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栄光は虚構と成り果て 第8章

前回までのあらすじ(クリックタップで展開)

 地球に住んでいた少女、コトハはある日、目を覚ますと、太陽が二つある砂漠にいた。
 小さな肉食の爬虫類に襲われたところを、二足歩行で歩くトカゲであるラケルタ族のルチャルトラに助けられたコトハは、そのまま町までルチャルトラに案内してもらうことにした。
 まもなく町に到着するという時、二人の前に、巨大なワニが姿を現す。絶体絶命と思われたその時、コトハは自身の能力を思い出し、敵を円の中に誘導、消滅させる事に成功した。
 町に辿り着いて治療を受けることが出来たコトハ。そのまま町に住む事を許可され、新しい生活が始まるかと思われたが、町に超獣と呼ばれる巨大な怪物が襲い掛かる。
 ドラゴンさえもねじ伏せる圧倒的な力を持つ超獣を、しかしコトハはその能力で撃破する。
 この世界には多くの超獣がおり、人々を脅かしている。それを知ったコトハは、この能力で超獣を倒して回ることこそが自らの使命だと感じ、ルチャルトラと共に旅に出る事を決意した。
 魔術の学習を始めるも全く魔術を使えるようにならないコトハ。自分が教えるには限界だ、と感じたルチャルトラは、知り合いの学者をコトハに紹介するべく「街」へと向かう。
 「街」とは何百年もかけて作られた超獣を倒すための場所。コトハはそこで、自分の力抜きで人々が超獣を討伐するところを目撃する。
 ただしそれは400年もの時をかけた人間たちの執念がなし得た事。やはり超獣を倒すには自分がその能力を使うしかないのだ、とコトハは再認識した。
 大きめの町で学者であるズンから魔術を学ぶコトハ。二人の協力のおかげでコトハはようやく魔術を取得することに成功する。
 そしてこの町には神殿があった。神殿は御神体と呼ばれるものから神託を受け取れる場所だ。最新の神託は「霊山・デルタ山に近づくな」というもので、事実、デルタ山には超獣を超えるかもしれないというほどの強力な怪物が住んでいることが確認されたらしい。
 新しい情報が得られないかと期待して神殿を訪れるコトハ達一行の前に、神託は下る。曰く「リディストリビューターが来るから逃げろ」。
 御神体を持ち出す儀式が始まる中、超獣が襲撃してくる。コトハは超獣に町を滅ぼされ復讐を誓う狩人・ジオと協力し、超獣を撃破するが、御神体は破壊されてしまった。
 コトハの力を知ったズンとジオはそれぞれの理由からコトハと同行する事を決意。四人は新しい情報を得るため、情報が集まる町へと出発した。
 情報が集まる町「ターミナル町」に辿り着いたコトハ達一行、しかし、ターミナル町には「この町を訪れる旅人の一人がこの星を根源的に終わらせる災厄をもたらす。何も施すな」という神託を受けており、情報提供を拒否されてしまう。
 同じく困っていた旅人のスーマが怪しい事を引き合いに出し、取引を要求するルチャルトラ。功を奏して狩場の肉を取ってくれば情報を教えると約束をしてもらう。
 辿り着いた狩場にいたのは肉食動物ハンターであるサンドヒポポ。砂の塊を飛ばし、砂に潜る厄介なその生態を前に、コトハは新たな能力を思い出し、見事にサンドヒポポを倒すことに成功するのだった。
 肉を納品したコトハ一行は「自分の能力は文明が滅ぶ前の技術によるものに違いない」と信じ、情報を探して遺跡へと向かう事を決める。
 遺跡へ向かう道中、新たな能力に目覚めつつも、遺跡に辿り着くコトハ一行。そこにいたのはターミナル町で待ちぼうけを食らっていたはずのスーマだった。
スーマによると、コトハ一行が肉を狩りに向かった翌日、隣町から新しい神託「災厄をもたらす者は町を出た。旅人をもてなすべし」が届き、スーマは無事情報を得ることが出来たのだという。
 遺跡でパソコンを見つけ起動するコトハ。そこに綴られていたのは、超獣に蹂躙される文明の記録だった。とはいえ、コトハの欲しい情報は何もなく。その上、そこに一際巨大な超獣がこちらに向かってきたのだった。
 一際巨大な超獣の強さは凄まじく、コトハは同行者を見捨て逃げようとする。しかし、うまく行かず、あわや自らも死ぬというところを、スーマに助けられる。
 スーマは自らが囮を買って出て、コトハを逃がす。
 コトハ一行は一際巨大な超獣が他の町に向かうのを見越して先回りして対策しようと動き出す。
 囮を務めたスーマは、意味深な言葉とともに熱線に飲み込まれる。その表情は今から死ぬ人間のものとは思えなかった。

 

 
 

 

txif起動
 膨大な光と風が発生し、円で囲われた内部の砂が消え去る。
「おぉ、こりゃすげぇな。落とし穴を作るって聞いた時は無茶だと思ったが、こりゃやれそうだ」
 ルチャルトラがそれを見て感心する。
 コトハは自分の企みが上手くいったことに安心しつつ、再び砂地に穴を掘っていく。
 退屈な作業を何も考えずに行うというのは難しいもので、コトハの意識はあの超獣から逃げてからの事に遷移していく。

 

◆ ◆ ◆

 

「もうすぐ目的の町だな」
 ルチャルトラが地図を見ながら満足そうに頷く。
「あれからもう二年だよ、本当にその町に来るの? もう超獣は気が変わってるんじゃ……」
 ジオが不安そうに言う。
 そう、超獣から逃げて以降、かれこれ二年の時が過ぎていた。その間、コトハ達は途中の町で様々な頼み事に応え、ある時には超獣を倒し、自身の名声を高めながら、進んでいた。
 今ではよほど外部との交流のない町でない限り、どの町に行っても「超獣を倒す英雄コトハ御一行」ともてはやされるほどだ。
 とはいえ、かなり時間をかけたのは確かだ。ジオの不安にコトハも言葉には出さないなりに同調していた。
「何度も言っておるじゃろう。超獣の行動理念はただ一つ。サーキュレタリィ・リソースが溜まっておる場所を攻撃する。そして大物ほど、大きなサーキュレタリィ・リソースの塊を狙う。あの近辺で最も大きい町はあの町じゃ。それは間違いない」
「頭のいい人の言う机上の空論じゃなー」
 ズンの説明にも、ジオは相変わらず言葉を選ばず、失礼だ。
 いつかズンが怒るんじゃないかとコトハとしては気が気でない。ジオが失礼な相手はズンに限らないので、町で人を怒らせるんじゃないかというのも不安だ。
 とはいえ、ジオの勇敢さは様々な場面で活躍する。
 怒られる恐怖と戦いに負ける恐怖を天秤にかけると、僅かに負ける恐怖が勝るため、コトハは結局ジオの同行を許し続けている。まぁもっとも、同行を断った時のジオの反応を考えると、やっぱり恐ろしくて同行を断る事などコトハには出来そうにないのだが。
「コトハはどう思う?」
「え?」
 自分に話を振らないで欲しい、と思いながらコトハは、二人の機嫌を損なわないように考えてから発言する。
「その町が既に他の超獣に滅ぼされてないかが心配かな」
「おぉ、それはありえるのぉ」
「ありえるの!?」
 そんな慎重に発した言葉は、予想外に話を紛糾させてしまった。
「超獣同士は何らかの方法で繋がっておって、同じ場所を狙わない、みたいな説はあると聞いたことはあるが、確かめる方法もないしのう」
「じゃあ、これで町が滅んでたら、ここまでの旅も無駄になるのか……」
 複雑そうにジオが呻く。
「まぁ少し前にターミナル町で聞いた感じではまだ無事だったそうだし、大丈夫だろ」
 と楽観的にルチャルトラが笑う。
 町を旅する商人であるルチャルトラはコトハの同行者として名が売れたことで、色々な恩恵を受けており、ある意味一番美味い思いをしていて、このところずっと上機嫌だ。
 コトハにとっては命の恩人でもあるので、ルチャルトラが嬉しそうな様子なのはコトハにとっても嬉しいことだ。
 もちろん、そうでなくても人が上機嫌なのは良いことだ。コトハの経験から言って、上機嫌な人間が突然理不尽な暴力に出ることは流石に少ない。
 そんなことを話しながら高めの砂丘を登ると、目的地が見えてくる。
 やや高い位置にいるため、町を軽く俯瞰することが出来る。
「うわぁ、本当に大きいじゃん」
「うん、本当に大きいね」
 ジオの大きな声に、コトハも頷く。
 コトハもそれなりの数の町を見てきたので、その町の規模がいかにこの世界において特別大きいかが分かる。
「これ、街くらいあるんじゃない? 超獣倒せちゃうんじゃないの?」
 と、ジオが楽観的な発言をする。
「いやいや、街が超獣を倒せるのはそのために物資を集積し、城塞化し装備を整えておるから。ただ規模がでかいだけでは街足りえんよ」
「ふーん、そういうものなのかぁ」
 ズンの発言にジオが頷く。コトハが思うに、ジオはあまり理解はしていない。

 

 町に入ろうとすると町の外縁で待機していた木製の棒を持ったラケルタ族の男の一人が駆け寄ってくる。
「ようこそいらっしゃいました。滞在記録をつけますので、よろしければ代表様のお名前か集団名を教えて頂けますか?」
「はぁ、なんじゃそりゃあ」
 ルチャルトラが聞き慣れない仕組みに思わず聞き返す。
「我らが王は常に自分の町にどれだけの人がいるのかを把握したいと仰っています」
「王だぁ? 廃都の連中みたいなこというじゃねぇか」
 また、ハイトだ。なんなんだろう、ハイトって。と疑問に思うコトハを置いて、話は進む。
「はい。この町は唯一、神託を聞くことの出来る神官王により統治されております。王の政治に異を示すようであれば、この町に入ることを許可することは出来ません」
「マジかよ……」
「集団の規模が大きくなるとそれに伴って代表の地位も上がるってことかのう。それにしても神託を独占とは穏やかではないのう」
 男の言葉にルチャルトラとズンが唸る。
「そんなことより、その武器すごいね。それ資源武器な上に近接武器なの?」
「えぇ、まぁ。入町を管理するなら棒状の武器の方が動きを阻んだりなど便利ということで、町の警備には配備されてるんですよ」
「へぇ……」
 そんな中、マイペースに男に質問を投げかけるのはジオだ。
「はぁ……。まぁいいや。俺らの代表と言ったら、コトハだろ。名乗ってやれ」
「え、あ……コトハ、です」
 大きくため息を付いたルチャルトラが頭をかきながらコトハに話を振る。コトハは一瞬驚いてから、名乗る。
「…………。おぉ、あなた方が英雄コトハ様とそのお仲間達だったのですね、これは失礼しました。そういうことでしたら、王宮へどうぞ。私がひとっ走り使いに言ってまいりますので」
 なんだか妙な間があった気がするが、相手はこちらのことを知っていたようだった。
 そして、男は走り去っていった。ただ使いに行くだけにしてはやけに焦って走っていったように見えたが。
「とりあえず、その王宮とやらに行くか」
「そうだのう、あの町の中心に見えていた大きい建物がそうじゃろうし」
 ルチャルトラが歩きだし、ズンがそれに続く。コトハとジオも歩き出す。
(それにしても私達を「仲間」と勘違いしてたな。私達はただ目的が同じだったり互いに得があるから同行してるだけの同行者なのに)

 

「これが、王宮」
 言葉の割に大したこと無いな、というのがコトハの感想だった。
「ほぉ、大したもんじゃねぇか」
 一方ルチャルトラの目にはそれなりに立派な建物と写ったらしい。
 簡単にその建物を形容するなら、それはログハウスだった。角材ではなく文字通りの丸太ログを構造材として建てられたものだ。
 もっと立派な建物を現代社会で知っているコトハにとっては大した建物とは映らなかったが、遺跡で発見されずっと重用され続けているテントのような建物か、魔術で砂を固めた建物が主流のこの世界において、木材という重要資源をふんだんに使ったログハウスは、あるいは黄金で化粧された建物を見るに等しい「立派な建物」なのである。
「英雄コトハ様とそのお仲間達ですね、申し訳ありませんが、もうしばらくお待ちくださいますか?」
 木製の槍を構えた男がログハウスに近づくコトハ一行に対して、槍を踏切の遮断器のように下ろし、扉への道を妨げながら声をかける。
「なんだ? 呼びつけておいて待たせるつもりか?」
「まぁまぁ、指導者は何かと多忙なのじゃろう。この規模じゃしな」
 ルチャルトラが男に文句を言うのをズンが止める。
「そんなことより、随分警戒心が高くない? ほとんど殺気じみたものを感じるんだけどな」
 そんな中、ジオが男に声をかける。狩人として活動していたジオは一際人間を含めた様々な生物の攻撃的な兆候に敏感だ。
「そ、それは失礼致しました。何分、王宮の警備ですので」
「ふーん、そういうもんか〜」
 とはいえ、ジオはそこまで気にしていなかったので、男の説明に素直に頷く。
(ふぅむ、ジオが感知できるレベルの殺気とな? いくら王宮とは言え、招かれた客であるワシらにそんなものを向けるか?)
 だが、そんなジオの発言に疑問を覚えるのはズンだ。
 先に説明した通り、ジオの殺気などに対する感知は狩人としての活動で発達したもので、彼が感知できる殺気は文字通り「いつ攻撃が来てもおかしくない」ほどの攻撃の兆候だ。
 つまり、今コトハ一行が前にしている男は必要に迫れればすぐにでもコトハ達を即座に攻撃……あるいは殺害するだけのつもりでいる、ということだ。
 これが招かれざる客が王宮に接近しているなら分かるが、コトハ一行は王宮を尋ねるように言われた身だ。そんな人間にそれほどの殺気を向けるだろうか?
「大変お待たせしました、我らが神官王がお待ちです」
 そこに一人の男が降りてきて、声をかけた事で、ズンの思考が中断される。
「お待ちですって……。そっちがこっちを待たせてんだろうが」
 降りてきた男の言葉にルチャルトラが呆れたように漏らす。
「ジオ、もしこの町でまた殺気を感じたら後でこっそり教えてくれるかの?」
「? うん、いいよ」
 ズンは念の為、ジオにそう声をかけてからコトハを戦闘に王宮に入った。
「よくぞまいった、コトハ一行よ。して何用かな?」
 普通の床から一段高くなった床に置かれている安楽椅子に座っている男がコトハ達一向に向けてそんな言葉を放つ。
「は、はぁ、どうも……。王……じゃなくて、えっと、神官王にお会いできて光栄です」
 なんで安楽椅子? と思いながら、コトハが王の機嫌を損なわないようにと慎重に言葉を選びながら返答する。
「うむ、堅苦しい挨拶は抜きで良いぞ。この町を来訪した要件を言うが良い」
 王は鷹揚に頷き、続きを促す
「はい。二年前、私は巨大な超獣と遭遇しました。その超獣はとても強力で、その時は準備無しで倒せませんでした。そしてその超獣はこの町を襲う可能性が高いのです」
「ほう。超獣狩りの英雄であるそなたが倒せなんだ、と。そのそなたがここに来た。それはよもや、そなたがここに呼んだ、ということではあるまいな?」
 やはり。その質問はコトハにとっては予想外ではなかった。コトハにしてみれば、偉そうな男というのはそういう理不尽な言いがかりをしてくるものなのだ。
「違います。サーキュレタリィ・リソースが……えっと、つまり、私の同行者のズンが説明してくれます」
「ほう。ではコトハの仲間のズンよ。説明してもらおうか」
(仲間じゃなくて、ただ同行してるだけの関係だけどね)
 コトハのパスに、ズンは嫌な顔一つせず、説明する。
 超獣とサーキュレタリィ・リソースの関係、そしてこの町に溢れるサーキュレタリィ・リソースの量がすごく多いこと、故に件の巨大な超獣はそもそもこの町を狙っていた可能性が高いこと。
「なるほど……。コトハよ、そなた、「準備なしで倒せなかった」と言ったな? ならば、この町で迎撃の体制を取れば倒せる、とそう考えておるのじゃな?」
「はい」
 ここは自信を持って言い切らねばならない場面だ。そう考えてコトハは「本当に倒せるのか?」という不安を殺して、自信を持って断言した。
「……よかろう」
 王は再び鷹揚に頷き、右手を掲げる。
「?」
「そなたらの滞在を認める。確実に襲い来る超獣を排除せよ」
 不思議な動作にコトハは内心首を傾げつつ、ともかく超獣退治が許されたことに感謝する。
 それに、この町は本当に大きい。この町を救ったと噂になれば、より有名になるかもしれない。
 コトハは別に名声欲が特別高いということはなかったが、とはいえ、有名であればあるほど行動はしやすいし、有名であることに越したことはなかった。今の所、コトハは初めて有名になったのもあり、有名であることに負の側面が生じる可能性があることなど、全く知らなかった。
 かくして、コトハ一行は王宮を出て、今にいたろうとしている。が、その前にもう一幕。
「ズン、ズン、やばかったよさっき。王宮の中、殺気でいっぱいだった。今にも殺されそうだったよ。王宮ってあんなに警戒されるものなんだね」
「そうだったか、ありがとうジオ」
(ふむ、確かに少しでも妙な動きをした瞬間に動かねば王を暗殺されてしまう可能性がある以上、警戒が強いのは不自然ではないが。……やはりジオが感知するほどの強い殺気というのは気にかかる)
 ジオの言葉にズンが再び思案する。
「もう一つ不思議だったのは、王が右手を上げた直後にすっと殺気が収まったんだよね。信用されたのかな」
「だといいがのう……」
(もし本当に、今にも殺されそうだったとしたら?)
 右手を上げたら、殺気がおさまった。それはつまり、事前に殺さない合図が決まっていたと言うことではないか? ズンは考えるが、その理由は見えてこない。
(ともかく、警戒だけはしておいたほうがよさそうじゃな)
 もし、殺そうとしていて殺さなかったとしたら、その理由は超獣退治しかありえない。つまり、次に何かが起きるとしたら、超獣を倒した後のことになるはずだ。そうズンは考え、こっそりと準備しておくことを決めた。

 

◆ ◆ ◆

 

「【gix警告den alako tul le akako vil zomp onkel.資源変換出来ない物を短時間に連続して回収してはいけません
「またかぁ」
 よく分からないが、txif起動を使って砂を消していると、たまにこの警告が発生してしばらく起動しなくなってしまうのだ。
「よくわからんが、消し放題とは行かないのは面倒だなぁ」
 ルチャルトラが、砂地に掘った落とし穴が崩れないように木々を設置していく作業しながら声をかける。
 この木々は王から許可をもらって使わせてもらえている木々だ。
 王は随分渋い顔をしていたが、超獣に滅ぼされては元も子もないと判断し、結局許可してくれた。
「しかし、確かにこれならでっかい落とし穴は作れるだろうが、上手くこの落とし穴まで誘導できるのか?」
「うん、それは一つだけ案がある」
 それは、例の巨大超獣があの遺跡を狙った理由。
 これはコトハの想像だが、周りの反応からして間違いない。fatil zomp引き出せを使うと、サーキュレタリィ・リソースとやらが発生してその空間を満たす。そして、超獣はそれに引き寄せられる。
 だから、ベストなタイミングでfatil zomp引き出せを使えば、超獣の行動を制御できるはずだ。
「そういえば、前から気になってたんだけど」
「なんだ?」
「前から時々話に上がってたハイトってなんなの?」
「おぉ、そういえばコトハは知らないか」
 じゃあ、俺も休憩がてら、とルチャルトラが落とし穴の縁に腰掛ける。
「廃都ってのは、昔この国? とやらの首都? だった場所らしい。どっちもあんまり意味が分かってないんだが、コトハは分かるか?」
「あ、うん、大丈夫」
「ならよかった。そこにはでっかい遺跡があってよ、今でもそこに人が住んでて、その遺跡を動かして生活しているらしい。で、そこにはその遺跡を管理して動かせる唯一の人間がいて、そいつが王を名乗ってるんだと」
「へぇ……」
 コトハは驚く。遺跡は明らかにこの世界にかつて存在していた超高度な文明だ。それがまだ動く形で存在しているとは。
 コトハは自分を遺跡の文明と関係ある存在だと思っている。廃都……。今やっている巨大超獣の討伐が終わったら、行ってみたいところだ。とコトハは思った。

 

 そして、それから一ヶ月が経過し、そこには大きな大きな落とし穴が完成した。
 間もなく超獣がやってくる。
 作戦は全員に伝達済み。
 あとは、ただ、倒すだけだ。

 

To Be Continued…

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「栄光は虚構と成り果て 第8章」の大したことのないあとがきを
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