Vanishing Point 第2章
分冊版インデックス
惑星「アカシア」桜花国
そこで暗殺者として裏社会で生きる「グリム・リーパー」の3人はとある依頼を受けるもののその情報はターゲットに抜けており、Rain(
その罠を辰弥と鏡介の機転で乗り切るものの、辰弥が倒れてしまう。
そんな依頼を達成した後日、辰弥は買い出しの帰りに行き倒れている一人の少女を発見する。
辰弥に抱き起された少女は彼を見て「パパ」と呼び、意識を失うのだった……
辰弥が拾った少女は衰弱していたため、闇医者である
その渚に対して命知らずの行動を取る
少女の診察を終えた
その後で
少女が辰弥と酷似した特徴を持っていることから彼との親子関係を疑う渚だったが、辰弥はそれを頑なに否定する。
少女が目を覚ましたことで家族のことなどを訊く辰弥だったが、少女は辰弥のことを「パパ」と呼び続ける。
身元も分からないことからしばらく「グリム・リーパー」で預かることとなり、辰弥は少女に
辰弥が雪啼を保護して数日が経過する。
最初は日翔や鏡介に対して怯えたような様子を見せていた雪啼であったが、二人とも無害だと認識したらしくすぐに落ち着き、普段は辰弥にべったりなものの、時々は一緒に遊ぶようになっていた。
とはいえ渚の言う通り紫外線には弱く、病院から抜け出してきていることを考えると下手に外で遊ぶことはできない。
そんな雪啼が気になるのだろうか、今までは余程のことがなければ往診することがなかった渚が足しげく来訪しては「せっちゃんを診察する」と言いつつ雪啼に様々な衣服を着せ替えて楽しんでいる。
また、日翔は元々のお人好しな性格からなんだかんだと五歳の少女が喜ぶようなものを見つけてきてはちょっかいをかけている。
「あきと、じゃま」
そんなことを言われて少々凹むこともある日翔だったがそれでもめげず、今日も雪啼にぬいぐるみ片手に突撃している。
一刻前に渚も来訪したため、今の雪啼の衣装はフリフリレースのいわゆる「ロリータ服」と呼ばれるものである。白髪、色白の雪啼がそれを身に纏うと外国の人形のような雰囲気すら漂ってくる。
そんな雪啼にちょっかいをかける日翔だが、例によって彼女に「じゃま」と言われていた。
「めげないねえ……」
そんなことを言いながらテーブルにオムライスを運ぶのは辰弥。
「二人とも、ご飯できたよ」
「パパ!」
辰弥の言葉に頭を上げる雪啼。
その頭がぬいぐるみを手に彼女を頭上から見下ろしていた日翔の顎に直撃する。
「「~~~~!!!!」」
雪啼が頭を、日翔が顎を押さえて悶絶する。
「……何やってんの……」
悶絶する二人を見て辰弥がぼやく。
「……でも、これが『家族』ってものなのかな」
一時的にとはいえ図らずしも父親となることになった辰弥。
過ごしてきたこの数日間はとても穏やかで、こんな日が続いてもいいのかな、とさえ思えてしまう。
そう思ってから、いや、違うと辰弥は首を振る。
自分がこのような「人間らしい」生活を送っていいわけがない、と。
血なまぐさい現場に身を置いてこその自分だろうに、何を思っているんだと彼は内心自分を叱咤する。
それでも。せめて今このひと時だけは。
視界の先で、日翔と雪啼が漸く痛みから解放されたのか立ち上がる。
「辰弥ー、腹減ったー」
「せつな、パパのオムライス、からくないからすき」
そんなことを言いながら席に着く二人。
辛いオムライス? と首をかしげながら辰弥も席に着く。
「じゃ、食べようか」
おう、と頷きつつも日翔がCCTをテーブルに置き、ニュース番組を見ようとホログラムディスプレイを展開する。
「ちょっと日翔、行儀悪い」
辰弥が注意するが日翔はそれに構わずニュース映像を流す。
《――本日、
「日翔!」
テーブルに手をついて立ち上がり、辰弥が強めの声を上げる。
「雪啼の前だよ、そんなニュースすぐ消して」
「あ、あぁ、そうだな」
ニュース映像を茫然と眺めていた日翔が慌てて映像を閉じる。
だが、ニュースで流された報道ヘリからの映像が気になり、つい言葉を続けてしまう。
「……うちの近所だぞ」
「え、」
座り直そうとした辰弥の動きが止まる。
そういえば、先ほど買い出しに出かけた時も普段ならあまり見ない警らの車両や巡回するPMCを多めに見かけたな、と思い出す。
何かあったのだろうとは思っていたが、まさかニュースで大々的に報道されるような事件が起こっていたとは。
「……パパ?」
辰弥の隣に座っていた雪啼が彼を見上げ、首をかしげる。
それを見て辰弥は思考を切り替え、大丈夫、と答えた。
大丈夫だ、普段は暗殺者として動いている身ではあるが今回の事件には何も関りはない、そう自分に言い聞かせる。
聞き込みくらいは来るだろうがアライアンスの取り決め通りの対応で躱せるはずだ、と自分を落ち着かせる。
「ごめんな、ご飯、食べよう」
そう言った辰弥だったが、そのタイミングでGNSに着信が入る。
む、と二人に先に食べるよう指示を出して応答する辰弥。
発信者は茜だった。
《仕事よ、鎖神君》
開口一番、彼女はそう言った。
to be continued……
おまけ
ばにしんぐ☆ぽいんと 第2章 「おとな☆ぽいんと」
「Vanishing Point 第2章」のあとがきを
以下で楽しむ(有料)ことができます。
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