Angel Dust 第18章
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白い人影たちが降下していく。
手元に武器を実体化させ、地上の人々の驚きを受け止める。
円形のフォーメーション、その中心に立つ白い人型は自分達の力の源、即ち天使達を模して
地球上のあらゆる言語で宣言する。
「地球を明け渡せ。我らかつてこの地に住まった者、今一度この地に降り立つ者。我ら、
この景色が、全ての始まりだった。
◆ Third Person Out ◆
あぁ、いま見えた光景はまさに、今見えている光景にそっくりだった。
唯一の違いはルシフェル特有の赤い三つの光点によって構成される顔。
そういえばあの顔は何なんだろう。
また、私の知る限り、唯一神関連の伝承に赤い三つ目の伝承はない。
もちろん、
フィラデルフィアの研究所にいる間に誰かに聞いておくべきだったかもしれないが、もはや今更な話だ。
「メジヂ!」
叫び声一つ気合を入れ、レーヴァテインを構えてメギンギョルズで大きく飛び上がる。
空中に静止しているメジヂのヴァイスに〝私"が、あるいは"私〟のレーヴァテインが運動エネルギーでぶつかる。
メジヂとヴァイスの強い神性が運動エネルギーを減衰させ、〝私〟を静止させる。
「早速来たね、オーディン!」
ほぼ腕だけで〝私〟の突撃を受け止めた形になるメヂジは私を奇妙な名前で呼んだ。いや、このヴァーミリオンで神格が表面化してるのはオーディンではあるのだけど。
「災厄の杖、レーヴァテイン? それはロキの武器だろう? オーディンらしくグングニルを使いなよ!」
安い挑発だ。ここでグングニルを使うのは危険すぎる。今の位置関係ならまだしも、このままヴァイスと〝私〟の位置関係が反転すれば、グングニルがロケットを傷つけてしまう恐れがある。
「ランス・オブ・ロンギヌス!」
ヴァイスの手に赤い一筋の線の入った白い槍が出現する。
「さっさと本気を出さないなら、死ぬよ!」
ロンギヌスの槍が赤く染まる。
「レーヴァテイン、励起!」
レーヴァテインが直剣の見た目に変形し、青い炎を吹き出す。
片目を開けてモニターを見ると五分間のカウントダウンが表示されているのが分かる。
励起した……いや、スルトモードと呼ぶ事にするこの状態は、レーヴァテインの炎は
しかし、この炎は自身の身すら焼くと伝承され、今〝私〟の持つそれも同じ。
スルトモードを長時間継続使用するとDEMの持つ自己再生の限界を大幅に超えるダメージを受けてしまうため、長期戦が予想される防衛戦においては、スルトモードが5分以上継続しないように設定される事になった。
もっとも、所詮コックピットブロックを使ったDEMへの干渉に過ぎない以上、ヴァーミリオンと深く深く繋がっている私が全力で継続させようとすれば、その程度のセーフティは無視出来るが。
赤いロンギヌスの槍とレーヴァテインの青い炎が拮抗する。
『今そっちに向かってる。最悪拮抗状態を維持できれば良い、無理するなよ』
イシャンから通信が入る。イシャンのブラフマーストラはヴァイスとメジヂの防御を上回れる貴重な武器だ。それを活用できるのなら、確かにこの拮抗を維持するためにスルトモードを使うのにも意味がある。
『ありがとう、けどそう上手くは行かないよ』
「あはは! この前の決闘の再演をやるつもりかい、オーディン! 邪を払う剣、《霊の剣》!」
案の定、ヴァイスの左手に白く輝く剣が出現する。
魔性に近いエネルギーを持つスルトモードのレーヴァテインはこの霊の剣にとても弱い。
以前はこれに対しその処理能力を超える出力を持つミョルニムで対抗したが、今回、ミョルニムはグングニルと同じ理由で使えない。
しかし、この後のことを考えればここで距離を取ったりするのは得策ではない。このまま近距離戦を続けなければ。
しかし、霊の剣は魔に属するものをなんでも払ってしまう恐ろしい武器だ。メジヂの高い神性により、魔に属さなくても半端な武器ならやはり押し負けてしまう。
となれば。
「ヴァーミリオン! グングニルを使った時のことを思い出して!」
《な、何?》
「いいから、早く!」
《う、うむ。えーっと、そうじゃなぁ》
ヴァーミリオンが考え出した。後は、ヴァーミリオンの思考と同調して……。
■ Second Person Start (Óðinn) ■
その日は〝世界〟で初めて戦争が起きた日だった。
全ての始まりはヴァニル達が我らアーシスの元に送り込んだ恐ろしき〝黄金の力〟クルヴェイグは、アーシスの領域で
これに脅威を感じた儂達はクルヴェイグを館に招き、説得したがこれに応じず、やむなく槍で貫き、焼いたが、しかし、三度繰り返しても死ぬ事なく。
それどころか、これを敵対と見たヴァニル達が侵攻してくる事態となった。
戦争というものをするのは初めてだが、有効な武器は知っていた。
過去から未来、果ては並行世界、そしてこの領域の外側までも見通せる第三の視点。
それが彼に伝えていた。
私はトネリコの枝を手に待ち、そこから、未来、私が持つことになる槍へと限定的に改竄する。
私の手中にそれは姿を表した。
それは白き光の槍。柄にはトネリコを、穂先にはルーン文字を。
それは決して
即ち、グングニル。
それは速やかにヴァニルの軍勢に向けて放たれる。
◆ Second Person Out ◆
それは、『巫女の予言』に語られる
グングニルが作られるより前のエピソードのはずだがミーミルの泉により全てを見通す力を得たヴァーミリオン……否、オーディンにとっては、時間軸なんて関係ない、ということか。頭がこんがらがりそうだ。
「必中の神槍、《グングニル・オリジン》!」
カタログにはない名前。しかし、私は自信を持って叫ぶ。
直後、〝私〟の左手に先程に見た光の槍が出現し、霊の剣を受け止めた。
「なっ」
情報実体化を行う際、神格と
私が武器を使ったことでカタログに武器が増えると、私が使ったそのままの武器として実体化したのも、私の作った武器を見て「そういう武器だ」と認識した影響だろう。
《レーヴァテインのように元々可変する性質を持った武器の場合、変形して元の姿に戻ることもあるようじゃがの》
なるほど、あの見た目のレーヴァテインは私がイメージしたレーヴァテインで、スルトモードのレーヴァテインは本当にスルトが使っていた時のもの、ということか。
まぁ要するにヴァーミリオンに本物のグングニルを見せてもらったことで、グングニル・オリジンという名前で本物のグングニルに近い近接武器を実体化させてもらったわけだ。
「でやぁっ!」
ここで未知の武器が出てくると思わなかったらしくメジヂが硬直した。やはり、ミョルニムの時と同じ、想定外の事態に弱い!
グングニルの柄でロンギヌスの槍を受け止め直す。流石は主神の槍、押し勝てないまでも、辛うじて拮抗出来ている。
自由となった右手のレーヴァテインで翼を切りつける。
「くっ!」
「堕ちろ!!」
落下を始めるメジヂのヴァイスに向けて、グングニルを投擲する。
グングニルはヴァイスの落下コースを僅かに変え、事前にビーコンを仕込んでおいたその中央に確実に落下した。
「狙い通り!」
忘れずにレーヴァテインを通常モードに戻す。
『今だよ!』
『了解』
英語で叫ぶと、シャイヴァが速やかに応じる。
直後、ヴァイスの四方から光の筋が伸びる。事前に雪の下に仕込んでおいた鏃。
囲ったものを消滅させる恐るべし武器。メジヂがブラシマシラスと呼び、シャイヴァはパーシュパタアストラと呼ぶ。破壊神シヴァの武器であり、英雄アルジュナが宿敵カルナを倒すのに用いた武器。
それが今、ヴァイスを覆い尽くした。
そう、防衛作戦にシャイヴァが加わっていなかったのは最大の懸念点であるメジヂを確実に倒すためだったのだ。
少しずるいかもしれないが、これで私たちの勝ちだ。
「あはははははは!」
瞬きしたその一瞬のうちに、確かにヴァイスは消滅した。しかし、その不愉快な笑い声は消えない。
「いや、まさかそんな手で来るとはね。危なかったよ、本当に」
いた。先程までヴァイスがいた場所に、確かにそこに浮かんでいた。ヴァイスは消せたが、メジヂは消せなかった、ということ?
「いやぁ、悪いね。ブラフマシラスは確かにあまねく一切を消し去るんだけど、それってあくまで自身の世界のあまねく一切に過ぎないんだよね」
そう言った直後、メジヂの手元の空間が、なんというか……捩れた。
まるで空間そのものが騎乗槍のような円錐状に歪曲していく。
「まずい!」
その円錐の先端にいるのは、隠れているシャイヴァのアンバーだ!
慌ててメギンギョルズをはためかせて急降下する。
円錐状の歪みが先端方向に動き出す。
間に合わない!
『シャイヴァ!』
そこに間に合わせたのは、イシャンだった。パドマで円錐状の歪みを受け止め、自身はアンバーを突き飛ばした。
が、私に次ぐ神性と、ダンディライオンの盾に次ぐ硬さを誇るその浮遊する盾は、恐ろしいほど一瞬で弾き飛ばされ、アンバーを突き飛ばした結果、アンバーのいた位置にいたパパラチアのコックピットブロックに突き刺さった。
「イシャン!」
『ぐっ、この、畜生……』
6ユニットあるパドマ、その全てがブラフマーストラに装填される。
『せめて、これで……!』
ブラフマーストラの砲身が伸びる。
「グレイプニル!」
イシャンは決死で攻撃する気だ。なら私はせめてそれを援護しなくては!
二丁の拳銃を乱射する。当たれば動けなくなるし、周囲を弾丸が飛ぶだけでもやはり下手に動けなくなる。
そして、パパラチアの全力ブラフマーストラが放たれる。6ユニットすべての神性を注ぎ込んだその一撃の瞬間出力はヴァイスの出力さえも上回る。流石に今度こそメジヂも助かる術はない!
「ほいっと」
メジヂがパパラチアに向けて、引っ掻くようなジェスチャーを取る。
直後、空中に三本爪の亀裂が走り、そこから空間の〝裂け目〟……そうとしか形容できない現象が発生した。
何もない場所に、薄さ0の穴が空いている。
放たれたブラフマーストラは全てその穴に飲み込まれ。
『きゃぁぁぁぁっっ!』
『くっっっっ!』
直後、二人の女性の悲鳴が聞こえた。
「何事!?」
■ Third Person Start ■
そこは打ち上げ施設の南側。防衛を担うスカーレットとヴァイオレットが立っている。
突然、二体のDEMを一直線に結ぶ直線上に先程見た空間の〝裂け目"が出現し、ピンク色の極太熱線がその"裂け目〟から飛び出した。
それはヴァイスの神性防御すら打ち砕く恐るべしブラフマーストラの一撃。ピンクの熱線は速やかにスカーレットとヴァイオレットを呑み込み、そして、ごくごく僅かな基礎フレームを残し、消滅した。
◆ Third Person Out ◆
なんてこと。辛うじて、コックピットブロックは残っているようだけど、もうあれでは戦闘も出来ないだろう。
たった一瞬で、パパラチア、スカーレット、ヴァイオレットを失ったのか。
「メジヂ!」
レーヴァテインを構えて突撃する。
メジヂが空中を引っ掻き、三本爪の〝裂け目〟が目の前に広がる。
直後、〝私〟達の眼前に広がるのは四本腕のDEM……ダンディライオン!!
慌てて足で踏ん張って止まろうとするが、落下によってついた速度はその程度では停止しきれない。
『危ない!』
割り込んだラファエルがカーボネック・シールドで私の攻撃を受け止めた。
『ありがとう、メドラウドさん』
『気にしないでください、フレイさん、しかし、今のは』
『うん、多分空間と空間を繋ぎ変える能力だ』
これは厄介だ。先程の私やさらにその前のイシャンのように、行った攻撃をそのまま自分に、あるいは他の味方に返してくる。防御、どころかカウンターだ。
ルシフェルが降下に使う転移もあの能力によるものか。アメリカが撮影した月よりルシフェルが出撃する映像はそれ以前にルシフェルが月から出撃した時のものなのだろう。
『遠距離攻撃はまずいか。近接攻撃主体、しかも防御も張れないくらい接近してじゃないと』
『かなり厳しいですね。そもそも本体の神性防御もかなりのもののはずです』
なんてことだ。ここまできて、勝ち目なしで負けるのか?
『話してる暇はなさそうだ。空を見て』
『フレイさん、メドラウドさん、チュンダが空を見て、と……!』
ヒンディー語で何かを言ったチュンダの言葉をスジャータが翻訳し、何かを見て息を呑む。
空?
見上げると、それはルシフェルの群れだった。
「あはは! ルシフェルの群れで空が見えない! ルシフェルが七分に空が三分! って?」
事態に気付いた私たちにメジヂが通信に割り込んできて嗤う。
「あ、この世界だとまだこの映画ないんだっけ。ま、それじゃこの先に作られることもないだろうけど」
「メジヂ……!」
メギンギョルズを展開し、飛び上がる。
「お、まだやるかい、オーディン。じゃ、僕も応じるとしようか」
視界の向こうでメジヂが頭上に〝裂け目〟を開く。
そして、〝裂け目〟から落ちてくる。それは。
「ヴァイス!」
「大正解。いやー、念のため持ってきておいて正解だった」
メジヂがヴァイスに乗り込む。ヴァイスの赤い三つ目が輝気、起動したことを示す。
手元に赤い槍が出現する。
〝私〟がようやくヴァイスまで到達しグングニル・オリジンを振りかぶる。白と赤、二つの槍が交差する。
「どういう事!? なんで、ヴァイスが二つあるの
着地する。砂埃が盛り上がる。
「な、なんだ、それは……」
メジヂが驚愕に目を丸くする。
「デウスエクスマキナ・シュヴァルツ・フレイ。私の、私たちの、切り札だよ」
「まだ隠し球があったなんてね。けど、何体乗り換えたって、結果は同じだよ!」
メジヂが〝裂け目〟にロンギヌスの槍を投入する。
もはやそれを見切る必要すらない。
「パドマ」
6つの花弁がシュヴァルツの周囲に出現する。それはあらゆる方向から飛来するロンギヌスの槍を確実に防いだ。
だからもう、ロンギヌスの槍も〝裂け目〟も興味はない。
シュヴァルツが前進を始める。
「なら、こうだ!」
空間が円錐状に歪む。
7つの神性により大幅に高められた第三視点により、知識が流れ込んでくる。
あれはコード・アリスと呼ばれる異世界を転移する能力者たちの持つ能力の一つ、フォルト・ピアッサー。
空間を歪める力を使った凶悪な技だが、その実態はフォルトと呼ばれる空間を形作る物質の制御に過ぎない。
「カーボネックシールド」
「プリドゥエン」
「アリマタヤ・ヨセフ・シールド」
「ユダ・マカバイ」
「オハン」
「デュバン」
「フィンシールド」
「八尺瓊勾玉」
「メギンギョルズ」
7重の盾がシュヴァルツの前に出現する。
放たれたフォルトピアッサーはそのすべてを穿ったが、しかし、八尺瓊勾玉の展開する結界と、メギンギョルズの防御を破れず減衰消滅した。
シュヴァルツはフォルトピアッサーが消滅するより早く駆け出す。
「調子に乗るな!」
ロンギヌスの槍が振われる。
「ロンゴミニアント」
二本の赤い槍が交差する。
「霊の剣!」
「ゲイ・ジャルグ」
シュヴァルツが出現させたあらゆる搦手を無効化する赤い槍が、ヴァイスの霊の剣の対魔能力を抑え込む。
「ゲイ・ボウ」
「ヴァジュラ」
空中に黄色い槍が二本、出現し、手の形に変形したパドマがこれを撃ち出す。
それは鋭く、ヴァイスの両手を貫通する。
「ぐっ」
「エクスカリバー、クラレント」
「し、信仰の大盾!」
新たに出現した二本の剣、しかし、ヴァイスは防ぐ。
「天叢雲剣」
しかし、次に出現した雷を帯びた大剣は受け止められない。
「ミョルニム」
続いて空中に電撃を帯びた巨大な槌が出現する。本来なら速やかに雷がフレイを灼くはず。しかし、圧倒的に高いシュヴァルツの神性防御はそれすらも無力化した。
シュヴァルツは虹色の翼を展開し飛び上がり、空中のミョルニムを掴んで投下する。
「八咫鏡」
その周囲を無数の八咫鏡が取り囲む。
それはミョルニムの破壊エネルギーを外に逃さず、それでいて、内部のエネルギーを何倍にも膨れ上がらせる、恐ろしき反射炉だった。
「ブラフマーストラ、グングニル」
両肩に大型の砲塔が出現する。パドマによる装填はない。しかし、それを上回るエネルギーラインからの供給がある。
放たれた攻撃はパドマ6つを優に超える出力を持っていた。
「くそ、こんなこと!!」
膨大なエネルギーのスウォームから、小さな影が飛び出す。神性エネルギーを一点突破して〝裂け目〟を駆使して飛び出したメジヂだ。
「ヴァジュラ、ゲイボルグ」
赤き棘の槍は自分の手で、ヴァジュラは無数に、パドマの手で、放たれる。
無数の黄金と赤の槍がメジヂの行手を阻む。
「やぁぁぁぁ!」
「くっ、接続、全開!」
メジヂが神性を全開にして防御に徹する。
「レーヴァテイン!」
「グラム!」
「エクスカリバー!」
「クラレント!」
「カリバーン!」
「ダビデソード!」
「モラルタ!」
「ペガルタ!」
「クルージーン!」
一本一本の剣を使い捨てる覚悟の全力で左右に武器を出現させては壊しを繰り返す。
「硬い!」
《奴は月のエネルギーから供給を受けているようです。高出力のエネルギーを纏った高質量の攻撃が望ましいでしょう》
なら、ぴったりのものがある。
少し前に、メドラウドはラファエルはエネルギーを振り分ける事が出来るのが強みだと言った。
それは正しい。旧人類の持つ神性記憶合金は満遍なくしか神性を展開できない。
しかし、エネルギーラインというエネルギーの通り道を持つシュヴァルツは違う。
「全てのエネルギーを右手に集中させる」
その言葉通り、全てのエネルギーラインの光が弱くなっていき、反面、右手のエネルギーラインだけは眩しいほどに輝いていた。
「終わりだ、メジヂ!!!!!」
真正面から放つアッパーパンチ。
それはメジヂの持つ圧倒的に高い神性にすら打ち勝ち、メジヂの小さな体を高く高く持ち上げた。
そして、それを行なったシュヴァルツの、いや、虹のデウスエクスマキナの虹色の羽は、その戦場にいた全ての人間の目に留まった。
お互いに肩を貸しあいようやく指揮所にたどり着いたメイヴとグラーニアも。
同じく肩を貸しあって基地を目指していたイシャンとシャイヴァも。
そして、後席の相棒の死に悲しむメドラウドとスジャータも。
単身戦い続けるユピテルと必死でそれを支援をしている『鋼』の二人も。
みんな、その希望を、勝利を、明日を、伝えてくれる虹色の光を見つめていた。
《さぁ、最後の仕上げじゃな》
「うん」
もはや落ちて来る月は止められない。
用意したロケットには悪いけど、もう完全に第三視点をマスターしたフレイにはもはやロケットによる観測は不要だ。
「いっけぇぇぇぇぇ、神の一筋! 《グングニル》!」
最後と思うと自然と叫んでいた。
白い熱線が空に飛び立ち、月の核を撃ち抜いた。
核を撃ち抜かれた月はたくさんの破片を撒き散らした。
それは月自身の破片であり、月に住んでいた天使、ルシフェル達の生きた印、そしてもはや塵となったもの。つまり、天使達の塵、エンジェルダストだった。
End
この作品を読んだみなさんにお勧めの作品
AWsの世界の物語は全て様々な分岐によって分かれた別世界か、全く同じ世界、つまり薄く繋がっています。
もしAWsの世界に興味を持っていただけたなら、他の作品にも触れてみてください。そうすることでこの作品への理解もより深まるかもしれません。
ここではこの作品を読んだあなたにお勧めの作品を紹介しておきます。
塵は塵に還るべし(2021年AWs新連載選考会候補作品)
Angel Dustは終わりましたが、この世界の物語はまだ終わるわけではないようです。
この世界の次のエピソードを準備中です。実現した暁にはこのタイトルの文字がリンクになっているはずですので、ご利用下さい。
まだリンクになっていない場合は、下記の作品を読んでお待ちください。
Dead-End Abduction
知性間戦争後の荒廃した地球で、再起動者と呼ばれる死体を労働者として使う技術を使わなければ立ち行かない世界で、自我を持っているとしか思えない再起動者と出会った技師の物語です。
知性間戦争とは地球に住む知性体「人類」と、月に住む知性体「アドベンター」の戦争の事です。
どこかで聞いたことがある気がしませんか?
退魔師アンジェ
異邦人の妖精使い
この物語の中で、いくらかの神秘について語られた事を覚えていると思います。
というよりDEM自体も神秘と言える存在でした。
しかし、DEMがクローズアップされすぎて他はよく分かりませんでしたよね。
これらの物語は2010年代の日本を舞台とした神秘を扱う現代ファンタジー小説です。
本作で出てきたキャラクターやその関係者も出てきたりするかもしれませんね。
そして、これ以外にもこの作品と繋がりを持つ作品はあります。
是非あなたの手で、AWsの世界を旅してみてください。
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