退魔師アンジェ 第8章
『〝食らうもの〟イブリース』
父を
そして最後の試練の日。アンジェは瘴気から実体化した怪異「
翌日、月夜家を訪ねてきた生徒会長、
アオイから明かされた事実、それはアンジェ達の学校が「
早速学校を襲撃してきた下級悪魔「
アオイから恐怖心の克服を課題として言い渡されるアンジェ。玉虫色の粘液生物と戦ったアンジェはヒナタの何気ない助言を受けて、恐怖心の一部を克服、再びアンジェを助けた白い光を使って、見事学校を覆う謎の儀式を止めることに成功したのだった。
しかし儀式を試みた魔術師は諦めていなかった。それから一週間後、再び学校が今度は完成した儀式場に覆われていた。アオイは母・ミコトの助けを借り、儀式場の中心に到達するが、そこに待ち受けていた
そこに現れたのは「英国の魔女」と呼ばれる仮面の女性。彼女は事前にルーンと呼ばれる文字を床一面に刻むことで儀式の完遂を妨げたのだ。そして、英国の魔女は「この龍脈の地は私が治める」と宣言した。逃げる安曇。追う英国の魔女。蚊帳の外の二人。アオイは安曇は勿論、英国の魔女にも対抗することをしっかりと心に誓った。
ある晩、アキラから行きつけの古本屋を紹介してもらった帰り、アンジェとアキラは瘴気に襲われる。やむなくアキラの前で刀を抜くアンジェ。しかし、一瞬の不意を撃たれ銃撃されてしまう。謎の白い光と英国の魔女に助けられたアンジェはアキラの部屋に運び込まれ、週末に休みの期間をもらう。
休みの時間をヒナタと街に出て遊ぶのに費やすアンジェ。そこで剛腕蜘蛛悪魔を使役する上級悪魔らしきフードの男と謎の魔術師と遭遇する。追撃することも出来たが、アンジェは怪我人の保護を優先した。
アンジェは父が亡くなった日の夢を見る。時折見るその夢、しかしその日見えた光景は違った。見覚えのない黒い悪魔の姿があったのだ。そしてその日の昼、その悪魔とその使役主である上級悪魔、
そして同時にアンジェはアオイから知らされる。父が死んだその日は「大怪異」と呼ばれる霊害の大量発生の日だったのだ、と言うことを。
また、夢に見る。
「アンジェ、今日はお前の誕生日だろう」
いつもどこかにいって家に帰ってこないお父様がその日には家にいた。私の六つの誕生日。しかもお父様の方からその話を振ってきた。私はとても嬉しかったのを覚えている。
「お前に誕生日プレゼントだ。如月の家に代々伝わる……」
そうして差し出されたのは、刀だった。今お父様の使っている、如月一ツ太刀だ。しかし、まだ六歳になったばかりの私にとって、それは嬉しいプレゼントではなかった。むしろ、こんなものいらない、とまで私は言い放ったのだ。お父様は家宝をこんなものといったことを咎め、そして、私は家を飛び出した。それが私とお父様の最後の会話になった。
しかし今となっては疑問が尽きない。なぜお父様はあのタイミングで私に家宝を預けようとしたのだろう。お父様はまだまだ現役。私も鍛錬の必要はあるとはいえ、それに家宝を渡す必要もないだろう。
あぁ、お父様、一体あなたはあの時、何を思って私に家宝を託そうとしたのですか。
尋ねるために、飛び出した道を引き返す。しかし、そのときには、次に私が見た如月邸の様子、即ち激しく炎上する如月邸の光景が広がるのみであった。
最近、あの頃の夢ばかり見る。あの悪路王という上級悪魔と邂逅してからだ。前回は逃したけれど、次こそは逃さない。
「アンジェ、今日は早いのですね」
アオイさんが道場に入って来る。
「えぇ。少しでも長く鍛錬したいので」
「あまり無理をしてはいけませんよ。あなたは私と違って、日常の世界に多くの友を持っているのです。彼らを心配させてはなりませんよ」
なるほど、確かにその通りだ。日常の世界で異常に疲れていたりしたら、疑われてしまう。
「分かりました、気をつけます」
「分かっていただけたなら何よりです。明日の学園祭のための準備があるので、今日は先に行きます。本当に、友達は大切にしてくださいね」
アオイさんが先に行くのならその分より力を入れて鍛錬しないと。
「…………聞いていませんね。はぁ、放課後にでも話せばいいでしょう」
「アンジェ、友達が迎えに来ているぞ」
「友達? 誰です?」
しばらく鍛錬していると、〝守宮〟殿が道場まで呼びに来たので首を傾げる。迎えに来る友達、とは。
「名前は知らないが、白い髪の……」
「ヒナタか」
よく家の近くで会うとは思っていたが、ついに家にまで来たか。いや、むしろ、家に向かってる途中に登校中の私と合流していたのか? ともかく、そういう事なら急がないと。全く時計を見ていなかった、迂闊だ。
そうして、道場から中庭に出た直後突如、上から何かが降って来る。
「剛腕蜘蛛悪魔!?!?」
飛び下がって避ける。いつもの剛腕蜘蛛と少し違う。胴体の裏にヒルのような口が付いてきた。更に三匹が屋根から降りて来る。なんで道場の屋根からこんな奴が。いや、そんなことより。
「刀がない……」
刀は学校に置きっ放しだ。まさか向こうもこの事情を知った上で!?!? 下級悪魔からは知性のかけらも感じられないが、この前の悪路王のように上級悪魔は人間とほとんど変わらない。なんとか回避するが、四匹の連携の前に追い詰められる。いよいよ私にその剛腕が迫る、という時、悪路王と英国の魔女が姿を現わし、その蜘蛛を屠る。そして、お互いに顔を見合わせる。
「何、あなた」
「君こそ、なんだい」
英国の魔女と悪路王が睨み合う。
「それより……」
「高みで見物してる君は退場してもらおうか」
英国の魔女と悪路王が同時になんらかのエネルギー弾を発射し、屋根が吹き飛ぶ。
「これは驚いた。姿は完全に消していたはずなんですがね……」
前にも見た中東風フードの男が地面に降り立ち、二人に向き直る。
「人間の姿を模したのが失敗。私のルーン索敵は光学情報の欺瞞程度では防げない」
「魔力を発したのが失敗だね。私のナイトゴーントは魔力がある限りそれを捉えられる」
二人が同時に自身の看破能力を誇る。二人とも違うものを誇るということはかなり見破る隙はある、という事か。
「いやいや、こんなところで姿を晒す気は無かったのだけどね。私はイブリース。やがてこの地を支配することになる上級悪魔だ」
「へぇ、私の前でよく言ったね」
「うん、私もそのセリフは看過できないよ」
二人の剣呑な雰囲気が強くなる。
「しかし、ここは都合が悪い、戦場を変えよう」
「同感だね」
英国の魔女が杖で空中にYにさらに縦に一本線が引かれたような文字が描く。合わせて悪路王もまた黒いラインと白いラインが絡み合う四角を出現させる。
白と黒の四角は拡大を始め、ラインは私の手前で止まる。悪路王、英国の魔女、イブリースの三人だけが四角の中にいる状態だ。そして瞬きした次の瞬間、三人はどこにもいなくなっていた。
「……え」
なんだこれ、置いてけぼりにもほどがある。刀がないと、私はこうも無力なのか。そしてなにより、またあいつに助けられるなんて…………。思わず近くの壁を蹴る。それで何か起きるわけではない。ただ少し足の先が痛むだけだ。私は部屋に戻って荷造りをして屋敷を出る。流石に待たせすぎたのか、ヒナタはいなくなっていた。
私は油断していた。よく分からないがあの二人があのイブリースとやらを引き受けた以上、ひとまずは安心だと思っていたのだ。
しかし、校門に着くなり認識阻害の札の貼られた私の刀が置かれているを見て、認識を改めた。三本足のカラスがその刀の上に留まり、こちらをじっとみている。カラスのことはよく分からないが、おそらく私が学校に入るなりこの刀が必要な事態が起きている。私が近づくとカラスは飛び去った。私は刀を手にとって、鞘を腰につける。効くか分からないが、念のため認識阻害の札を体に貼り付ける。
「まずは……屋上か、いや、生徒会準備室?」
この学校における霊害事件のほとんどはあの剛腕蜘蛛……つまりあのイブリースなる男の手勢による。そしてあいつらはいつも屋上から湧いてくる。だから緊急事態が起きてるとしたら屋上かと考えた。しかし、イブリースは今、あの二人と戦闘中のはず。となると、それ以外の可能性が高い。となるともうどこが戦場なのか分からない。周囲を警戒しつつ、まずはいつもの生徒会準備室に向かうべきだろう。
そう判断し、校舎に駆け込む。
一階、階段までの間に教室の中を覗く。普通の授業が行われている。
二階、生徒会準備室は三階だ。そのまま階段を登ってもいいが、生徒会準備室に近い階段は別にある。どうせなら二階を通って教室の様子を見る。やはり問題はない。
三階、やはり問題はない。生徒会準備室に到着。
「どういう事?」
入る。しかし、誰もいない。アオイさんのロッカーを開けると刀がない。つまり、アオイさんがどこかで戦っているのは間違いない。しかし、その場所が分からない。
「とりあえず……屋上」
と部屋を出た直後、そこには剛腕蜘蛛悪魔がいた。相手が腕を上げると同時、居合の要領で一気に踏み込んで切る。居合については最近本で読んで練習を始めたばかりだが、なんとか相手を切断することに成功する。隙だらけだったから、もし他に敵がいたらそこで負けていただろう。まだまだ鍛錬が必要だ。そもそも居合を使う機会が今後あるか分からないけれど。
それを契機に、複数の剛腕蜘蛛悪魔が飛び出してくる。やはり剛腕蜘蛛悪魔。屋上での防衛を突破して、校内に入り込まれている?
「だとしたら、発生源は屋上!」
剛腕蜘蛛悪魔はいつも屋上から現れる。立ち塞がる五匹の剛腕蜘蛛悪魔と向き合う。刀を下段に構える。アオイさんのように無形の位で戦える域には達していない。が、アオイさんが先生な都合上、私の得意なのは自ら攻めるより受ける事だった。
剛腕蜘蛛悪魔が飛びかかってくるのを全て一刀の元に切り伏せる。
慣れてくれば剛腕蜘蛛悪魔の行動は分かりやすい。近くであれば腕を振り上げて攻撃。遠くであれば飛びかかってくる。どちらであれ、軌道は直線。しっかりと見ていれば対応できる。ついでに例の口が飛びかかって来る時にだけ開くものだと分かった。だが、今朝見たものは飛びかかって来る時以外も口が開いていた。何か違うのか?
「急がないと」
走る。角から現れた二匹の剛腕蜘蛛悪魔を両断する。
「アンジェ、来ましたか!」
階段の下でアオイさんが剛腕蜘蛛を斬りはらいながら声をかけてくる。すごい、私に意識を払いながら、同時に襲ってくる複数の剛腕蜘蛛を確実に処理していってる。
ただ、アオイさんは基本的に受け身の戦い方、どうやら奥に進みたいらしい剛腕蜘蛛を全て倒しきるのは難しいらしく、先ほどのように何体かが漏れているようだ。あるいは先ほどまでもう少しやられていて、今ここまで押し返したところで先ほどまでの敵は取りこぼしという事もありそうだけど、どちらにせよ、アオイさん一人では手が足りないのは間違いなさそうだ。
「今行きます!」
アオイさんが取りこぼした敵を蹴りで足止めしつつ、切る。この前読んだタイ捨流というらしい剣術で見た動きだ。刀だけではなく体術を取り入れた技を学びたくて読んだのだが、あまり向いている気はしない。
「これは驚きました。動きに無駄が多いようですが、悪くない技です。もし私との鍛錬の中で出されたら、初見では見抜けなかったかもしれません」
アオイさんが驚きながら笑う。やった。とはいえ、初見では、ということは、二度目はない程度には無駄が多い、ということか。そりゃそうだ、読んだ知識をその場でいきなり使ってまともなものになるはずがない。しかし、向いてないと思っていたが、アオイさんの不意をつけそうなのなら、もう少し勉強してみてもいいかもしれない。
「くっ、多すぎる」
アオイさん一人で少し漏れがある程度なのだから、私が加われば押していけるかと思ったのだが、奇妙な事に、むしろ押されている。数が増えているのだ。
「おやおや、まだ抵抗していたのですか」
そして、先ほど追い出された階段の踊り場にあの中東風フードの悪魔、イブリースが現れる。
「所詮あれは陽動で、こちらが本命のつもりでしたが、あの魔女のせいで随分時間を使う羽目になってしまいました。ま、逆にあの忌まわしき悪路王の足止めをしてくれてるのですから、感謝するべきでしょうね」
「あいつは?」
「イブリース、と名乗っていました。あの剛腕蜘蛛悪魔の、親玉です」
「如何にも。私はイブリース、この地の霊脈はこの蜘蛛達が覆い、枯れるまで利用させてもらいましょう」
「枯れるまで!?!? 龍脈結集地を、枯れるまで、使うと? そのような国を揺るがす大ごと、許すわけがないでしょう!」
アオイさんが、一歩前に踏み出す。
「許す? 人ごときの許可など不要。何よりこの前線は停滞している。そこに私が加わって、勝ち目などどこにある?
私とアオイさんの足元からオレンジ色の炎が溢れ、爆発し、私とアオイさんの体を階下に吹き飛ばす。
「いやはや、
身体中に激痛が走る中、起き上がろうとする横を数え切れないくらいの剛腕蜘蛛悪魔が通り過ぎていく。
「く……そ」
アオイさんが悔しそうに呻く。
「おっと、そういえば、そちらの君は私の不都合なところを見たのだったね。分解して、食事とさせてもらおうか。
「危ない!」
イブリースの腕の先から何か風の流れを感じた、と思った時には、私の体に切り傷が刻まれていた。アオイさんが私を引っ張っていなければ、私の腕は切断されていただろう。
「そんなに逃げることはないじゃないか。考えてみたまえ、我が手勢はまもなくこの白き学舎を覆う、君達の守るものはもはや終わりだ」
痛みに耐えて起き上がりながら、廊下に視線を向けると、そこには大量の剛腕蜘蛛で埋め尽くされている光景が広がっている。明日の文化祭で使うはずのもののうち廊下に置かれていたものが粉々に壊れている。
「よそ見してる暇があるのかい?」
風が来る。とっさに避けようとするが、体に大きく切り傷が刻まれる。
「このままでは……いけない」
でも、どうすればいい。私はこのままでは本当にあの風の刃にバラバラにされてしまう。剛腕蜘蛛悪魔はもはや校舎のあらゆる場所に展開している。今二人で立ち上がったところでそれらを掃討する事など不可能に近い。まして、あのイブリースという上級悪魔はあまりに強すぎる。なんとか、あの全ての剛腕蜘蛛悪魔を無力化し、あの上級悪魔を退けられれば。
……退ける? なんだ、それなら知っている。いや、知らない。知らないけれど知っている。そう、全てを退ければいい。知らないけれど、私はその方法を知っている。知らないけれど、出来る。血がそれを語っている。ほら、流れ出て溢れる血の色が変わっていく。身体中の傷口から白い光が溢れてくる。
◆ intrude : takkoku king jr ◆
ここから暫し、小説のルールを違反し、アンジェの一人称から一時抜け出すことを許して欲しい。
英国の魔女による拘束を抜け出した悪路王はようやく学校にたどり着く。悪魔の気配を辿り、三階の廊下へ。そして見る、アンジェから溢れる白い光を、明らかに彼女の意に答えて蠢く、その力を。
「ダメだ、如月の娘、その力を十分な制御なしで使ってはいけない!」
悪路王が叫ぶ。しかし、その言葉はアンジェには届かない。
アンジェから溢れ出す白い光は一度アンジェを覆うように球体の形を取り、そして、爆発するように一気に周囲に広がっていく。
「ダメだ!」
「ご主人様、撤退しなければこちらが危険です、こちらへ」
黒い穴より現れた露出の多い女性が悪路王の腕を引っ張る。
「くっ」
二人が黒い穴の中に消える。白い光がその場を覆い、黒い穴が分解されるように消滅する。
◆ intrude :
「ふん、あの魔女の加護か? パスが繋がっている以上、もう無駄さ」
アンジェを覆うように球体の形を取った白い光を、イブリースは恐れもせずに、風の刃を放つ。
同時、アンジェを覆う白い光が爆発するように周囲に広がっていく。風の刃が白い光に衝突し霧散する。
「馬鹿な、我が手勢が」
しかしイブリースの注意はもはや風の刃にはない。彼の手勢である剛腕蜘蛛達が白い光に飲み込まれると同時に消滅していくのだ。
白い光はイブリースにまで到達する。
「馬鹿な、我が体が……、くっ、覚えていろ!」
転移魔術を起動する。しかし、その魔術は起動すると同時に白い光によって分解される。
「馬鹿な! 馬鹿な!」
イブリースの体が分解されるように消えていく。
「この、私がぁぁぁぁぁぁ!」
白い光の波が消え去り、最後にイブリースの核だけが残り、体を失った核が自動的に悪魔達の世界に送還されそうになる中、パクリと一匹の蜘蛛がその核を飲み込み、そそくさとどこかへ消え去っていった。
◆ intrude : Witch of British ◆
「うそ、うそ。なにこれなにこれ!」
左腕に大きな傷を負った英国の魔女がようやく校門をくぐり、そして、校舎が白い光で覆われていくのを見た。
「私のルーンが片っ端から解体されていく。まずい、抑えてたものが出てきちゃう。学校が壊れちゃう。止めなきゃ。手加減はしていられない」
英国の魔女は奇妙な行動に出る。ルーンを刻むのに必須のはずの杖を放り捨て、空手となった右手を校舎に向け、一見デタラメとしか見えないほどはやく人差し指を突き出した右腕を動かす。
◆ intrude : Nakajima Aoi ◆
アオイはアンジェがその力を使うのを黙って見ていた。否、他に何も出来なかった。これが如月家の血の力なのは明らかだ。しかし、この力はなんだ。見たこともないその力に、アオイはどう対処していいか、まるで分からなかった。
やがて、各所で爆発の音が聞こえる。
――魔女が抑えていたものが溢れている……。
安曇が校内に残した様々な置き土産を英国の魔女が一つ一つ丁寧にルーンで封印を施したもの。悔しいがその封印は確実で、アオイが不用意に触るより英国の魔女に任せる他ないと判断し、放置するしかなかった。この光が風の刃を分解した以上、その封印のルーンも分解されているのだろう。校内に良くないものが溢れかえる事をアオイは恐怖した。
しかし、次の瞬間、アオイは英国の魔女の魔力を感じ驚愕する。封印が解除された先から次々に更新されている。解けたものも、可能な限り早期に再封印されている。白い光はそれを拒むが、それでもなお次の瞬間には封印する。それは、いちいち刻むという手間が必要なルーン魔術において、ありえない事。
けれども、アオイは何もすることはなく。許されるのは、ただ悔しく歯噛みすることのみ。
やがて白い光が収まり、アンジェが意識を失って倒れこむ。いや、光がアンジェを覆っていた間、彼女に意識があったのかは誰にも分からないが。ともかく、倒れるアンジェを支える。
アオイは携帯電話を取り出し、電話をかける。アンジェの保護のため、そしてなにより、自身の不祥事について、宮内庁に、彼女の母に報告するために。
宮内庁霊害対策課
宮内庁霊害対策課
特殊龍脈結集地第6号の損壊について
特殊龍脈結集地第6号は、同地を狙う上級悪魔「イブリース」との交戦の結果、下記の通りの損壊が発生しました。
記
以上
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To be continued...
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