アフロディーネロマンス 第7章

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『まさか、本当に、妖精?』(『世界樹の妖精』(著・蒼井刹那)より)

 

 屋外ステージでの最終リハーサルを行う千晶を見て改めてそう思う。
 特産品であるリンゴをイメージした衣装を見に纏った千晶はまるでリンゴの精のようだった。
 リハーサルではあるが、なにせ地域振興のイベントの屋外ステージだ。既に結構なファンが様子を伺っている。
「なぜあっきーが狙われるんでしょう?」
 その様子を見ながら太一はかねてからの疑問をマーシーにぶつけてみることにした。
「残念だけど、私たちにも分からないわ」
 マーシーは静かに首を振った。
「太一君、アフロディーネデバイスってなんのための装置だと思う?」
「え? 二次元の嫁の力をその身に纏って……」
「それはデバイスそのものの機能の話よね? じゃあその用途は何? ドリルなら穴を開けるため、ダイナマイトなら発破のため、ゲームなら遊ぶため、全ての道具には目的があって、だから作られるものよ。なら、アフロディーネデバイスは何のためのもの?」
「それは……」
 兵器、その言葉が喉の奥まで出かかった。
 アフロディーネデバイスが戦争に投入されれば、それは有効な兵器として活用されるだろう。少々火力に幅があるのは難点だが。
 しかし、太一にはそれがどうしても受け入れられなかった。自分の左腕に託されたそれが、人殺しの道具として開発されたなどとは思いたくなかった。
 このデバイスは、言うなれば人類の……?
「ふっ、武器、みたいな断言をしなかったのは見込みがあるわね。アフロディーネデバイスは間違いなく武器になる。けれど、それにしては一点説明がつかない点がある。それは、カグラコントラクターとかアンチアメリカみたいな武装組織ではなく民間人にばら撒いている、と言う点」
 そこまで考えつくとはさすがね、とマーシー。違う理由だと言うと評価が下がりそうだと感じた太一は沈黙を守ることを選んだ。
「けれど、その一方でアフロディーネデバイスを武器にしようと言う連中は存在する。それこそが今、千晶の命を狙っているものであり、恐らくアフロディーネデバイスを配布してる連中。なぜなら……」
「戦闘に特化した見たこともないピグマリオンを使う」
 試すように言い淀むマーシーに太一が言葉を継ぐ。
 マーシーは流石ね、と笑う。
「そう。そんな連中が人の命を狙ってる理由なんて数えるほどしかないでしょ? そういう意味でも、デバイスの意義を冒涜する彼らの目的を果たすわけにはいかないのよ」
「え」
 小さく声が出た。低く確かな怒りを込めた言葉だったこともさることながら、「デバイスの意義を冒涜する彼ら」とは。それは、デバイスの意義を知っていてそれを信奉する人間にしかでてこない言葉ではなかったか。
 太一は追及しようと口を開こうとするが。
「お疲れ様ー」
 千晶がリハーサルを終えてステージを降りてきたことで、マーシーは千晶に駆け寄り、太一はステージ周りの仕事をする必要に迫られ、その追及はひとまず後に持ち越されることとなった。

 

 今回の作戦はガラテアが二人いることから、敵が来る可能性のある二つの空間両方で待ち受けることになった。
 パドマを使い狙撃などの攻撃に対処可能な恵比寿は現実世界で千晶を守る。
 一方で太一はライブ開始と同時に情報実体空間を生成し、そこで待ち構える。
 情報実体空間は同じ場所に複数生成できない。
 つまり、太一が事前に生成しておけば、ハイパーループの時のように突然千晶が情報実体空間に囚われることもない。
 千晶が情報実体空間に囚われてしまうと、それだけで後手に回ることになってしまい不利だし、会場から千晶が突然消えればこれまた騒ぎになってしまうし。
 そして空間からの離脱はメイヤーのみが可能にしておけば、メイヤーが情報実体空間を去らない限り情報実体空間から出ることもできない。
 これで情報実体空間から実体空間に戻りステージに突然死神が現れる、といった事態も防げる。
 戦略的な意味でも、千晶の生活を守るためでも、必要な措置であるといえた。
 この方式の欠点は情報実体空間側に連絡する手段が存在しない事が挙げられる。
 モニターやホワイトボードでやり取りする案が出たが、情報実体空間から見える普通の空間は灰色に染まってしまうから。
 結果的に突起にブロックを指すタイプのブロックで作った点字と点字表でやり取りすることになった。
 誰一人として点字をマスターしていないため、読むのも入力するのもかなりのラグが予想されるが、全くの連絡が出来ないよりはマシだろう。
 ちなみに太一の側から連絡したい場合は携帯することになったペンとリングメモ帳に書いて、用紙を破って実体化を解除させる、と言う方式を取る。
 まぁ奪い合いモードに発展してしまうとできなくなるのだが。その時は自分のいる近くの実体空間が奪い合いモードになった、と通知が入るので分かる。

 

 とはいえ、太一の抱える問題はそんなことではなかった。
 自分の背後で推しが歌って踊っているのにその声は聞こえないし、その踊りは灰色の人型にしか見えない、と言うものだった
「悲しい……」
 しかしまぁ、あっきーと直接会話して裏で関わって、としてる以上、それくらいは受け入れないと他の熱心なファンに殺されそうだ。と思いなおす。
 リハーサルには立ち会えたわけだし。隠れ蓑ではあるが、見る側から作る側になった以上、ファンのみんなと肩を並べてペンライトを振ってはいられない、と言うことだろう。
「最初から、空間を作って待ち受けるとは考えたな、武士」
 さて、そんなことを考えていたせいか、向こうの隠密能力によるものか、男がその声を発するまで、太一はその存在に気付いていなかった。
「死神!」
 慌てて、右手を鞘に当てる。
「お前にはイレギュラーゆえとはいえ、二度敗走している。俺の名誉のためにも、この新しい力でお前を倒す」
 死神はそう言って何かをアフロディーネデバイスに装着した。もう変身はしているから、ピグマリオンオーブではないはずだが。
《Subunit is weared》
 サブユニット? なんとか聞き取れた英単語がそれだった。いまオーブに装着したのがそのサブユニットか。
《ルドヴィーコ》
《アリス》
《アンミタート》
 そして三つのピグマリオンオーブが取り出される。
 全て聞いたことのないピグマリオンオーブ。例外的にアリスだけは魔女アリスかとも考えられるが、アリスというのは本名で魔女名はユングだ。この前ユングのガラテアに出会い、魔女アリスのピグマリオンオーブはアリス名義ではなくユング名義なのを確認済みだ。
 また、見た目も違う。普段使うピグマリオンオーブは土台が金色だ。これは死神の使う「シン」なるピグマリオンオーブも同じ。
 一方で今取り出された新しいピグマリオンオーブ達は土台が白かった。
 そして三つのピグマリオンオーブが新たに装備された推定サブユニットに装填される。
《quartet combo:インクィジター》
 コンボ? またしてもなんとか聞き取れた英単語がそれだった。
「な、なんだ、それは」
「アイツらはサブピグマリオン、と呼んでいたな。まぁ名前などどうでもいい。要はこれが俺の新しい力、と言うことだ」
 何が新しい力だ、そのアイツらとやらから与えられた力だろ、と思ったが、自分の人のことは言えないことに気付いたので口に出す前に口を閉し、一の太刀を構えた。
「『神の命令』の大鎌をジェネレート」
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 死神が死神たる所以、大鎌が男の手元に出現する。
 ――どうする。こちらから仕掛けるか? だが、敵のサブユニットとやらが気にかかる。
「来ないのか? ならこちらから行かせてもらおう」
 大鎌が振われる。太一は真の太刀で受け止める。
「ぐっ、前より、なんか、圧迫感が?」
「サブピグマリオンにより神性力が増しているのだ」
 ――つまり、圧倒的神性防御って事か!
 外がどうなってるか分からないが、一度距離をとってメモを送らないと。
 神性には神性で当たらなければならない。つまり、恵比寿だ。
「千風刃!」
 胴体に向けて放ったそれは軽い音を立てて弾き返される。
「無駄だ」
 大鎌がもう一度振り上げられ、再び振り下ろされる。隙だらけの動きだが、神性に守られた死神には関係ない。
 太一は後ろに大きく飛び下がるが、大鎌のリーチからは逃れられない。
一の太刀いちのたち大太刀おおたち死威琉怒斬りしーるどぎり!」
 弾き返す。そしてそのまま距離を取る。
一の太刀いちのたち大太刀おおたち麗挫悪突きれーざーつき!」
 一の太刀がレーザーのように突っ込んでいく。原作本来なら二の太刀用の技だが、一の太刀でも使えるようだ。
 ――ダメ元だったが、出来たな。これが応用ってやつか。
「ふん、距離を取ったら安全と見たか。天使銃をジェネレート」
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 死神の左手に七発装填のリボルバー拳銃、ナガンM1895が出現する。
「『神の命令サリエル』」
 自動でリボルバーが回転する。
「な」
 太一にはその銃がなんなのかは分からなかったが、とにかく遠隔攻撃が来るとだけは確信した。だが、シールド斬りで受け止められるかを試すのは賭けになる。

 


 

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