栄光は虚構と成り果て 第7章

 

 睨みつける先から近づく巨大な影。
 砂塵を巻き上げながら進むその影はまだ遠かったが、しかし明らかに巨大で、既にここまで地響きが届くほどだった。
「あ、あれを覆うほどの円?」
 描けるのか、そんなものを。コトハは不安を覚える。
 と、後方で何かが稼働する機械音が鳴り響く。
 見れば、砂地の中から二門の砲塔が出現していた。
「エネルギー砲が一基だけ生きてた! こいつで時間を稼ぐが、長くは保たないぞ」
 どこからか聞こえてくるのはスーマの声だ。どこかにスピーカーがあるのだろう。
 直後、エネルギー砲とやらからびゅんびゅんと音を立てて緑色の光の塊が交互に発射されていく。
「ふぅむ、廃都にあるという戦艦遺跡に搭載されとるのと同じ武器か」
「ハイト?」
 気になる単語が聞こえたので思わず反応するコトハ。
「今はそれどころじゃねぇだろ。俺はいつもみたいに足を狙う。二人はどうする?」
「僕のサンドガンが効くとは思えないからなぁ、ここはコトハを守るのに徹するよ」
「ワシも力にはなれなさそうじゃのう。どれ、スーマを助けられんか様子を見てこよう」
 ズンはそう言うと、地下施設の中に降りていった。
 こうして、前進するルチャルトラと、コトハの側で構えるジオ、そして不安に駆られるコトハが残された。
 エネルギー砲を受け、超獣が僅かに進路を変える。
「ってことは……」
「効いてるんだ。へぇ、やるじゃんあの緑のやつ! あれを何とか武器に出来ないかなぁ」
 ジオはエネルギー砲の強さにテンションが高まっている。
 しかし、それどころではないのがコトハの心境だ。
 もっともシンプルな作戦は事前に穴を書いてそこに誘導する事だが、ことこの状況においてはその作戦は可能とは言えなかった。
 なにせ、魔術で空中に描いた線は、物体にあたると掻き消えてしまうのだ。事前に円を書いたとて、そこに超獣が入れば、その部分の線が消えてしまう。
 ――つまり、超獣を誘い出した上で、消えた円の部分を描き直さなきゃいけない
 だがそれもまた困難だ。
 なにせコトハは見えない場所に線を引けない
 ――つまり、超獣を誘い出した上で、超獣が円の中にいる間に、超獣の背後に回り込み、円を完成させる……?
 そんな事が可能なのか。
 しかし、コトハの逡巡など関係なく、超獣は歩みを進める。
 エネルギー砲とやらは少なくとも多少のダメージを与えてはいるようだが、コトハ達の元に接近してくるまでに倒れると言うことはないだろう。
「覚悟を決めるしかないか……」
 コトハは右手を構える。
 直後、超獣が大きく口を開け、口から熱線を吐き出した。
「伏せて!」
 とっさに、ジオがコトハを押し倒す。
 衝撃波すら纏う膨大な熱量の熱線がコトハの真上を通り抜けていく。
 その膨大な熱量はエネルギー砲を一瞬で溶かし尽くす。
「う、うそ……」
 冗談じゃない。あんな熱線になんの対策もなく対処できない。
 急速にコトハの戦意が失われていく。
「戦う」と言う選択肢が占めていたコトハの脳裏に「逃げる」と言う第二の選択肢が浮かび上がってくる。
 逃げるを選べばとりあえず自分の命は助かるだろう。だが、奥に行ってしまったズンとスーマは見捨てることになる。
 先に進んでいるルチャルトラも見捨てることになるかもしれない。
 それでも……。
 ――あれに、勝つ?
 それは到底現実的な思考とは思えなかった。
 視線は背後に、ルチャルトラに、そして超獣に。
 超獣の鳴き声ひとつ。コトハの逡巡は終わった。
「っ」
 コトハは黙って超獣から背を向けて駆け出した。
 ――冗談じゃない! あんなのには勝てない! ズンもルチャルトラも、ましてスーマなんて知るもんか、まずは、まずは自分が生き残らなきゃ!
 そうでなければ、この世界に来た意味はないのだ、と、コトハの心が叫んでいる。
 しかし、ある程度離れたところで、コトハが足場を固めた、その範囲から出て、足場が砂地に変化する。
「きゃっ!」
 無慈悲にも砂がコトハの足を掴み、虚しくコトハはその場に転倒してしまう。
「コトハ!」
 ジオが駆け寄ってくる。
「くそう、この、fatil zomp引き出せ!」
 もう一度広範囲を固めようと、コトハは以前と同じ呪文を唱える。
 前と同じように、光が溢れる。しかし、
「【gix警告den yol fatil zomp im fen fol短期間でリソース引き出しを使用することは出来ません
 見たことない文字がコトハの視界に映し出される。何故か意味を理解できる。
 ――なにそれ、クールタイム制って奴!?
 超獣が光に反応してか、コトハの方を向き、口を開く。
「コ、コトハ!」
 ジオが慌てるが、もう時すでに遅し。膨大な熱量が超獣の中で生成され、コトハに向けて放たれる。
 ――うそ、こんなところで、死ぬの……?
 コトハの脳裏にこれまでの記憶が走馬灯のように駆け巡る。
 ジオとの出会い、ズンとの出会い、自らの力と感謝の言葉、ルチャルトラとの出会い、そして、怒号に塗れた父親との生活。
 そして、白衣の男達に囲まれベッドに寝かされていた時の記憶。
「え……?」
 ――こんなこと……あったんだっけ?
 しかしその疑問を解くより早く、全てを融解する恐るべし熱線が迫る。
 走馬灯の記憶の中の男達が言う。
「資源回収装置埋め込み手術を開始する」
 迫る熱線にダブる伸びてくる手。どちらに怯えたのか、コトハは目を閉じる。
守れプロテクト!」
 しかし、熱線も、そしてもちろん手もコトハの方に到達しなかった。
 恐る恐る目を開けると、スーマが謎の半透明の膜を展開させ、熱線を防いでいた。
「くっ。そう、長くは保たない……。おい、コトハ、この熱線を回収しろ! あれは純粋なリソースの塊、資源変換が可能なはずだろう!」
「えっ」
 回収、資源変換。その言葉の意味は分からなかったが、しかし、その意味するところはなんとなく理解した。
 右手の人差し指と薬指を筆のように構え、膜の向こう側から迫る熱線を円で囲う。
 そして。
「t,txif起動
 膨大な光と風が溢れ出し、円の内側へと熱線が吸い込まれて消えていく。
「……今は人命救助を優先する」
 スーマはコトハを一瞥して何事か呟いたのち、超獣を見据える。
「コトハ、こちらは君の学者肌の仲間を救助するために地下遺跡に戻る。君とそこの弓使いはこのまま敵を惹きつけておいてくれ。では」
 スーマはすぐさまコトハにそう言い残すと、返事も聞かずに地下遺跡の入り口に駆け出した。
「え、えぇ」
 ――惹きつけておけって、そんなこと言われても……
 こんなところにこれ以上いたくない。ズンのこともルチャルトラのことも知らないから、さっさと逃げたい。
 それが偽らざるコトハの本心だった。
「どうする、コトハ?」
 気持ちを知って知らずか、ジオが声をかけてくる。ジオの意図は奴の作戦に乗るのか、独自に戦線を立てるのか、であって、逃げるか逃げないかではない。
「スーマの作戦に乗ろう。ズンさんを見捨てられない」
 嘘だ。逃げるのに邪魔ならばズンの事など、どうでもいい。
 ズンもジオもルチャルトラも、ここまで助けになった同行者だが、自分のためにならないなら、そばに置いておく理由はない。
 そう、かつて、大好きだった母親が私と父を置いて出て行ったように。
 けれどそれをジオに言うわけにはいかない。この距離なら、ジオの方が強いからだ。
 皆を見捨てて逃げる、などとジオに言えば、ジオは反抗する。場合によっては実力行使に出てくるかもしれない。
 母親に逃げられて変わってしまった父のように。
 ゆえにここは、とりあえずジオの求める二択のうちマシな方を選ぶしかない。
「分かった。じゃあボクが地下施設と反対方向に走りながら奴に攻撃して奴を惹きつける。コトハはあのなんかすごい奴から守って」
「分かった」
 大丈夫。それくらいなら可能なはずだ。
 ジオが矢を構えて駆け出す。
 頼りなく思える矢の一撃はしかし、神秘プライオリティと呼ばれる不可思議な法則により超獣に思わぬダメージを与える。直感に反する事実だが、その単発での威力はあのエネルギー砲より上であった。
 地下遺跡に狙いをつけていた超獣はすぐさまターゲットをジオに変更。口を開いてジオに狙いをつける。
 ジオはそこであえて足を止める。コトハが守りやすいようにである。
 ジオのコトハへの信頼が見て取れる行動であったが、コトハの心には届かず、コトハの心はいまだに逃げるか否かで揺れていた。
 なにせ、最大の障害となっていたジオが自らコトハの側を離れ、それどころか超獣の注意まで惹いてくれているのだ。
 逃げるにあたってこんなに条件の良いことはない。
 だが、問題は足場だ。コトハはまだまだ砂地を歩くのに慣れていない。足場を固められるか、目の前の人が固めて進んだところを歩幅を合わせて進むようにしなければすぐに転んでしまう。
 クールタイムが終わっている事を祈って使ってみるか? しかし、不発でも光を放ってしまう以上、不発のリスクが高い。
 その上、そこにジオがこちらに視線を送ってきた。
 これでは逃げられない。もし向こうがこちらの意図に気づいて追ってきたら、最低でもあの熱線にやられるのは確実だ。
「仕方ない」
 コトハは二本の指を構えて、ジオの前に円を描く。
 熱線が放たれる。
txif起動
 コトハの描いた円の中で、膨大な光と風が発生し、熱線がその中に飲み込まれていく。
 ジオがあまりの光量と風量に腕で顔を覆う。
 ――そうか、このタイミングなら逃げられる!
 それさえ分かれば、やる事は決まった。
fatil zomp引き出せ!」
「【gix警告den yol fatil zomp im fen fol短期間でリソース引き出しを使用することは出来ません
「まだダメか」
 ジオの方に向くと、ジオがまた走り出している。気付いた様子はない。
 再び超獣が口を開ける。
 コトハも対応して円を生成し、
txif起動
 熱線が円の中に消えていく。
fatil zomp引き出せ!」
 再び引き出す。
「【gix警告den yol fatil zomp im fen fol短期間でリソース引き出しを使用することは出来ません
 失敗する。

 

 繰り返す事三回。

 

 再び超獣が口を開ける。
 コトハも慣れたもの、対応して円を生成する。
 しかし、その次が違った。
 超獣の口から放たれた熱線は散弾の如く四方八方に散らばって放たれたのだ。
txif起動
 コトハはそれが放たれた瞬間に起動を口にするから、気付いた時にはもう遅い。
「きゃあっ!」
 放たれた散弾のうち一つはコトハの足元に着弾し、コトハを派手に吹き飛ばした。
 砂地に落下し、そのまま滑るコトハ。
 身体中に細かい傷がつき、目に砂が入る。
 身体中が痛いし、目も開けられない。
「もういや……もう無理……」
 もはや、コトハの戦意は0に近かった。
「コトハ、次が来る! はやく援護を!」
 ジオから助けを呼ぶ声が聞こえる。実はこの時ジオも周囲に飛び散った熱線の余波を受けて動けない状態にあり、ジオも必死だった。
 しかし、ジオのその言葉は、悲しいかな、ジオの意図とは正反対の役割を果たすこととなる。
 即ち、ジオの声のする方と反対に走れば、逃げられるのだ、と。
「f……fatil zomp引き出せ
 ついにクールタイムが終わったのか、それともコトハの命の危険を感じてか、光が放たれて大地が固まる。
 コトハは駆け出す。
 駆け出しながら、今更過ぎる罪悪感がコトハの中に僅かに芽生える。
 いくら自分の生存のためとはいえ、他者を見捨てて心が痛まないはずがないという至極当然の話。
 つい、コトハは走りながらも振り向いて、目を瞑っていても視界を確保する、それを起動する。
lai zomp可視化
 見えた光景はいつもと違って、何もかも真っ白だった。
 真っ白に輝く大地の上、ジオらしき白い輪郭の人影は立っていた。
 その奥にはすごく真っ白に輝く超獣の輪郭。
 そして、そこからまっすぐコトハに向けて放たれた、これまた同じく真っ白に輝く"何か"。
「え」
 もはや、避けるなどという猶予はない。防ぐなどという時間はない。
 死。
 その一文字がコトハの頭の中に浮かび上がり、一瞬にして占めていく。
 もはや走馬灯の如き回想すら許されない。
 コトハの脳裏に思いつく言葉はただ一つ。
 ――どうして
 助かるために逃げたのに、どうしてこうなるの。
 ジオが引きつけてるはずなのに、どうしてこちらを狙うの。
 なにより、どうして最後の最後までこんな理不尽に襲われなければならないの。
 その全てのどうして、に答えはない。
 コトハはただ、恐怖から腕を下ろした。
 ――あぁ、これは罰なんだ。人を助けるなんて言っておきながら、人を見捨てたから
 けれど、もしそうだというなら、あの母親にも、あの父親にも、罰が下りますように。
 ……しかし、その最後はなかなか訪れなかった。
lai zomp可視化
 目に右手を乗せる。
 目の前に見えるのは、腕を熱線に向けて突き出した白い輪郭の人影と、そこから放出されるレンズ状の真っ白な膜。
「スーマ?」
「天丼で悪いな。しかし、見直した。動けなくなったジオを助けるために、リソースを引き出して囮を担うとは」
 返事するその声は、確かにスーマだった。
「そうか、奴らはサーキュレタリィリソースを狙って動いておる。あえてリソースを大量に用意することで注意を惹きつけたというわけか。考えたなコトハ」
 もちろんそんな事実は知らないが、逃げようとしただけ、とはいえないので、コトハは曖昧に笑う。
「だが助かった、このリソース量ならやれそうだ」
 スーマの手の先に薄く白い光が複雑な幾何学模様を作り出す。
 思わず目を開けると、そこには青白い魔法陣のようなものが出現していた。
 そしてそこから変わった見た目の剣が出現する。
 オレンジの剣身に柄と剣身の間に赤い歯車のような装飾がついており、その歯車の中心には黄色に輝く宝石が取り付けられている。
 ズバン、と、剣が振られ、熱線が両断される。
 ――なにそれ
 とコトハは思った。
 まるでスーマの方がよっぽどファンタジー小説の主人公みたいだ、と。
 コトハを二度助け、危険を顧みずコトハの同行者達を皆助けて見せて、そしてファンタジックな武器で危機的な状況すら脱してみせる。
 それは確かに、物語に出てくるヒーローのようであっただろう。
 転移世界に来てまで、何でこんな惨めな思いをしなければならないのか、唯一無二のヒーローでさえないなんて、とコトハは嘆いた。
「おまっ、それ、剣……ってやつか?」
 コトハを案じてジオと共に戻ってきたところだったルチャルトラが言葉を発する。
「そう見えるな。初めて見たわい」
 ズンが同調する。
 そんなに珍しいの? とコトハは首を傾げるが、資源を使わない遠距離武器が狩りの主流なこの世界では、資源武器であり且つ近接武器はかなり珍しかった。あったとしてもそれは木を削って作った投擲用の槍程度であり、金属を使った剣などほとんどないと言っても過言ではない。
「あいつは私が惹きつける。君たちは退け」
「そんな!」
「なんと!」
 ジオとズンが驚愕の声をあげる。しかし、その先は違った。
「超獣を前に討伐を諦めろっていうの!」
「一人で、まして近接武器で超獣と戦うなど危険すぎる!」
 片や、超獣から逃げる事を拒否する言葉。片や、超獣に一人で立ち向かうスーマを気遣う言葉。
「大事ない。さっき見せたように、防御の魔術なら多少心得があってね、あの熱線相手でも逸らすくらいなら可能だ。だが、誰かを守りながらでは逃げられない。むしろ、私が逃げられるように、私を一人にしてくれ」
 言い終わるが否や、スーマが駆け出す。
 超獣からの拡散熱線が飛ぶ。
 スーマの腰に下げた円柱状の石から青白い魔法陣が出現し、足元に移動する。そして、周囲の土が盛り上がってその熱線を防ぐ。
 土の壁は速やかに破壊されたが、熱線を後ろに送らないという目的は達せられた。
「な、なんという魔術じゃ……。こりゃ確かに任せたほうが良さそうじゃ。行くぞ、みんな」
 ズンが一行を先に促す。
 早く逃げたいコトハはこれに頷いて駆け出す。
「ちょっと待ってよ! ボクらは超獣を倒すために旅してるんだよ! それなのにあれを見逃すっていうの?」
「おいおいジオ、状況が見えてないのか? このままここで戦っても全滅するだけだぞ」
「でも……」
「安心せいジオ。こいつが次に現れる場所の推測はつく。ワシらが先にそこに向かい、事前に迎撃の準備をするのじゃ。ここで場当たり的に戦うより、対策を練り迎撃するほうが確実に奴を倒せるというもの」
「確実に奴を……そうか!」
 ズンの言葉にジオはすぐに頷き、コトハに続いて駆け出す。
 コトハは砂地に足を取られて進みが遅く、ジオはすぐにコトハを追い抜く。コトハはそんなジオが魔術で踏み固めた場所を選んで走り、ジオに追い縋る。
 そしてそこにズン、ルチャルトラがすぐに追いつく。

 

◆ ◆ ◆

 

 何度となく飛んでくる熱線を様々な魔術でなんとか防ぐ事数十回。
 視界の外側でコトハ達が小さくなっていく。
「これだけ凌げば、こいつもすぐさまあれを追ってはいかないだろう」
 スーマが笑う。
 超獣に思考はない。超獣は一定の法則に従い行動するだけの存在だ。
 そしてその法則の中に「逃げており離れたところにいる人間を狙う」というものは無い。厳密にはあったとしてもそれより上位の法則が多数存在する。
 故に、ここでスーマの役割はここで終わりだった。
「どれ、念のため、視界から完全に消えるまで耐久しておくか?」
 ニヤリと笑い、スーマは腰に下げた円柱状の石に触れる。円柱状の石から青白い魔法陣が出現し、足元に移動する。
 が、しかし何も発動しなかった。
空間リソース魔力切れか。ここまでだな」
 スーマに熱線が迫る。
「この体はここまでか。だが、お前は逃がさないぞ。アブダクター・織音おりね 琴春ことは
 熱線がスーマを飲み込む。
 熱線が消えた時、スーマの面影は塵一つ残っていないだろう。
 だというのに、最後の最後までスーマの表情から笑みが消えることはなかった。

 

◆ ◆ ◆

 

 スーマが熱線に飲み込まれて消えた頃、コトハ一行はようやく超獣が豆粒程度になるところまで逃げることに成功していた。
「いやー、しかし大した魔術だったわい。あやつ、ドウラクだなどとよく分からん事を言っておったが、学者だと言うことだったのかもしれんのう」
 いや、道楽は道楽でしょと思うコトハ。それはそうと。
「そんなにすごいの?」
「うむ。基本的にリソースレスデザートここはリソース……魔力が少ない故、普通なら体内の魔力を使って魔術を使うが、彼奴はコトハがどうやってか引き出した空間にひしめく大量の魔力を直接操作しておった。どこで研究したのやら」
「ふーん、よく分からないや」
「どう説明したものか。そう、まるでこの世界と違って空間魔力が潤沢にある世界で魔術を勉強してきたかのような魔術じゃった。と例えてみるか。魔術の理屈はほぼ同じじゃったが、実質的には異世界の魔術みたいなものじゃよ」
「異世界……」
 ――スーマも私とは違う世界からの異世界転移者?
「異世界ねぇ。そんなものがあるなら、この世界の超獣退治に協力してもらいたいもんだぜ」
「確かにのう」
 ルチャルトラの言葉にズンが笑う。
「あ、あのさあのさ。あのどこからともなく剣を取り出してたのは? あれはどうやってるの?」
「む? そういえば……あれはよく分からんのう。虚空から剣が出現したように見えたわい」
「そうだな、俺たちの使う魔術は魔力でモノを動かすのが基本だ。物を何もないところから取り出すなんて、そんなのは魔術じゃねぇ」
「ふーん、じゃあなんなんだろ」
 もしかして私の魔法の右手に近い物? とコトハは考える。
「そうじゃのう……」
「ねぇ、そんなことよりさ、次はどこに向かうの?」
 ズンが思考を始めるより早く、ジオがそこに割り込んでくる。
「うむ。次に向かうのは今分かってる中で最大規模の町じゃ。まぁここからだと数年はかかる程遠いゆえ、他の町やターミナル町を経由しつつにはなるじゃろうが」
「え、そんなに遠いの?」
 驚くのはコトハだ。
「そうだよ、その間に他の町が襲われるんじゃない?」
 ジオもそれに同調する。
「いや、巨大な超獣ほど膨大なリソース溜まりを狙い、半端な所は見逃すものじゃ。あれほどの巨体なら、真っ直ぐにあの町を狙うに決まっておるわい」
「ふぅん、そう言うものなんだ。なら、道中で他の超獣を倒しつつ、向かおう! その最大規模の町とやらへ!」
 ジオが意気揚々と駆け出す。
「こらこら先は長いぞ。ペースを上げ過ぎるな」
 

 

To Be Continued…

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