笑う。
「くっ……」
アマエルは思わず唸る。
そもそもアマエルはお世辞にも強い方ではない。対してマリーヌはあらゆる面で成績優秀。それは身体能力や魔法能力も含めてだ。
そんなマリーヌが三人。対して自分は一人。
しかも、アマエルの花冠はグエルシェンを陥れるためにだけ用意した非戦闘用のものである一方で、マリーヌは花冠の魔法をまだ使ってさえいない。
戦力差は明白であった。
「降参してくださいまし、アマエル様。そうすれば、アマエル様を傷つけずに済みます」
「……」
マリーヌの提案はアマエルの心を揺らすには十分だった。どうせこのままでは勝てない。ならば、これ以上、徒に傷つく前に降参するのも選択肢ではないか、と。
今、アマエルは選択の岐路に立たされていた。
To be continued…
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