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世界樹の妖精-Serpent of ToK- 第5章

 

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前回までのあらすじ(クリックタップで展開)

 場所はアメリカのフィラデルフィア。
 とある施設に、仲間の助けを借りて侵入した二人の男がいた。
 ハッキングに長けたガウェインと肉弾戦に長けたタイロンの二人は警備をものともせずサーバルームに侵入、データを盗み出すことに成功する。
 ハイドアウトに帰還した二人は、侵入の手引きをしてくれたもう一人のハッカー、ルキウスとサポートガジェットを作ってくれたアンソニーと量子イントラネットを通じて会話する。
 そこに現れた1匹の蛇。
 その蛇こそが「SERPENT」と呼ばれる謎の存在で、ガウェインたちはLemon社が展開しているという「Project REGION」を阻止すべくSERPENTに呼ばれた人間であった。
 SERPENTの指示を受けてLemon社の関連企業に侵入するたけし(ガウェイン)とタイロン。
 「EDEN」にいるという匠海たくみ和美かずみが気がかりで気もそぞろになる健だったが、無事データを回収する。
 解析の結果、そのデータは保管期限が切れて削除されたはずの「EDEN」ユーザーのデータ。
 そこから匠海と和美のことが気になった健は独断で「EDEN」への侵入を果たす。
 「EDEN」に侵入した健だが、直後、魔術師仲間内で「黒き狼」と呼ばれる魔術師に襲われる。
 辛うじて逃げ出した健であったが、「Team SERPENT」を危機に晒しかねない行為を行ったということで謹慎を命じられる。

 

 
 

 

    第5章 「智慧の木に絡みつく蛇」

 

「でも、『EDEN』に侵入するっていっても前回の件があるから対策されてるんじゃないの?」
 「EDEN」侵入のために準備を始めた健に、アンソニーが尋ねる。
 前回、健が独断専行して「EDEN」に侵入した際は黒き狼が即座に反応して「EDEN」から弾きだされ、攻撃されたはず。様々な幸運が重なって健は身元を割られることもなく離脱することができたが、あの一件があったのだから「EDEN」への侵入は困難を極めるだろう。少なくとも、IDチェックは厳しくなっているだろうし、黒き狼も確実に襲ってくるだろう。
 少なくとも黒き狼に対する対策を講じておかなければ「Team SERPENT」に勝ち目はない。先程までの会話で白き狩人ヴァイサー・イェーガーの協力を得られていないと分かっているのだから心強い味方の援護も期待できない。
「まぁ――俺一人だったら確かに骨が折れるな。だが、Lemon社を暴くという『Team SERPENT』の目的を果たすためにもやるんだ、今回はお前らにも協力してもらうぞ」
「え」
 健の言葉に、アンソニーが思わず声を上げる。
「俺も参加するの?」
「当たり前だろ! お前だって『Team SERPENT』なんだから。そりゃあ、お前が来たところでできるのはガジェットの調整くらいだろうし、お前のことだからそれくらい遠隔でできるだろうが。バックアップがあればそれに越したことはない」
 そう言いながら、健はごそごそとベッドの下からラップトップパソコンを取り出しバックパックに詰め込む。
「ちょっと待って、ここからハッキングするんじゃないの?」
「ここからの接続は難しいだろうな。痕跡消してるからアク禁はないだろうが、それでも黒き狼に見つかれば俺だとすぐバレる。Tree of KnowredgeToKに侵入して、ダイレクトアタックする」
「はぁ!?!? まずいってそれ!」
 出かける準備を始める健を、アンソニーは慌てて止める。
 健はまだ謹慎が解けていない。ここでことを起こせば確実に「Team SERPENT」からも追放されるだろう。それとも、それを健は望んでいるというのか。
 確かに健はSERPENTを信じていないところがある。「Team SERPENT」に参加した理由もアンソニーからすれば若干納得できないものである。
 しかし、健のハッキングの技量は高く、アンソニーもガジェットのプログラム周りで時々世話になっていることを考えると健が今ここで離脱するのは望ましくない。
 そう考えると、健の独断専行はここで止めなければいけなかった。
「いくらADAMとEVEに話を聞くっていってもだよ。俺はその二人の元になった奴のことなんて何も知らない。タケシにとっては大切な人かもしれないけど、言っちゃ悪いけど俺は無関係だぞ? やっぱり、前回みたいに周りに迷惑をかけるだけかも――」
「お前は『Project REGION』を肯定するのかよ!」
 止めようとしたアンソニーに、健は声を荒らげてその胸倉を掴んだ。
 一瞬、やりすぎだ、と理性が健を止めようとするが、その理性は次の瞬間には吹き飛んでしまう。
 無関係? 周りに迷惑をかけるだけ? そんなこと知るかと健の心が叫ぶ。
 匠海と和美は健にとってかけがえのない仲間だった。「キャメロット」のチームメイトとして、ライバルとして、戦友として、彼らは一つの目標だったし乗り越えるべき壁だった。
 それなのに、二人は殺された。一般的な報道では不幸な事故だと言われているが、その実際は不正を暴くためのハッキングでその存在を特定され、殺された。
 健はその真実を突き止め、二人の無念を晴らして、そして全ては終わったと思っていたのに話はまだ終わっていなかった。匠海と和美の脳内データは取得され、保管され、「EDEN」のテストモデルとして利用された。
 まだ、「EDEN」が単なるメタバースであれば健は何も言わなかっただろう。確かに死者を弄ぶ行為ではあるかもしれないが、遺族が心の整理を付けるために二人を「EDEN」に収容したのであればそれを責める権利は健にはない。健だって、許されるのであればもう一度二人に会いたかったし、会えるのならまたハッキングで対戦したい、と思っていたから。
 健が焦っているのはLemon社が「Project REGION」を進めているからだ。脳内データを利用したAIを量産し、様々な場面で利用したい、と企んでいるからだ。
 脳内データの利用は危険だ。先日入手してしまった「EDEN」元住人のデータ、そのマスタデータが「Team SERPENT」のサーバに格納されている。なぜマスタデータなのかという問いに浮上している答えは「脳内データのコピーができず、移動しかできない」というもの。
 抽出した脳内データのAIとしての再現性はかなり正確だ。健はほんの少ししか匠海のAIと言葉を交わさなかったが、あの雰囲気や言葉は生前の匠海と何ら変わりはなかった。抽出されるデータには記憶や知識といったものだけではなく、人格といったものも含まれるのだろう。
 人格なんて概念的なものまで抽出されることを考えると、脳内データはただのデータとして存在するわけではない。所謂「魂」そのものがデジタルデータとして抽出されているとも考えらえる。
 そう考えると、脳内データがコピーできないということは「魂」を複製することは不可能ではないか、ということ。先日ダウンロードした脳内データも「移動」ではなく「コピー」で複製を取ったはずだ。だが、調査の結果、侵入した企業のサーバには元のデータは残っておらず、「Team SERPENT」のサーバにのみ、このデータが格納されている、という事実が明らかになった。
 そこで浮上するのが「Project REGION」の内容である。
 SERPENTは「Project REGION」のことを「魂を複製することで量産して様々な機械に搭載する」プロジェクトだと言っていた。その魂が現時点では複製できないものである、というのが「Team SERPENT」の見解である。
 それとも、Lemon社はもう魂の複製を実現しているというのだろうか。
 それは危険だ、と健は漠然と考える。
 魂とはその生命固有のものであるはず。複製できたとして、それは同じ存在が複数実在してしまうことにつながる。同一の存在が、同時に存在し得るものなのか、それは疑問だった。
 複製した瞬間、複製元が消失したということを考えると同一の存在が同時に存在することはできない。それを無理に存在させた場合――存在そのものの消失もあり得る。
 それが嫌なのだ、そうなるのが恐ろしいのだ、と健は漸く気づいた。
 匠海と和美が、その実験に巻き込まれてこの世界から完全に消え去ることを、恐れている。
 魂の複製は悪だ、とか、それを兵器転用されるのが嫌だ、とか、そんなものは建前だ。健の本音は「匠海と和美を弄ぶな」、それに尽きる。
 尤も、二人は「EDEN」の最高技術責任者、佐倉 日和の義子であり娘である。そんな二人をLemon社が実験に使うとは考えられないし、日和本人が反対するだろう。いや、二人を実験に使わないことを餌に日和が飼われている可能性もある。
 いずれにせよ、この状況は望ましいものではない。誰よりも自由を愛し、正義のために生きた二人がそれと真逆の状態に陥るのは許せない。
 この時点で、健は「Team SERPENT」や人類のため、という大義名分は存在しなかった。あるとすれば二人のためと称した自分のため、である。そう考えると「Team SERPENT」のメンバーを巻き込むことは褒められたものではない、ということも健は理解していた。それでも、「Team SERPENT」が目指していることも「Project REGION」の阻止なのだから利害は一致している。
 SERPENTならどう言うか、と考え、健はふと、気が付いた。
 SERPENTの介入がない。
 それは先程から気付いていたことだが、この期に及んでもSERPENTが現れないのはおかしい。
 何かあったのか、と考えるもののSERPENTもLemon社の発表で忙しくなっただけかもしれない、と考え直す。
 それでも、この胸を締め付けるような不安感は一体何なのだろうか。健はSERPENTのことを全面的に信用はしていない。利用できるなら利用しようと思っているだけだ。それなのに、今は自分を止めに来ないSERPENTのことが気になって仕方がない。
 SERPENTに何かあったのか。あるとすればきっと「Project REGION」に関してのことだ。
 アンソニーの胸倉を掴む手を離し、健は苦し気に口を開いた。
「確かに俺は匠海と和美さえ救えればあとはどうでもいいと思っている。だが、お前ら、いや――『Team SERPENT』の目的は『Project REGION』の阻止のはずだ。そして今、その『Project REGION』が大きく動き出そうとしている。SERPENTも出てこない今、きっとかなりまずい状況になっているはずだ」
「それは――」
 反論しようとして、アンソニーが言葉に詰まる。
 そうだ。Lemon社がADAMとEVEの発表を行い、話が大きく動き出しているというのにSERPENTは姿を見せない。一度に一か所にしか姿を見せないわけではなく、全体的な打ち合わせでは各ハイドアウトに姿を現すSERPENTだから今別のハイドアウトで話し込んでいるということもあり得ない。つまり、SERPENTには今出られない理由がある
 それが何かはアンソニーには分からない。だが、健の言葉が本当なら、状況がいいとはとても言えない。
「SERPENTがまずい状況にある……ってこと?」
 掠れた声でアンソニーが尋ねる。
 多分な、と健が頷いた。
「でなきゃ俺がまた『EDEN』を攻める、それも明確に匠海と和美のためって言ってるのに止めに入らないはずがない。SERPENTも今ヤバい状況にある、下手したら『Team SERPENT』にも関わって来るぞ」
「それは魔術師マジシャンとしての勘?」
 魔術師マジシャンにしろ魔法使いウィザードにしろ、些細な矛盾点を見つけそこから攻め込む能力は必要とされる。それは時に「勘」というオカルトな名称で呼ばれたりするが、脳波を測定しても解明されていない以上「勘」以外に呼ぶ名称は見つからない。
 ああ、と健が頷く。
「とりあえず今の俺と『Team SERPENT』の利害は一致している。『EDEN』を攻めればきっと真実が分かる。誰もついてこないなら、俺は一人で行くぞ」
「誰が誰もついてこないって?」
 不意に、低い男の声が響いた。
 その声に健とアンソニーがハイドアウトの出入り口を見る。
「ったく、相変わらずおたくさんはバーサーカーだな。本当に魔術師マジシャンか?」
「おっさん!」
 出入り口に立っていたのはタイロン。その横に、ロサンゼルスにいるはずのピーターも立っている。
「だからお前は『他人のオーグギア壊すしか能のない奴』って言われるんだよ、ガウェイン」
 言葉は悪いが、ピーターは口元に苦笑を浮かべつつ健に歩み寄った。
「リアルでは久しぶり。Lemon社の発表は報道前にイルミンスールで話題になってたからな、これはやばいことになったぞと思って有給取ってきたぞ」
 どん、と床にスーツケースを置くピーター。
「話は外にも漏れていたぞ。これ、オレたち以外に聞かれてたらどうするんだ」
「あ……」
 しまった、と声を上げる健。
 そんな健にピーターは歩み寄り、その肩にこつん、と自分の拳を軽くぶつけた。
「一人では行かせねえよ。オレたちも付き合う」
「ルキウス……」
 思いもよらなかったピーターの声に、健が呆然とする。
 まさか、そんなことを言われるとは思っていなかった。ピーターがここに来たのはオンラインでは止められないから物理的に止めるために来たのだと思っていた。それなのに、「俺たちも付き合う」とは。
「オレたちって、まさか」
「ああ、俺も出よう」
 ピーターの横に立ち、タイロンも言う。
「どうせお前のことだからToKをダイレクトアタックするのは想定の範囲内だった。さっき、ピーターが空港に着いたとか言うから迎えに行って、俺と同じ考えだったからここまで連れてきた次第だ」
「ありがとな、おっさん。一応地図はあるが結構ややこしいところにあるよなこのハイドアウト……。オレ一人じゃ道に迷ったかも」
 そう言ってから、ピーターは「で?」と健に尋ねる。
「どうやってToKに侵入するつもりだった?」
「どうやって、って……。警備のオーグギア全部爆破して、セキュリティ全部落として……」
 しどろもどろに健が答える。
 その瞬間、ピーターが空中に指を走らせた。
「こんの、バカヤロー!」
「うぉっ、あぶねえな」
 健も指を振り、ピーターが送り込もうとしたSPAMを無効化する。
「す、すげえ……」
 目の前で展開された小規模なハッキングバトルにアンソニーが声を上げる。
 動き自体は地味かもしれない。だが、その裏で繰り広げられた戦いが確かに見えたような気がした。
 アンソニーはスポーツハッキングの観戦自体はあまりなかったが、それでも魔術師マジシャンたちの戦いは見ていて激しく、派手なものだったという記憶がある。しかし、高位の魔術師の戦いは最小限の動きで最大の効果を狙うのか、と考えるとこんな小さな動きでもきちんと対処しなければ大変なことになる、ということか。
「ちっ、無効化したか」
 心底悔しそうにピーターが呟く。
「お前な、そんな目立つ行動取って一人で『EDEN』まで行けると思うか? 警備とセキュリティ止めたところでカウンターハッカーに食われて終わりだぞ? ましてやToKには黒き狼がいるってのに、警備を排除した時点で侵入を悟られて即喰われるぞ!」
 楽観視しすぎなんだよお前は、とピーターが健を詰る。
「とにかく、一人でToKからのダイレクトアタックを考えるな。そのための『Team SERPENT』だろ?」
「ルキウス……」
「それに、オレだってアーサーやマーリンとは一度はりあいたかったんだ。あの二人が死んだことに関してはオレも悔しい。だからお前の気持ちも分からんでもない、と思ってる。だからこそ、『EDEN』にあの二人がいるのなら、それを汚されたくない気持ちは同じだ。SERPENTが出てこないなら好都合、オレも協力する」
 そう言ってニッと笑ってみせるピーターに、健は心強さを覚えた。
 なんだかんだ言って突っかかったりライバル視したりするピーターではあったが、そのハッキングの腕を健は認めている。ピーターの固有ツールユニーク、「凍てつく皇帝の剣フロレント」に対抗できる魔術師マジシャンを健は知らない。そんなピーターが、そして武闘派のタイロンが同行するのならそれ以上に心強いことはない。
「ガウェイン、お前は一人で抱え込みすぎなんだよ。アーサーとマーリンのことならオレだって気になってる、オレは立場上お前を止めなきゃいけなかったが、今の状況でその役割を全うする必要はねえ、オレも行くぞ。『木こりのクリスマスランバージャック・クリスマス』を一緒に止めた仲だろ」
「え、マジで? 本気で言ってる?」
 いつもなら健の独断専行を止めるピーターも同行すると言ったことで、アンソニーはどうしよう、と心の中で頭を抱えた。
 ピーターも元スポーツハッカーだ、匠海アーサー和美マーリンがスポーツハッキング界の同年代レジェンドとして名を馳せていたことを考えると生前に一度は対戦したかったのだろう、という気持ちは理解できる。だが、それとToKのダイレクトアタックは話が違う。
 健もピーターもADAM匠海と《EVE和美のためにToKのダイレクトアタックを敢行すると言う。ToKの警備やその運営元であるLemon社に喧嘩を売ることを考えるとあまりにもリスクが高すぎる。「Team SERPENT」の消滅、それによる「Project REGION」の完遂もあり得る。本来なら絶対に取ってはいけない行動のはずだ。
 止めなきゃ、とアンソニーは自分を奮い立たせる。
 アンソニーにとって健もピーターも自分よりも年齢が上の先駆者だ。まだ子供であるアンソニーが止められる相手ではない。それでも、「Team SERPENT」のことを考えるならこの二人は、いや、タイロンを含めた三人は何としても止めなければいけない。三人は「ランバージャック・クリスマス」を食い止め、世界を救った英雄かもしれない。しかし、今回はあまりにも敵が悪すぎる。
「……やばいって。いくらなんでも無茶すぎるって」
 おずおずと、アンソニーが健とピーターに声をかける。
 二人が同時にアンソニーを見る。
 やばい、俺には止められない、とアンソニーが身を竦める。
 この二人が暴力に訴えることがないのは分かっているが、それでも年配者に物申すのはよくなかったか、と考えていると。
「ありがとうな、AAAトリプルエー。心配してくれて」
 健がニッと笑ってみせる。その直後、真顔に戻り、口を開く。
「だが、今はもうノーリスクで『Project REGION』を止めることはできない。SERPENTも出てこないことを考えると、SERPENT自身も今はマズい状況にあると考えた方がいい。多分、Lemon社のあの発表にあたり色々データが精査されたんだろう。その一環で、SERPENTの存在がバレた。そう考えるとLemon社の発表は『Team SERPENT』俺たちに対する宣戦布告だ。俺は匠海ADAM和美EVEに会わなきゃいけない。あの二人は『Project REGION』の鍵だ。SERPENTの願いを叶えるためにもう一度『EDEN』に侵入する」
「でも――」
 健の言い分は分かる。Lemon社に宣戦布告されたことも理解できる。それでも、「Team SERPENT」は社会的に影響力がある組織ではない。補足されればあっという間に潰されてしまう。
 「Team SERPENT」の危うさに、アンソニーは漸く気が付いた。
 自分はただLemon社が嫌いという理由でチーム入りしたが、「Team SERPENT」は世界を支配するも同然の巨大複合企業メガコープGLFNグリフィン」四社のうち一社であるLemon社に牙を剥いた蛇である。確実に喉笛に噛みつき、強い毒を流し込まない限り駆除されるのはこちらの方。勝てるはずがない。
 それなのにLemon社に歯向かおうというのは何故だ。匠海と和美は自分の身を賭けるに値する人間だったというのか。
 恐らくは、この二人に特に強い思い入れを持っているのは健とピーターだけだ。他のチームメンバーは多少は思うところがあったとしてもほぼ無関係のはずだ。
 彼らを危険に晒すのか、とアンソニーは非難の眼差しで健を見る。
「わーってるよ、お前が何を言いたいのかは」
 アンソニーの視線をまっすぐ受け止め、健が答える。
「確かに俺の行動の動機は個人的なものかもしれない。チームを危険に晒すものだって言うことも分かってる。だが、状況が状況なんだよ。このままSERPENTの指示を待って、Lemon社を泳がせたら世界はきっと大変なことになる。知ってるかAAA、日本にはな、『虎穴に入らずんば虎子を得ず』って諺があるんだ。危険を冒さなければ最大の成果は得られない。だから、俺は行く。それで『Project REGION』を止められれば大金星だしダメだったら『Team SERPENT』はその力がなかっただけだ」
 その言葉に、アンソニーは「ああ、止められない」と悟った。
 健の言い分は説得力がありすぎる。受け身では「Project REGION」を止められないことはよく分かる。SERPENTに指示を仰ぎたいが、そのSERPENTが今動ける状況でないのなら自分たちの判断で動くしかない。
 はぁ、とアンソニーはため息を吐いた。
「……一応、俺は止めたからな」
 自分にできる責務は果たした。あとは健たちが失敗しなければそれでいい。「Team SERPENT」の未来は健たちに委ねるしかない。
 そう、アンソニーが考えていると、健はアンソニーの肩をポンポンと叩いた。
「お前は家に帰れ。帰って、『Team SERPENT』関係のデータを全部消せ」
「え――」
「まぁ、俺たちがドジるとは思えんが、万一のことがあった場合、お前が『Team SERPENT』と繋がっていたら捜査の手が及ぶ。だから『Team SERPENT』とのリンクを全部絶て。お前は『Team SERPENT』とは無関係でいろ」
 それは、と言いかけたアンソニーの声が震える。
 それは、「Team SERPENT」から抜けろということなのか。
 ああ、と健が頷く。
「お前はまだ子供だ。こんなことで人生を棒に振っていい人間じゃない。俺たちに何かあっても、『Team SERPENT』とのつながりが証明できなければお前は追跡されることはない」
「でも……」
 そう口にして、アンソニーは自分が「チームを抜けたくない」と思っていることに気が付いた。
 動機はただのLemon社嫌いだったかもしれないが、今までの「Team SERPENT」での活動は楽しかった。SERPENTの出資で高性能なガジェットをたくさん作れたし、健やピーター、タイロンといった仲間とも出会った。確かに自分はあまり役に立てなかったかもしれないけれど、それでも健たちと活動していた時間は不謹慎にも楽しかった、とアンソニーは思ってしまった。
 だからこそ、この事態で自分だけリスク回避を取るような行動はしたくなかった。それなら健たちに同行してToKをダイレクトアタックした方がマシだ、とさえ思えてしまう。
 そんなアンソニーの考えに気付いたか、健が苦笑してアンソニーの額を小突く。
「何も永久追放なんて言ってねえよ。落ち着くまでの間身を隠せって言ってるだけだ。今回の事態が落ち着いたらまた俺たちにガジェット作ってくれよ」
「でも、その時は『Project REGION』もどうかなってるんじゃ」
 もしかしたら何もかもがうまく行って「Project REGION」が阻止されているかもしれない。そうしたら「Team SERPENT」の役割は終わり、チームも解散しているかもしれない。そうなったら、健たちとはもうここまでである。最後まで見届けられないのはあまりにも辛すぎる。
 何言ってるんだ、と健が笑う。
「『Project REGION』を阻止して『Team SERPENT』が解散になっても俺たちの縁はそれまでじゃないだろ。だから今はとりあえず安全な場所に避難しとけ」
「タケシ……」
 そこまで言われてもなお渋るアンソニーに、ピーターも声をかける。
「そうだ、ガウェインの言う通りだ。お前まで危険な目に遭う必要はねえよ。別にハブってるわけじゃねえ、お前にはまだ未来があるのにこんなところで棒に振るなって言ってるんだ」
「ピーターまで」
「ああ、二人の言う通りだ。お前さんにはまだやることがある。だから、今は安全なところに避難して時を待てと言っている」
 タイロンにまで説得され、アンソニーは折れるしかなかった。
「分かったよ。だけど、行くなら失敗するなよ。あんたらだけ人生詰んで俺だけ逃げるの、嫌だよ」
「そんなへまはしねえよ。『ランバージャック・クリスマス』を阻止したチームの力舐めんなよ」
 ピーターが笑い、それに合わせて健も笑う。
「……じゃ、行きますか。お前ら、準備はもうできてるんだろ?」
 ラップトップパソコンを入れたバックパックを背負い、健が確認する。
「オレはお前みたいにハッキングのための荷物なんて要らねえからな。おっさん、おっさんも弾の数は大丈夫か?」
「だからおっさんと言うなと」
 ピーターとタイロンの相変わらずのやり取りに、アンソニーがくすりと笑う。
 この三人なら大丈夫かもしれない。それなら信じて送り出すだけだ。
「じゃあ、俺は一回家に帰るよ。一応、『Team SERPENT』のリンクは切っておく」
「ああ、それじゃ、落ち着いたらまた会おうぜ」
 健、ピーター、タイロンの三人がハイドアウトを出ていく。
 それを見送り、ピーターも手早く荷物をまとめ、ハイドアウトを後にした。

 

 ◆◇◆  ◆◇◆

 

 フィラデルフィアの中心部にLemon社が建造した世界で三本目の世界樹メガサーバ、「Tree of KnowredgeToK」は聳え立っていた。
 Lemon社の力を誇示するかのような高層ビル、それを包み込むようにARビューが一本の巨木を構築している。その枝に実るのは林檎智慧の実
 聖書に出てきた楽園エデンを模すかのように、その樹は青々と生い茂っていた。
「……間近で見るとやべえな」
 ごくり、と健が唾を飲み込む。
「何言ってんだ、たかが世界樹だろ、こんなもんだよ」
 二本目の世界樹、「イルミンスール」のカウンターハッカーとして勤務しているピーターが平然と言うが、その顔はわずかに緊張の色が見て取れた。
 それはそうだろう、健やタイロンと違い、ピーターはGLFNの一社、FaceNoteフェイスノート社の社員である。Lemon社の、それもToKに侵入したことが発覚すれば懲戒免職もあり得る。ピーターとしては懲戒免職自体はそこまで恐ろしいものではなかったが、それよりも自分の侵入によってLemon社とFaceNote社が企業間紛争コンフリクトを起こした場合が恐ろしい。下手をすれば巨大複合企業メガコープ同士の潰し合いに発展するのだから世界が混乱に陥る可能性すらある。
 それでも、有給休暇を取ってダイレクトアタックに参加したのは健一人を危険に晒したくなかったからだ。安全なロサンゼルスから量子通信を使ってサポートを行うこともできたが、それにはピーターもToKに侵入ハッキングする必要がある。遠隔で侵入する場合、回線を特定されたら切断され、援護ができなくなるとその瞬間に健たちが危険に晒される。それなら一緒にToKに侵入してダイレクトアタックした方が回線切断のリスクは下げられる。
 今回の作戦は今までに増して失敗が許されない。失敗すれば「Team SERPENT」崩壊の危機どころか世界の覇権をLemon社が握る展開になる可能性も出てくる。
 FaceNote社勤務のピーターとしてはそれはそれで面白くない。その点では、ピーターもまた私怨で「Project REGION」の阻止を図っている、とも言えた。
「……さてと、どこから侵入しますかね……」
 腕を組み、健が呟く。
「考えてなかったんかい!」
 思わず、ピーターが声を上げた。
「ぶっちゃけ、ノープランだったな。いやほら俺一人なら守衛から攻めていけば行けると思ったから……」
「このバーサーカー!」
 ぽかり、とピーターが健の頭を軽く殴る。
「なにをう」
 健も負けじとピーターに反撃を試みる。
「はいはい、おたくさんら、そんなことをしてる暇があるならあいつらを襲うぞ」
 二人の襟首を掴み。タイロンがとある方向を見た。それに合わせて健とピーターもその方向を見る。
「……清掃業者?」
 そこにいたのは二人の作業着姿の男。その傍らには人が一人入れそうなワゴンがある。
 ああ、とタイロンが頷いた。
「拠点侵入のベタベタな手だろう。入館IDくらいおたくさんらなら偽造できるだろ、さっさとやるぞ」
 タイロンがずるずると二人を引きずり始める。
「大丈夫だって! おっさん、歩けるから!」
「だからおっさんと言うなと」
 そんなことを言い合いながら三人は清掃員に近づいた。
 人通りがほとんどない裏口に近づいたところで健とピーターが頷き合い、同時に空中に指を走らせる。
 清掃員が装着しているオーグギアが接続するサーバを即座に特定、セキュリティを潜り抜けてSPAMを送り込んだ。
『――っ!?!?
 突然視界に送り込まれたフラッシュ映像と聴覚を揺さぶる大音量のノイズ。
 二人の清掃員が硬直したところでタイロンがホルスターから二丁のヴァリアブルハンドガンを引き抜き、素早くレバーを操作してモードを非殺傷スタンに切り替えた。
 銃口を二人に向け、引鉄を引く。
 キャパシタにチャージされた電流が導電性レーザー誘起プラズマチャンネルLIPCを伝って世相員たちに撃ち込まれる。
 超強力な電流を受けた清掃員たちが為す術なくその場に崩れ落ちる。
「流石、ルキウス」
「ガウェインも相変わらずだな」
 健とピーターが意気揚々とハイタッチし、三人で清掃員たちに歩み寄る。
 作業着を身包み剥いで結束バンドで拘束し、猿轡を噛ませて近くのゴミ箱に放り込んでおく。
「ルキウス、お前はワゴンに入ってろ。この中でイルミンスールの社員やってるお前が一番顔バレの可能性あるだろ」
 作業着の一着をタイロンに渡しながら健がピーターに指示する。
「確かに。じゃあガウェイン、その鞄寄越せ。流石にそれ背負って入ったら怪しまれるだろ」
「あいよ」
 「ランバージャック・クリスマス」を阻止し、そして「Team SERPENT」としてチームを組んでいた三人の息はぴったり合っている。
 すぐに健とタイロンが作業着に着替え、帽子を被る。
 ピーターも健の鞄を持ってワゴンに潜り込み、その上にこまごました清掃道具の乗った蓋を被せて姿を隠す。
「じゃ、行きますか」
 タイロンがワゴンを押し、三人は清掃員等が出入りするための裏口に近づいた。
 その間に健が裏口の電子ロックに仕掛けられた認証システムにアクセス、データベースに侵入し入館許可のリストを書き換える。
 静脈認証のパネルにタイロンが手のひらを当てると、その瞬間に健が仕込んだ欺瞞ツールハスラーがタイロンの静脈データを入館許可リストに登録された人物のものと欺瞞させ、ロックを解除する。
 扉が開き、三人は難なくToKの内部へと侵入した。
「セキュリティは任せろ」
 ワゴンの中からピーターが二人に声をかけ、ToKのセキュリティシステムに侵入する。
 攻撃リスクの分散のために、各世界樹の館内セキュリティはそれぞれのサーバ内にはなく、館内セキュリティ用のサブサーバに集約している。それぞれ多少の差異はあれども基本的な構造は同じなので、イルミンスールの内部を熟知しているピーターには慣れた作業。
 健とタイロンが歩いている間にピーターがセキュリティを書き換え、防犯カメラの映像も欺瞞していく。
 その甲斐あって、時折ToKの社員とすれ違うが怪しまれることもなく、三人は簡単に奥へと進んでいき、サーバルームの前に到達した。
 セキュリティの観念と思わぬ侵入者対策としてサーバルームは電子ロックではなく物理鍵で施錠されていた。
 一応はハッキングによるダイレクトアタックを警戒しているのか、と思いつつも健は五年前に発生した世界規模の重大インシデント、「暗闇の悪夢ブラックアウト・ナイトメア」を思い出した。
 あの頃は世界樹もユグドラシルサーバがメインで稼働しており、イルミンスールがサービス開始して間もないころだった。ライフラインをはじめとする多くのインフラの管理がユグドラシルサーバに集約していたその時に「ブラックアウト・ナイトメア」は発生した。
 誰もが予期していなかったユグドラシルサーバのサーバダウン。
 ユグドラシルサーバが落ちたことで世界は大混乱に陥った。経済も医療もライフラインも全て停止し、数時間後には少しずつ復旧したものの混乱が回復するまで数か月を要した記憶が健にはある。
 その「ブラックアウト・ナイトメア」の原因が一匹のトラ猫だった。
 うっかりユグドラシルサーバに迷い込んだ猫がサーバルームにまで到達し、ケーブルにダメージを与えたのがきっかけでサーバダウンした、というのが「ブラックアウト・ナイトメア」の真相で、その時に侵入した猫はユグドラシルサーバの職員に保護され、「ナイトメア」と名づけられて飼われることになった、という話は有名である。
 その一件から全ての世界樹は猫対策に余念がない。自動ドアは廃止、昔ながらの手動式のドアが設置され、猫が開けられないようにドアノブは握り玉式、ドア自体も防火も兼ねてかなり重いものになっている。それと同時に、ハッキングによるロック解除対策として施錠も電子ロックではなく物理鍵方式となっている。
「任せろ」
 鍵穴を見てふむ、と唸った健を押しのけ、タイロンがドアの前に立つ。
 ポーチからキーピックを取り出し、タイロンは鍵穴にピックを差し込んだ。
「開けられるのか?」
 タイロンの手元を覗き込みながら健が尋ねる。
「マグネットタンブラーならお手上げだったが、ディンプルシリンダーだなこいつ。少し時間がかかるが開けられる」
 器用にピックを動かしながらタイロンが説明すると、健が「ほへー」と声を上げる。
「三分以内に解除しろよ。流石にそれ以上ここに留まっていると怪しまれる」
 ワゴンの中からピーターの声も響き、タイロンは「大丈夫だ」と宣言した。
「開けにくい、とはいえ対応したピックもあるし何度も開けたことがあるから難易度はそこまで高くない」
 タイロンがそんなことを言っているうちにカチリと音がして開錠され、ドアが重々しく開く。
 周りを見て誰もいない、そして防犯カメラもピーターが押さえていることを確認し、健とタイロンがワゴンを押してサーバルームに侵入する。
ドアを閉め、タイロンがワゴンの蓋を開けると被せられたタオルの下からピーターがぬっと顔を出した。
「マジでToKのセキュリティなんなん? ガバすぎだろ」
 タイロンの手を借りながらいそいそとワゴンから出るピーター。
「っても、イルミンスールのセキュリティも似たようなもんだからな、これはパッチ申請出しといた方がいいな……」
「こんな時でも職場の心配かよ……」
 苦笑しながら健がケーブルを取り出し自分のオーグギアに接続する。
「オレはお前のようなプータローとは違って企業勤めなんだ。職場のメリットになることなら上申するよ」
 ピーターもケーブルを取り出し、オーグギアに接続する。
「うわ、真面目なサラリーマンだ」
「真面目だったらライバル企業の世界樹をダイレクトアタックなんかしねえよ」
 ピーターが反対側のケーブルの端子を手に、サーバの集約端末に歩み寄る。
「ガウェイン、お前は世界樹のサーバルームに入るのは初めてだろ。一生に一度の経験だからしっかり味わっとけ。接続はこのポート、このポートを使うと俯瞰バードビューモードは使えず、VRビューに切り替わる。バードビューの方が比較的安全に離脱できるからそれの対策だな」
「詳しいな」
「イルミンスールに入社した際に一度確認してんだよ。自分が守るサーバが物理的にどうなているかくらい把握しておかないとダイレクトアタックの時に対応できんからな」
 そういうもんか、と健も端子を手に集約端末を見る。
「……世界樹ToKのダイレクトアタックか……」
 そう健が呟き、武者震いする。
 流石の健も世界樹のハッキングは初めてだ。しかも、失敗すれば「Team SERPENT」が消滅する可能性もある。
 自分が逮捕されるのは別にどうでもよかったが、タイロンやピーターに迷惑をかけるかもしれない、と思うと今更ながらに震えが止まらない。
 だが、もう一度匠海と和美に会うと決めた。二人に会って、それから「Project REGION」をきちんと知って、よくないものなら止めると決めた。
 匠海と和美の魂を汚されたくない。これ以上Lemon社の思い通りにはさせたくない。
 自分のわがままを、「Team SERPENT」のために使いたい。
 ふう、と健が一つ息を吐く。
「怖気付いたか?」
 ピーターの言葉に、首を振って否定する。
「んなわけねえよ。俺の一世一代の大舞台、派手にやってやるよ」
「だから知られたら終わりなんだが」
「そりゃそうだ」
 そんなことを言いながら健とピーターは顔を見合わせる。
「じゃ、行きますか」
「しくじるなよ、ガウェイン」
 あくまでもオレはサポートだからな、というピーターの言葉に一つ頷き、そして二人はポートにケーブルを接続した。

 

To Be Continued…

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「世界樹の妖精-Serpent of ToK- 第5章」のあとがきを
以下で楽しむ(有料)ことができます。
OFUSE  クロスフォリオ

 


 

 AWsの世界の物語は全て様々な分岐によって分かれた別世界か、全く同じ世界、つまり薄く繋がっています。
 もしAWsの世界に興味を持っていただけたなら、他の作品にも触れてみてください。そうすることでこの作品への理解もより深まるかもしれません。
 ここではこの作品を読んだあなたにお勧めの作品を紹介しておきます。

 

   世界樹の妖精-Fairy of Yggdrasill-
 アメリカに4本建立されたメガサーバ「世界樹」の最初の1本、「ユグドラシル」サーバの物語。
 今作では事故死しているらしい匠海が主人公で、ユグドラシルサーバで働いています。
 謎のAI「妖精」と出会いますが、その妖精とは一体。

 

   光舞う地の聖夜に駆けて
 ガウェイン、ルキウス、タイロンが解決したという「ランバージャック・クリスマス」。
 三人が関わった始まりの事件……の、少し違う軸で描かれた物語です。

 

 そして、これ以外にもこの作品と繋がりを持つ作品はあります。
 是非あなたの手で、AWsの世界を旅してみてください。

 


 

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