聞き逃して資料課 ハロウィン編?
2020/10/17
それから二ヶ月ほどが経過して、気がつけばもう10月だ。
まぁ色々大変だった。
肝試しを行う連中のせいで生じたロアを肝試しをしようとする奴らから助けたり、人外設定や魔術関係設定でデビューしたVirtualYouTuberがちゃんとした人間かどうかウラをとったり。
「関係ないですけど、この裏取りって本当にいるんですか? 今のところ人間ばっかりですけど」
「鈴木君の担当した中には本当のネクロマンサーがいたらしいよ」
中島巡査部長が資料を手渡してくれる。
「本当だ、今年の7月にデビュー、なるほど」
「きちんと届け出てくれたから、問題を起こさない限りは問題ない」
「なるほど」
いるもんなんだな。
「あとは、ロア化の危険も見ておきたいからね」
「ロア化? あぁ、そうか。引きこもりがちで外と本人がやりとりしない場合……」
「そう。その子との繋がりがアバターを通したYouTube上でのものばかりになってしまえば、彼女の存在はその姿で認知される事になる。そこへ例えば変身願望が強かったりすると」
「なるほど、アバターの姿にロア化してしまう可能性がある、と」
「あぁ。その子がもし魔王設定だったり、傍若無人キャラクターのロールプレイをしていたりしたら、そこも現実になってしまう可能性がある」
「そうなると、霊害になりますね」
「そゆこと。だから、人との交流の有無、変身願望の有無辺りは確認の必要がある」
「なるほど……。この先、バーチャルチャットとかで人がアバターを持つのが当たり前になってくると、……大変そうですね」
「だね。まぁ、それらの問題は僕ら警察だからこそ対処可能な問題だ。頑張って行こうじゃないか」
「はい」
納得して側を離れる。
「っていやいや、ついでに質問を投げてしまいましたが。あの、お話があると聞いて伺ったんですけど」
「あぁ、そうだったね。いよいよ来週に迫る大きな作戦について、そろそろ君にも話しておこうと思ってね」
中島巡査部長がこちらに向き直る。
to be continued……
2020/10/19
「まず、宮内庁の討魔師達が天皇の力を借りて戦うのは知ってるよね。これは天皇陛下が神武天皇っていう神様から続く家系であるからなんだけど」
そう言えば、そうだったな。神武天皇は実在したって事なのか? それともそういう理論によって照応してるだけなのか?
いや、こういう厳密な区分けは神秘には馴染まないんだよな。
ただ、日本神話が事実なのかはやっぱり気になる。
他の神話との整合性はどう取られてる?
科学で証明されている事実との矛盾点はどう解消する?
はっ。そもそも科学面にもカバーストーリーが敷かれてるのでは無いだろうか。
AGHFのような魔術を使う対霊害組織もいるわけだから、研究者達の認識をまとめていじるくらい、余裕そうだ。
そうだとすると、なんでもありだな。
実は太陽なんてなくて、あれはなんらかの神性が放ってる強い光と熱でしか無いのかも。
ってか記憶操作を考えると本当にキリがないな。自分さえ信じられない。
デカルトは
そう考えると神秘の事を大衆が知らないのは正解だな。想定される認知にキリがなくなる。
「以上が概要と注意点だ。大丈夫?」
あ。
「バッチリです」
あ。
やべ……。いや、まぁなんとなく分かる。次のビッグイベント、ハロウィンだろうな。
to be continued……
2020/10/20
十月二十日。
「さて、今日から早速君をリーダーとして霞ヶ関エリアをどう守るかを、部下たちと相談してもらおうと思う」
「え、っと?」
「あぁ、昨日詰め込んだから、流石に細かいエリアのこととかは覚えてないか」
中島巡査部長が地図を取り出す。
「これが、作戦中に僕らが気にしないとならない地点だよ。魔術的な結界を大規模に貼ってあるから、この赤いライン沿いにしか移動できない」
「防衛部隊の討魔師が交通防御地点に詰めて敵の進行を止めることになる。それ以外の地点の敵は遊撃部隊の討魔師が対処するよ」
「で、僕らは警察という性質上、霞ヶ関エリアと新宿都庁エリアの二つ、政治的要所地点を守るのが主な任務。新宿都庁エリアは自衛隊の対霊害部隊が守るから、僕らは霞ヶ関エリアになるってわけ」
ハロウィンってこんな一大攻勢を仕掛けてくる敵との戦闘になるのか。
「ま、毎年この規模なんですか?」
「ん? いやいや、毎年こんな事じゃたまらないよ」
あぁ。やっぱりそうだよな。今年のハロウィンは何か特別な事情があるようだ
話は聞いてなかったが、まぁ適時こうやって中島巡査部長から聞けば良いよな、なんとかなる
to be continued……
2020/10/21
「まとめると、アンジェや旧親月夜派の討魔師などの精鋭が第一から第三の遊撃隊として敵を討滅。他の面々は各地点で防衛って事ですよね」
「そうなる。厳密にはアンジェたちは特別対応班って扱いだけどね」
なるほど。ならまぁこっちが考えることはほぼないか。
「ただ、僕らにはもうひとつ任務がある。安曇の確保だ」
「安曇。異世界へ逃走し、その後戻ってきたと思われる男ですね?」
「あぁ。しかも"灰色の男達"がそれを利用する気でいる。もちろん彼らが表立って戦いの場に出てくれば遊撃部隊や特別対応班でいいんだが……」
「話が見えてきました。安曇や"灰色の男達"の関与が伺えた時は、俺たちが捜査権を使って捜査することになる、ということですね?」
「そう。その場合、霞ヶ関にも自衛隊が展開する。これは中国巡査がその可能性に気付いたからこそ事前に準備できた事だ。お手柄だよ」
「はぁ、恐縮です」
「僕が同行出来ないのが心配だけど、この功績から君を信頼して君にリーダーを任せるんだから、頼んだよ」
「え」
「ん? 言ったろ、僕は皇宮警察の方に応援に行かなきゃならないんだ」
あぁ、元は皇宮警察からの出向ですもんね。
「ま、シミュレートは万全にしてきてじゃないか。そう心配しないで。明日はお互い頑張ろう」
「はい」
じゃ、解散。と中島巡査部長が去っていく。
……明日?
……………明日!?
「明日!?」
ハロウィンは22日にはない。読み違えた!?
to be continued……
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