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退魔師アンジェ 第1章

『〝新入り討魔師とうまし如月きさらぎアンジェ』

 古人に曰く、刀は武士の魂である。武士と刀は一体であり、武士にとって刀は体の一部も同義である。……らしい。では、私と刀は一体なのだろうか? もし一体であるのなら、今朝の鍛錬でももっとうまく……。
「ア~ンジェ~」
 そんなことを自分の席に座りながらボーっと考えていると、何かが近づいてくる気配がして、耳元で私の名前がささやかれた。
「なんですか、ヒナタ」
 私に話しかけてきたのはヒナタ。後ろの席に座っている私の数少ない親友の一人だ。
「いや~、真面目なアンジェちゃんが授業中にボーっと空ばっかり見てるからどうしたのかなぁ~って」
「む。ヒナタこそ、授業中にいろんな人と話ばっかりしているではないですか」
「別にいいんだよ~。私は成績いいし。そうでしょ? 万年二位のアンジェちゃん」
「く……」
 悔しいが、ヒナタの言っていることは事実だ。ヒナタはいつも真面目に授業を受けているようには見えないのに、常に学年一位をキープしている。そして、私はその次、二位。そして、三位が学級委員長のアキラだ。チラッとそちらを見るとそのアキラは今、真面目に黒板の数式をノートに写している。
「つ、次こそは私が勝ちます!」
「さっきみたいにボーっとしているんじゃそれも怪しいかなぁ?」
「く……」
「はい、アンジェさん。ではこの問題を答えて」
 ヒナタとつい話に没頭していると、先生に当てられてしまう。困った、まったく話を聞いていなかった。
「Yes I do.」
 後ろからボソっとヒナタが教えてくれる。ありがとう、ヒナタ。
「イエス、アイドゥ」
 ……何故か、教室の空気が凍りついた。後ろでヒナタが笑いをこらえているような声がもれ聞こえてくる。はっとして手元の教科書を見るとそこにはこう書かれていた。〝数学〟、と。
「謀りましたね、ヒナタ!」
 思わず後ろを見ると、ヒナタがついに我慢できなくなったのか声をあげて笑いだした。視線の端で先生が怒鳴ろうとしているのが目に入った。

 

「先生怖かったね~」
 とまだ若干笑っているヒナタが言う。
「誰のせいですが誰の」
「誰だろう? アキラちゃん分かる?」
「えっと、いつも通りならヒナタちゃんじゃ……」
 とアキラは私に味方する発言をしてくれるが、
「でも、考え事して話を聞いてなかったアンジェちゃんも悪いんだから反省してね」
「わかっています、アキラ。ヒナタの言うことは疑わなければならなかったのに……」
 アキラも私の数少ない親友の一人だ。色んなことに気が利くとても優しい女の子だ。
「にしても、Yes I do. は無いでしょ。今日英語の授業ないし」
 とりあえず、まだ私のことで笑っているヒナタを軽く殴っておく。
「ゴメンゴメン、笑い過ぎた。で、今から何かする?」
 時間は過ぎて今は放課後である。
「私は特に用事無いよ。アンジェとアキラは?」
「私も無いよ、もうすぐ学園祭だから忙しくなるかも」
 と二人は予定が無いようなのだが、残念ながら私は少し用事がある。
「すみません、今日は少し用事があって」
「そっかー、だったら代わりにアンジェの好物のあのパフェ二人で食べてくる~」
 くっ、悔しいが今日の用事は私の今後に関わる大事なものだ。この報復はまたの機会に考える事にしよう。ヒナタの好物はなんだったか。
「ええ、楽しんでくださいね」
「アンジェちゃん……その笑顔怖い」
 とアキラが遠慮がちに言う。極めて普通に笑顔を作ったつもりだったが、やはり気持ちというのは顔に出てしまうモノのようだ。
「楽しんでくるよ~」
 ヒナタがしつこい。そして、私の家に向かう分岐路に差し掛かる。
「では、二人とも、また明日」
「また明日~」
 と二人が手を振るのを見ながら私は帰路についた。

 

 「月夜つきや」と表札のかかった屋敷に入る。月夜家。父という唯一の身寄りをなくした私を引き取ってくれた、お父様の友人の家。
 玄関を開けて屋敷に入る。目の前に左右への部屋に通じる廊下と階段が目に入る。向かって右が日本家屋風で構成された月夜家の人たちのスペース。そして向かって左が洋館風で構成されたスペースが如月家、というか私に割り当てられたスペースだ。
 だから私は廊下を左に進み、洋室のリビングを通り抜けて、寝室兼私室に入る。
 制服を脱いで鏡のすぐそばのハンガーにかけて、動きやすい私服に着替える。今日の用事は私の今後に関わる大事な用事だ。失敗するわけにはいかない。私は、ベッドの枕元に飾ってある太刀を撫でる。衣更着きさらぎをイメージした着物を重ね着した拵えの柄のその太刀は、如月家に代々伝わる太刀「如月一ツ太刀きさらぎひとつのたち」、私が結果的に唯一お父様から受け継いだものになる。
 なぜ刀なのか、私は知らない。けれど、この刀で何をするべきなのかは、知っている。
 この刀はこの世に人知れず存在し人に害成す魑魅魍魎ちみもうりょうを狩るための刀。しかし、お父様は私にその技を教える前に魑魅魍魎との戦いで死んだ。
 私の義務は、お父様の意志を継いでこの刀を手に取り、魑魅魍魎を討ち、そして、いつかはお父様を殺した魑魅魍魎を殺す事。魑魅魍魎はどこかともなく現れるもので、探して見つかるものではない。だから、ひたすら、魑魅魍魎を討つ者、討魔師として、戦い続けるしかない。
 今日の重要な用事というのもそれだ。なにせ今日は、正式に討魔組の討魔師と認められるかどうかの最後の試練の日なのだから。

 

 夜が更けていく。月の明かりも霧に隠されていてあたりはとても暗い。ビル街の明かりもすっかり消え、かろうじて上を見上げれば航空障害灯の赤い光が見えるだけだ。もっともそれも霧のせいではるかに霞んではいるのだが。
 私達の住む長門ながと御手洗みたらい町は東京二十四区内にしてはビルなどは少なく住宅街が多い街だが。町の南東にはこのようにオフィスビルが立ち並ぶ区画もある。
「来たか、アンジェ」
 私が近づいていくと、58歳程度だったはずの壮年の男性がこちらに気付いて振り返り言った。
「はい、〝守宮やもり〟殿」
「いよいよ今日が初陣だな」
 返事を返すと横からもう一人の青年が話しかけてくる。
「〝当主〟様?」
「久しぶりだな。自分の妹分が初陣だというから、様子を見に少しの間だけ戻ってきたんだ」
 老人の方は〝守宮"殿。私がご厄介になっている月夜つきや家の先代当主だ。そして、私を引き取ることを決めた私のお父様の友人でもある。そしてこちらの青年は月夜家の"当主〟様、年齢は私とたった一つ違いだが、実力は段違いだ。
「そんなこと言って、私が負けたときに後腐れなく排除するのが目的でしょう?」
「どうした、見ない間に随分穿った見方をするようになったな。今日のこの程度の瘴気なら、出でる魑魅魍魎も高が知れている。それに、お前が勝てなかったとしても、この程度ならご祖父上様だけでも十分だろう」
 高が知れている、か。なら、今回戦う相手は父の仇ではないのだろう。どちらにせよ倒すだけだけれど。それにしても、つい、ヒナタとのやり取りのせいで変な勘ぐりをしてしまった。そのうちヒナタにはしっかりとお礼をしなくてはならないだろう。と、そのやり取りを聞いて苦笑しながら〝守宮〟殿が声を掛けてくる。
「そろそろ時間だぞ、アンジェ」
「はい」
「気をつけろよ、アンジェ。初陣は誰もが実力を発揮できぬものだ。先ほどお前が負の方向で認識していた手前こんなことを言うのもなんだが、俺とご祖父上様もいる。いざって時は助けてやれる。絶対に死ぬことは無い。恐れずに戦え」
 〝守宮"殿の声に反応して前に進む私に後ろから"当主〟様が声を掛けてくる。『気をつけろ』と言いつつ、『恐れずに』と言っている。ちょっと矛盾しているのではないだろうか。
「来たな」
 後ろから低く抑えた〝当主〟様の声が聞こえると同時、周囲を漂っていた霧……瘴気が渦を巻くように動き出し、人の形を取りはじめた。その数……三体。
黄泉還よみがえり・壱型か」
 〝守宮〟殿がその姿を見て呟いた。黄泉還り・壱型、それが名前か。なるほど、黄泉還り。それに相応しい風貌といえるだろう。それはついこの前ヒナタ達と一緒に見に行った映画に出てきたゾンビとそっくりだ。片腕しかないのが特徴か。しかも、よく見るとみんな右腕だけだ。なんというか、不気味だ。
「――――」
 その黄泉還り・壱型が声にならない叫びを上げ、こちらに歩いてくる。私は無言で腰につるしていた鞘から刀を抜き放った。その刀身は霧が薄くなったことでかすかに見えるようになった月明かりを反射し、白く輝いていた。
「はっ!」
 私は一気に距離をつめ、上段に構えた刀をそのまま振り下ろした。
「――!」
 瞬時に目の前の壱型を無力化すると、もう一体の壱型はこちらをしっかりと見定め、そして駆け出してきた。
「な!」
 ゾンビが走るなんて!? でも、徒手空拳の相手に負けるほど、私も弱くは無い。
「せいっ!」
 しかし、相手は徒手空拳ではなかった。相手が右手に持っていたその得物は私と同じ刃物のようだ。刀と相手の得物が鍔迫り合いになる。もっとも、そんなに力は強い方じゃないようだ。すぐにはじき返せる。
「どうした? 黄泉還り・壱型近接系の動きは速いが、まぁアンジェの敵ではあるまい」
「そうだな、もっとも……」
 後ろで〝当主〟様が刀を抜いたような鈴の音がした。苦戦していると思われているのか。私は慌てて相手の得物をはじき返し、すぐに斬る姿勢に入る。
「旋風」
 風のような速度で〝当主"様が私の前に現われた。……今のは、月夜流の"呪詛"。そんなことを考えていると"当主〟様の刀に何かが命中した音ではっと気が付く。敵は三体いた。もう一体が此方を狙っていたのだ。
「遠隔系は俺がやる。お前は近接系を」
「はい」
 返事をするが速いか、〝当主〟様は銃のような飛び道具を持った敵相手に走っていく、放たれた弾丸をすべてその刀身で受け止めているようだ。悔しいが、自分ではまだあんな芸当は出来ない。
「アンジェ、自分の敵に集中しろ」
 〝守宮〟殿からの発破が飛ぶ。
「はい」
 私は刀を中段に構えなおし、黄泉還り・壱型近接系と呼ばれているらしい敵を見据える。すると相手は此方から来ないと見るやまた向こうから肉薄してきた。
「ふ。せいっ!」
 確かに動きは速いが、いかんせんパターンが単純だ。振り下ろされる得物を自分でも驚くほどにあっさりと避け、横一文字に刀を振るった。
「よし!」
 〝守宮"殿の声が聞こえた。向こうで、何かが倒れる音が聞こえたから、"当主〟様も遠隔系とやらを倒したのだろう。
「ふぅ」
 私は安心してひざをついた。
「お疲れ様、アンジェ。次はもっと大局を見ることだな」
 横から〝当主〟様が私に笑いかけてきた。
「はい。気をつけます」
「よろしい。これで、こっちは安泰ってわけだ。じゃあ、俺はまた向こうに行かないといけないから」
 私の答えを聞いて〝当主〟様は安心したように頷いて家とは反対方向に歩いていく。
「お帰りには、ならないのですか?」
「あぁ、そうしたいのは山々だが、向こうも色々あってな」
 それではまた働き詰めだというのか、それはあまりにも。
「そんな……」
「この街は任せたぞ、アンジェ」
「……はい」
 思わず何かを言いかけたとき、〝当主"様が言った言葉に遮られ、私はそれ以上言葉を紡ぐことはできなかった。その言葉は私を"討魔師"だと認める言葉だった。"当主"様は私が"討魔師"としてこの街を守れると信じてくれている。それなら私ができる答えは一つしかなかった。私は、"当主〟様の言葉に力強く頷いたのだった。

 

 次の日の学校。
 私は不覚にも寝てしまっていた。
「ふぇ、もう授業は終わったのですか……」
「どうしたの、アンジェちゃん、昨日もこんな感じだったし。はい、ノート」
 と先ほどの授業で使ったノートを私に渡してくれた、ありがたく写させてもらう。
「今日はヒナタちゃんがお休みだから静かだね」
「まったくです、彼女は少し騒がしすぎると思います」
 と皮肉たっぷりで言うと、ヒナタの〝そんなことないよー〟という声が聞こえた気がした。彼女の精神性はもはや私の心に住み着いているというのか。何と恐ろしい。
「でも、ヒナタちゃんが風邪なんて珍しいね」
「そうですね、まあ、またズル休みでしょう」
 ヒナタが時々休む。しかし、そのほとんどは仮病だ。今日はやりたいゲームがある~などその理由は様々だが、大抵くだらない理由なのは間違いない。
「あっ、暇そうなアンジェ君、アキラ君、職員室までプリントを取りに来てくれないかい」
「暇そうなは余計ですが、すぐに取りに行きます」
「はい、分かりました、すぐに行きます」
 とそんな話をしていると、先生に呼ばれたので、職員室に向かう。
 アキラと一緒にいるとよく先生から頼みごとをされる。彼女は学級委員長として模範的に先生の手伝いをしているから頼りにされているのだろう。そして、必然として一人では足りないという時にはその彼女の友人が頼られるというわけだ。ちなみにヒナタはどんなセンサーを持っているのか、先生に呼ばれる時には絶対に私たちの傍にいない。大したサボり根性だ。それで成績トップというのだから世の中……。
 そんな愚痴を頭の中で考えながらプリントの束を運んでいると、
「アキラさん、少し失礼しても良いですか?」
 とすごく丁寧な口調で生徒会長、中島アオイ先輩が話しかけてきた。
「プリントを置いてきてからで良いですか?」
「構わないわよ、ごめんなさい、急に来て」
 ということで、アキラと私は少し歩を早めて教室へ向かい、教室へ着くなり、「ごめんねアンジェちゃん」と私に謝ってからアオイ先輩の元に走っていった。
 学園祭の前だから仕事も多いのだろう。アキラは真面目で優秀だから学校一の秀才と噂されるアオイ先輩にも頼りにされているのだろう。そんな友人を持つことは誇らしいことだ。
 アキラが帰ってくるとほぼ同時にチャイムが鳴り、次の授業が始まった。この授業では、流石に寝ない、と決めたそばから眠い。……まだまだ修行が足りないな。
 私の意識はそこで途絶えた。

 

「起きなよ、アンジェ」
 と、言う声で目を覚ました。
「ヒ、ヒナタ!?」
「へへへ……おはよう、アンジェ~~」
 ヒナタが私に後ろから抱きついていた。何か、匂いをかいでいるような音がする。
「な、は、離れなさい!」
 慌てて立ち上がる。……はて。
「ヒナタ、ズル休みだったはずでは?」
「ズル休みなんて酷いなー。ちょっと用事があっただけだよ~」
「そ、そうなんですか……」
 高校生が〝ちょっと用事〟で休むのはどちらにせよただのズル休みだと思うが……。
「四時間目の授業中にいきなり〝遅れてすみません~〟って言いながら入ってきたんじゃない。みんなヒナタちゃんに注目してたよ?」
「そ、そうでしたか……」
「やっぱりずーっと寝てたんだ、アンジェったら~」
 う……。
「う、うるさいです。私だってたまには眠くなる時があるんです。と、いうか、四時間目に来たって、もうあと一時間しか残ってないじゃないですか!」
「へ?」
「はい?」
 苦し紛れに言った発言に二人がはて? と首をかしげた。……何かおかしいことを言っただろうか? 苦し紛れだから確かに変なことを言ったのかもしれない。直後、二人が笑い始めた。厳密に言えばアキラがくすくす笑いでヒナタが教室中に響く大笑いだ。
「な、何がおかしいんですか!?」
「アンジェちゃん、今は放課後……」
「へ?」
「何、アンジェ、ピクリとも動かないと思ったら、ずーっと寝てたわけ?」
 ヒナタが笑いながら言う。
「アンジェちゃん、大丈夫?」
「あー、駄目だねこれは。アンジェ、今日は早く家に帰って寝たら? ゆっくり休んだ方がいいと思うよ?」
 ヒナタとアキラが本気で心配してくる。ヒナタの口調はいつも通りだが、声は少し真剣味を帯びている。……いつもこうなら良いのに。

 

 あたりも暗くなり、学校から家まで帰ってきたのだが、寝すぎたせいか体は軽い、精神的には重いのだが。
「しょうがない、少し運動をしよう」
 やはり、気を晴らすのに一番良いのは素振りだ。そう思って道場の方に足を向ける。
 道場に明かりは無い。誰も使っていない、はずだったのだが。
 道場内に入ってみると、刀の鍔迫り合いの音や鉄がぶつかり合う音と火花が見える。たまに聞こえる声は〝守宮〟殿と誰か女性の声だ。しかも火花が散っているということは模擬刀ではなく本物を使っている? まさか、夜襲?
 どうしようかと悩んでいると。
「そろそろ終わりにしよう。明日も学校だろう」
「そうですね。突然のお願いにも関わらず応えていただきありがとうございました。」
 と明かりが灯される。明るくなっても女性の顔は〝守宮〟殿に隠れて見えない。
「いや、君の頼みを断ると色々と面倒だからな。っと、アンジェ、道場を使うのか?」
「はい、素振りでもしようかと思いまして」
「どうした? 学校で……、ああ、寝てすごしたから気分が優れないのか」
 はい、その通りですとは言えないので笑ってごまかした。
「あら、アンジェさん。学校で寝ていたんですか?」
 と〝守宮〟殿の後ろにいた女性、生徒会長、アオイ先輩が話しかけてくる。
「隠しても仕方ないですし、学園祭の前に片付けることはたくさんありますし、身分を明かしましょう」
 もったいぶるように一呼吸置いてからこう言う。
「私は、宮内庁より霊害れいがい対策のために派遣されて来たのです。あの学校の防衛のために」
 何を言っているのかイマイチ分からない。
「あの学校はあらゆるものに狙われています。あなたも討魔師であるならば、私に協力しなさい。もちろん、報酬も出ます」
 つまりどういう、と尋ねるまえに〝守宮〟殿が言う。
「それはいい、アオイ君ならアンジェを任せても安心だ。こちらからもお願いしたいくらいだ、アオイ君」
 勝手に〝守宮〟殿が同意する。いや、私の意思は?
「少し待ってください、私にも考えたいことが……」
「あの学校に在籍する討魔師であるあなたが拒否するのですか? あなたの父は、人々を護るために戦い散ったというのに、その娘は随分と腰抜けなのですね。これではあなたの父も浮かばれないでしょう」
「なっ」
 今、お父様は関係ないでしょう。もし今帯刀していたら、刀に手をかけていただろう。少なくとも手は自然と腰に向かっていた。もちろん、そこには何もないが。
「……まぁ、確かに急な話ではあったかもしれませんね。あなたは昨日、討魔師になったばかり。いいでしょう、明日の放課後、学校で話をしましょう。人払いはしておきます」

 

 To be continued...

 


 

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