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光舞う地の聖夜に駆けて 第3章

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前回のあらすじ(クリックタップで展開)

 クリスマス休暇を利用しフェアバンクスにある兄夫婦の家に遊びに来ていたピーターは土産話のネタを探すためにアラスカの地域深層ローカルディープに潜り込んだところ、テロ計画のページを発見してしまう。
 そこでテロがアメリカ本土にある四本の「世界樹」を弾道ミサイルで攻撃するものであると知り、それを阻止するためにトラックの妨害を始めたところ同じくトラックを妨害しようとしていた匠海と遭遇、交戦することになる。
 匠海のリソース不足で辛勝したものの、トラックを見失った二人はリアルで合流、情報交換を行い、次の行動のためにテロリストの決起集会会場へ向かうことにする。
 決起集会会場はもぬけの殻だったものの匠海が残されたデータを復元、しかし謎の男の襲撃に交戦を余儀なくされる。
 一時は男の銃を撃ち落としたものの、相手は四丁拳銃の使い手で匠海とピーターは窮地に陥ってしまう。
 しかし、男はテロリストではなく、一人の逃亡犯を追うバウンティハンターだった。

 

逃亡犯ベイルジャンパーを追ってアラスカ入りしたタイロンは調査の最中にテロリストと交戦する。

 

テロリストは連邦フィディラーツィアの生物兵器「ニェジット」をも使用していた。

 

テロリストに吐かせた決起集会の場所に赴くタイロン。そこでタイロンは二人組の怪しげな男を発見、交戦する。

 

 
 

 

「な――」
 相手の銃はスマートガンだと思い込んでいたが、違うのか。
 その驚きが一瞬の隙を生み、左手の銃ももう一人の射撃によって弾き飛ばされる。
 スマートガンは連動しているオーグギア所持者の視界から照準を合わせる。
 そのため、相手を目視してからロックオンするまでに僅かなタイムラグが生じる。
 そのタイムラグがほとんど発生せず、タイロンよりも先に二人は発砲していた。
 もしかすると通常の視線誘導によるロックオンではなく、オーグギアの短波通信拡張での予測ロックオンかもしれない、と思ってからタイロンは違うな、と考える。
 一人はそうかもしれない。だが、先に撃った方――もう一人を茶化していた方は明らかにロックオンを確認する前に発砲していた。
 余程自分のオーグギアとスマートガンを信用していないとできない芸当。
 そこへもって、タイロンの銃を正確に弾き飛ばす精密射撃。
 一見、素人の二人がここまで正確に銃のみを撃つとは恐らく追尾性能あり。
 先行モデルの最新型かとタイロンは唸った。
 最新型が出るという情報は既に仕入れている。それがGLFN四社に先行販売として優先的に卸されていることも。
 この二人は、GLFNの関係者なのか、と一連の思考を元にタイロンは判断した。
 彼の視界の先で、茶化していた方が右手の銃でこちらを狙ったまま左手を走らせている。
 ――ハッキングか!
 オーグギアをはじめとするコンピュータにあまり強くないタイロンでも分かる。
 何をするかまでは分からないが、相手はオーグギアをハッキングし、妨害する気だ。
 させるか、とタイロンは動いた。
 反対側でもう一人が銃を向けたままこちらに向かってくるがそれよりもハッキングしている方が脅威である。
 腰に手を回し、このような事態になった時のためのもう二丁の銃を抜く。
 抜きざまに、それぞれ一発ずつ発砲。
 二人の手からスマートガンが弾け飛ぶ。
 即座にタイロンは声を上げた。
「モードチェンジ、非殺傷スタンモードスタンバイ」
 自分から見て右側、ハッキングを行っている男の方が危険だ。
 ハッキングが完了するより早く、無力化しなくてはいけない。
 それには火薬実弾ガンパウダーモードは不適切、下手をすれば殺してしまう。
 タイロンの銃のモードが切り替わり、キャパシタに電流がチャージされる。
 チャージが完了すると同時に、タイロンは両手の引鉄を引いた。
 二人に向けてレーザーが伸びる。
 直後、導電性LIPCを電撃が駆け抜け、二人に直撃する。
 筋肉が無理やり収縮する激痛に声を上げることもままならず、二人はその場に倒れ伏した。
 視界に異常がないことを考えると、どうやらハッキングが完了する前に無力化できたらしい。
「モードチェンジ、ガンパウダーモードスタンバイ」
 二人が倒れたことを確認し、タイロンは銃を再び実弾のモードに切り替える。
 容赦はしない。
 電撃によって暫くは身動きできないだろうが、何かおかしな真似をすれば即座に撃つ、その意思表示が実弾へのモードチェンジだった。
 それでも、ハッキングしようとしていた方は体を起こそうと硬直した腕に力を入れようとしている。
 ――なかなか骨のある奴だ。
 だが、それまでだ。
 たとえGLFNの関係者であったとしても、犯罪に手を染めているなら容赦はしない。
 そう思いながら、タイロンは口を開いた。
「……で、おたくらの話を聞かせてもらおうか。GLFNの飼い犬さん」
「なんで、それを」
 タイロンの言葉に、ハッキングしようとしていた方が声を上げる。
「簡単なことだよ。おたくらが使ってるそのスマートガンは最新だが先行モデル。ほとんどノータイム、視線誘導なしでのロックオンに自動追尾までされたら分かる奴には分かるんだよ。ちなみに、そいつは現時点でGLFNにしか卸されていない。それを持っているんだから当然、GLFNの人間と判断できる」
 ここまでの推測は探偵であるなら誰でもできる。
 だが、何故行動したかホワイダニットは今回予想がつかない。
 そう思い、問い詰めてみるものの相手は口を閉ざし、何も言おうとしない。
 そのため、もう一人に話を聞くことにする。
 ハッキングしようとしていた方よりは幾分若く見えるもう一人に、声をかける。
「坊やとしてはどうなんだ?」
「誰が、テロリストなんかに」
 苦し気に呻きながら、回答を拒否してくる。
 しかし。
「テロリスト? どういうことだ?」
 相手のその言葉に、タイロンは首を傾げた。
 もしかして、と考える。
 もしかして、この二人は俺をテロリストだと思い込んでいるのか、と。
「お前……テロリストじゃないのか……?」
 先に口を閉ざした、タイロンに対してハッキングを試みていた方が「嘘だろ」と言わんばかりに声を上げる。
 これは誤解を解いた方がよさそうだ、とタイロンはもう一人に向けた銃を一旦ホルスターに収め、空中に指を走らせ身分証明書を提示した。
「いや、俺はしがない賞金稼ぎバウンティハンターだ。探偵も兼ねてるがな」
 その瞬間、二人の顔が面白いように変化した。
 「どうしてバウンティハンターがこんなところに」と。

 

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