アフロディーネロマンス 第10章
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創作上の存在を自身に纏い戦う存在「ガラテア」の一人であり、ドルオタでもある
ある日、ガラテアに襲われている少女を助けると、その少女は太一の推し、あっきーこと、
千晶に自作自演を疑われる太一だったが、直後、「死神」とでも呼ぶべきガラテアの襲撃を受けたことで、疑いが晴れる。
ある日、太一が家に帰宅しようとすると、そこに千晶が訪ねてきていたのだった。
千晶により詳細な事情を説明する太一、途中銀行強盗が発生し、ヒーローを自認する太一は即座に急行する。そこで再び死神の襲撃を受けるが、謎の干渉を受け、無事脱出に成功する。
自身が「死神」に狙われていると感じた千晶は太一に護衛を依頼するのだった。
「死神」以外からのガラテアにも狙われる千晶。やがて、二人はクエストという存在を知る。今後もガラテアに狙われると感じた千晶は太一を自身の事務所に手伝いとして大知を紹介することを決め、マネージャーのマーシーと顔をあわせる。
ハイパーループのチューブ上で、二人は千晶を狙うガラテア、
マーシー達と合流した一同は一路青森へ向かう。途中、千晶は様々な情報を調べ、疑念を得るが、仮眠を取ることにする。
仮眠中、
恵比寿との戦いで苦戦する太一だが、恵比寿からの教えを受けて、勝利する。
ついに青森で千晶のライブが始まる。そこへ再び「死神」が襲いかかる。サブユニットなる謎の装備を使いこなす「死神」に苦戦する太一だが、千晶が協力を要請していたことで駆けつけてきた豪士の助けを得て、撃退に成功するのだった。
青森から東京に帰ると、サブユニットとサブピグマリオンオーブが一般人の手に配られ始め、そして、アフロディーネゲームの開始が宣言される。
一方、クエストデバイスやサブユニットを使えないデバイスを持つ太一はアフロディーネゲームの運営から呼びつけられ、デバイスを改修してもらう。
帰り道、
いい勝負をしたが陽光に敗北する太一。陽光は太一に「千晶に会わせろ」と要求する。彼女の目的は「オーブをばら撒くもの」への対処であった。それは「デバイスをばら撒くもの」を敵視する太一たちと利害が一致していると言えた。
そうして仲間が増えた千晶の元に、一本のメールが届く。それは
『ある日、どこかの施設の中で』(『太平洋の世界樹』(著・メリーさんのアモル))
「というわけで、回収したカオスデバイスを解析したけど、既に我々が入手している情報以上のものは得られなかったわ」
ボサボサのままの赤髪が特徴的な白衣を纏った女性がそう報告する。
「何も? 確かか?」
スーツを着た偉そうな男が問い返す。
「えぇ。このカオスデバイスのハードウェアとしての構造はあなた達が後から電波発信機能を除けば、完全に我々がアフロディーネデバイスと呼んで生産しているそれと全く同一のものよ。あぁ、あと違いと言えば、あなた達が書き換えたソフトウェア部分もあるわね」
そう言って、女性が手に持つデバイスのボタンを押す。
《Please Set Key.》
「なるほど、我々はアフロディーネデバイスを生産するにあたって音声を変更したからな」
男が頷く。
アフロディーネデバイスは本来、ボタンを押すと《Please Set Orb.》と鳴る。だが、このデバイスは違う。《Please Set Key.》と鳴ったのだ。
「鍵をセットして下さい、か。やはり、この現実改変デバイスの基幹は『鍵』の方か」
「えぇ。初めてあなた達に攫われた時に伝えた通り。デバイスはあくまで人間が使うためのインターフェース。情報空間に接続するための諸元情報は全て『鍵』の方にある」
女性の言葉に、男は静かにそうか、と呟いた。
◆ ◆ ◆
御神楽宇宙開発が2045年に突如としてその設立を宣言した
どちらも正直お金になる事業とは言い難い。しかし、現実にはそこに大企業として存在している。
特にPMC部門にあたるカグラ・コントラクターは空を飛ぶ航空母艦や音速で飛翔する
そんな御神楽財閥の本社、御神楽桜花ビルディングに、一行は訪れていた。
「お、俺、こんな豪華なビルに入るの初めてだぜ……。俺みたいな貧乏がいたら泥棒かと怪しまれねぇかな?」
エレベータの中、緊張した面持ちで
「平常心でいなさいよ。キョロキョロしてたら却って怪しいわよ」
そんな豪士に
「でも俺もスーツなんて初めて着たよ。服に着せられてる気分だ」
とエレベータの鏡の前で、呟くのは
「大丈夫、似合ってるって! なにせこの私が用意したんだからね」
と笑うのは
「悪いわね、仲間になるなり面倒を押し付けて」
「いいのいいの。これくらいルーンでちょちょいのちょいだからねー」
千晶の言葉に陽光が笑う。
そう、太一と豪士がいま着ているスーツはどちらも陽光がルーンで用意したものだ。流石に便利すぎるだろうと思ったが、何でもマルチに活躍できるのが『退魔師アンジェ』などに登場する英国の魔女というものだったので、あまり突っ込むものはいない。
「そんなことより、千晶ちゃんのドレス、似合ってるよ」
そう言ってさらに陽光が笑う。そう千晶はパーティ用のドレスを身にまとっており、とてもかわいい。
(俺も伝えたかったな)
などと太一は思ったが、こういうことを忌憚なくやり取り出来るのは女の子同士の特権だろう。
やがて、エレベータが到着する。
「ご無沙汰しております。本日はお忙しい中時間を作って頂き、誠にありがとうございます」
会長室、と言うには少し質素なその部屋に入るなり、千晶はすぐに挨拶する。
「やぁ、待ってたよ」
それに応じるのは
「それで、今日は個人的な用事だと聞いたけど……、お友だちが一緒とは珍しいね」
宗次郎はあくまでフランクに千晶に問いかける。
「えぇ、まぁ」
千晶は宗次郎に促され、ソファに腰掛ける。宗次郎も向かいのソファに腰掛けた。
なお、太一、豪士、陽光は立ったままだ。
「お友達の分まで座るスペースがなくてすまないね」
「いえ、質素を好む会長のお人柄は以前にお話を伺って存じ上げてますから」
そして、千晶は宗次郎に聞きたいことが二つある、と本題を切り出した。
「単刀直入に伺いたいのですが、このデバイスをご存知ですか?」
千晶が事前に太一から受け取っていたデバイスを取り出し、机の上に差し出す。
「これは……!」
宗次郎は驚いたようにそのデバイスを手にとって、よく見て、言った。
「これは……カオスデバイスじゃないか。なぜ君が持っているんだ?」
宗次郎はそう言いながら慌てて立ち上がり、窓のカーテンをすべて閉じた。
一瞬部屋が暗くなり、その後、部屋の照明がついて明るくなる。
「カオスデバイス?」
千晶が聞き返す。
「『鍵』とデバイスがひとところに集まっているなんて、どういうことなんだ」
困惑したように宗次郎が呟く。
「なにかご存知なら教えていただきたいのですが」
「こちらも教えてくれ。君達はどこでこのデバイスを手に入れたんだ」
本来なら質問に別の質問を被せるなどと、失礼な行為である。だが、千晶はそれを咎めず、答えた。
「こちらの彼が物心ついたときには持っていた、と」
「そちらのお友達が……?」
訝しげに宗次郎が太一に視線を向ける。
「あっ、まさか、君は……!」
そして、表情が驚きに変わる。
「え、あ、えっと」
やべ、なにか失礼だったかな、と太一が見当違いに慌てる。
「まさか……そうなのか? 君は、太一君、なのか?」
「え?」
思わぬ言葉に太一が聞き返す。
「はぁ。そうです。彼の名前は
「あぁ、間違いない。君は、
今まさに失礼を働いた太一に呆れつつ、代わって千晶が太一を紹介する。すると、途中で宗次郎がその言葉を継いだ。
「え? えっと……由紀さん……って言うのは?」
訳が分からず太一が尋ねる。
「成瀬 由紀。かつて若き天才と言われた天文物理学の博士よ。まぁそれ以外にも色々発明していたようだけど」
「そうだね、彼女は発明家、と言われる方がしっくりくる」
その様子に本当に何も知らなかったのね、と千晶が説明してくれる。
「それが……俺の、母親?」
「あぁ、君は由紀君によく似ているよ」
太一がまだ受け入れられないでいる様子だが、宗次郎はそう言って頷く。
「それで、カオスデバイスと言うのは?」
「彼女の発明品の中で最も秘されていたものだ。あ、彼女は発明品にギリシャ神話から名前を取る癖があってね、カオスもギリシャ神話の
「そんな癖が……」
では、ギリシャ神話の神アフロディーネとピグマリオンの名前をとるアフロディーネデバイスとピグマリオンオーブも彼女の発明品なのだろうか、千晶は考える。
「どう言ったものなんですか?」
「情報操作。そう彼女は呼んでいた。この世界は情報空間と呼ばれる空間と示現空間と呼ばれる空間の二つで構成されていてね。私達が住むこの示現空間は、情報空間によって記述された影のようなものなんだ」
そう宗次郎が説明する。
「つまり、カオスデバイスは情報空間を書き換えてる事で、この世界を書き換える装置、と言う事ですか?」
千晶が問いかける。情報空間、という設定は『Angel Dust』など、41年の伝説の中で語られており、彼らにとっては理解が早い。
「そう言う事だ。もっとも、デバイスそのものには情報空間にアクセスするための座標情報がなくてね。そのためにはカオスキーと呼ばれる鍵が必要だ」
「カオスキー……ですか」
言われて、千晶は思い出す。太一の持つアフロディーネデバイスは、「Please Set Key」、つまり、鍵をセットして下さい、と鳴っていたのではなかったか。
対して、他のデバイスは「Please Set Orb」と鳴る。
つまり、太一の持っているデバイスがオリジナルで、他は複製し、改造されたもの?
「ちなみに、アフロディーネデバイスや、ピグマリオンオーブ、と言う名前に聞き覚えは?」
「いや、ないね。それは?」
千晶の問いに、宗次郎が答える。本当に知らない様子だった。
つまり、何者かが由紀の開発したカオスデバイスをアフロディーネデバイスとしてばら撒いている。カオスキーなる道具の代わりにピグマリオンオーブを用いて。
「ありがとうございました。もう一つよろしいですか?」
「構わないよ」
そして、千晶は質問を続ける。
「率直に言って、御神楽宇宙開発の懐事情は暖かくなかったですよね? それが突然財閥になり、今や、世界最強のPMCを有し、アメリカでは軌道エレベーターの開発計画まで進んでいる」
「……」
宗次郎は先程までのお喋りが嘘のように黙り込み、続きを待った。
「やはり単刀直入にお尋ねしますが、何者かから資金提供があったのではないですか?」
「……」
宗次郎は少し悩んでから、答えた。
「先程のカオスデバイスと関係があるのなら、答えない訳にもいかないか。あぁ、その通りだ」
「やはり……! その提供先はまさか……アンチ・アメリカでは?」
「まさか、それは勘違いだよ」
慌てたように宗次郎が否定する。
「資金提供をしてくれたのはね、カグラ・コントラクターだ。厳密にはその特殊第四部隊、と言うことになる」
「はい?」
千晶は思わずそんな失礼な返事をしてしまう。
カグラ・コントラクターは御神楽財閥の子会社だ。そこから資金提供があった? それではあべこべだ。
「カグラ・スペースとカグラ・コントラクターは元々別の組織だった、そう言うことですね?」
困惑する千晶に陽光が自分の考えを口にする。
「そう言うことだ。そしてね、信じて貰えるかは分からないが、彼らは、異世界からやってきたんだ」
「異世界?」
「あぁ、こことは違って、御神楽宇宙開発が発展し、それこそ本当に御神楽財閥が生まれた世界からね」
「並行世界、と言う奴ですか」
と、千晶。
並行世界の概念は41年の伝説の作品内でも語られている。
41年の伝説で語られる世界は全て
例えば、『退魔師アンジェ』で主人公であるアンジェは第二部である大きな決断をするが、『三人の魔女』ではその時に違う決断をした姿が描かれている。
そんな並行世界が実在するというのか。
「じゃあ、カグラ・コントラクターは並行世界から何しにこの世界へ?」
千晶達が驚いている間に、陽光が問いかける。
「実は聞かされていないんだ。並行世界を跨ぐ事件があり、その解決のために来た、とだけ聞いている」
並行世界を跨ぐ事件、随分と大規模な事件があったものだ。
「あの、よろしければ……」
少し悩んでから、千晶が切り出す。
直後、爆発の音が響く。
さらにジリリリリと警報を示すベルが鳴り響く。
「何事だ?」
宗次郎がデスクに駆け寄り、内線電話を手に取る。
「どうしたんです?」
千晶が立ち上がり、宗次郎の元に近寄る。立っていた三人も続く。
有事の気配を感じ、太一は机の上のデバイスを手に取り、腕に装着。豪士も袖の内側に密かにデバイスを出現させる。
「何者かの襲撃らしい。うちの部隊が迎撃にあたっているが、ここは戦闘員が少ないから、旗色が悪いようだな」
非常階段から避難しよう、屋上に輸送機が止まっている、と宗次郎が促す。
扉を開けて、非常階段に出る。
しかし。
「やはり、下から突けば、ここに出てくると思いましたよ」
屋上には一人の男が立っていた。
「そのオーブは! 安曇のガラテアか!」
その腕につけていたアフロディーネデバイスには、安曇のピグマリオンオーブが装着されていた。
「えぇ、その通り。クエストのターゲットである『鍵』を頂きます」
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