Vanishing Point / ASTRAY #02
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「カタストロフ」の襲撃を逃れ、キャンピングカーでの移動を始めた三人はまず河内池辺で晃と合流、それぞれのメンテナンスを行うことにする。
途中、河内池辺名物の餃子を食べる三人。その後、「カタストロフ」の襲撃を受けるものの撃退し、RVパーク池辺で一同は一泊することになる。
朝、辰弥は晃と話しながら朝食を作る。
全員で朝食を食べながら、辰弥は馬返東照宮へ行きたいと改めて口にする。
「じゃあ、今回はここでお別れかな」
全ての後片付けが終了し、辰弥が忘れ物がないかを確認する。
「あーそうそう、出発前に渡しておきたいものがあるんだった!」
車に乗り込もうとした辰弥を晃が呼び止める。
ん? と立ち止まった辰弥の代わりに日翔が晃の前に立つと。
「はい」
晃がアタッシュケースを日翔に手渡した。
「なんだこれ?」
「『カタストロフ』に襲われたことを考えると君たちに武装は必要だ。それに路銀を稼ぐために地域のアライアンスにも顔を出すんだろう? だったらこれが必要だ」
アタッシュケースを開ける日翔に晃が言う。
辰弥と鏡介もアタッシュケースを覗き込むと、そこにはいくつものカプセルが収納されていた。
透明で、力を加えると簡単に割れそうなそのカプセルの中には巻貝のようなものが格納されている。
「これは――」
「生体銃。ハンドガンタイプとアサルトライフルタイプを用意した」
得意げにそう言う晃に、三人もああ、と思い出した。
上町府にいた頃、これを使った「ワタナベ」には手を焼いた。
「本体は仮死状態でカプセルに収納されてる。カプセルを割れば仮死状態が解除されると同時に急速成長が働いて数秒で銃の形になるよ。マガジンはないけど一度起動したら百発は撃てる。適切な餌を与えれば寿命が来るまで撃てるけど今回は使い切りを想定してるから餌は持ってきてないよ」
「うわあ、これを自分で使う時が来るとは……」
そう言いながらも日翔は興味深そうにカプセルを手に取り眺めている。
「カプセルはそう簡単に割れないからいくつかポケットに入れておくといい。あ、使い終わったらマガジンキャッチを押せば自壊機能が発動するように調整してるからそれを使って破棄してくれ」
詳しいマニュアルは後で送っておく、と続け、晃はもう一つ、と保冷バッグを取り出した。
「エルステにはこれも渡しておく」
辰弥が保冷バッグを受け取って中を確認すると、そこにはいくつかの輸血パックが収められていた。
「いくら生体銃があると言っても生成を使わなければいけない局面は出てくると思う。その時に君が貧血だと大変だろう? 備えあれば憂いなし、だ」
「ありがとう」
確かにトランスができるといっても生成をしないというわけにはいかない。実際に「カタストロフ」との戦闘で生成したし、暇を弄べばパズル玩具を生成することもある。トランスのおかげで貧血に至る可能性は格段に減ったが、それでも輸血パックの予備があるのは心強い。
「おー、助かるぜ!」
保冷バッグを覗き込んだ日翔も礼を言うと、晃はそれじゃ、と片手を挙げた。
「君たちの旅の無事を祈ってるよ。次合流した時に色々聞かせてくれ」
うん、と辰弥たちも頷き、片手を挙げる。
辰弥たちがキャンピングカーに乗り込むと、晃ももう一度手を振って移動ラボに乗り込んでいく。
「それじゃ、馬返東照宮に向かうか」
そう言い、鏡介が車を発進させる。
ゆっくりと動き出したキャンピングカーを、晃は運転席から見送った。
「……いい思い出作れよ」
それじゃ私も武陽都に戻りますかね、と呟き、晃も車を発進させた。
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