Vanishing Point Re: Birth 第2章
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日翔の
もう辞めた方がいいと説得する渚だが、日翔はそれでも辞めたくない、と言い張る。
そんな「グリム・リーパー」に武陽都のアライアンスは補充要員を送ると言う。
補充要員として寄こされたのは
何故か千歳が気になる
顔合わせののち、試験的に依頼を受ける「グリム・リーパー」
そこで千歳は実力を遺憾なく発揮し、チームメンバーとして受け入れることが決定する。
そんな折、辰弥たちの目にALS治療薬開発成功のニュースが飛び込んできた。
ALS治療薬開発のニュースを知った辰弥と鏡介は治療薬を手に入れるために日翔には秘密裏に動くことを決意する。
鏡介が治験の枠を確保するために動き出す。しかし、鏡介の伝手ではそれは叶わず、独占販売権入手に一番近い「サイバボーン・テクノロジー」か「
「サイバボーン・テクノロジー」か「榎田製薬」か。
辰弥と鏡介が話し合った結果、より可能性が高そうな「サイバボーン・テクノロジー」に取り入ることを決意する。
「サイバボーン・テクノロジー」CEOの秘書、
治験の枠の確保のために依頼を受けたいという鏡介に、真奈美は話をしてみる、と答える。
「サイバボーン・テクノロジー」から「グリム・リーパー」指定で依頼が入る。
その内容は「生命遺伝子研究所」の研究主任の暗殺であった。
暗殺当日、研究所に忍び込んだ三人は依頼を遂行する。
しかし、千歳は辰弥に「どうして
建屋を出た瞬間、「カグラ・コントラクター」の音速輸送機に捕捉される三人。
苦戦はしたものの、辰弥が
その一方で、ロケット弾が給水塔の根本に迫る。
「――っ!」
武装兵の最後の一人を沈めた千歳が息を吐く暇もなく放たれたロケット弾に気づき、片方のデザートホークのマガジンをリリース、もう片手のデザートホークをホルスターに戻し、マガジンリリースしたデザートホークに新しいマガジンを入れながらデザートホークをそちらに向ける。
ほとんど狙いを定めることもできなかったがほんの一瞬の判断でロケット弾の動きを割り出し、引鉄を引く。
次の瞬間、銃弾により、ロケット弾が弾かれ、空中へ軌道を変えて、飛び去っていく。
そのまま空中のロケット弾にホルスターに収めていたもう片方のデザートホークの弾丸が突き刺さり、爆発した。
十分に距離を取っての爆発だったが、僅かな爆風と破片が二人に迫る。
「――ぐっ」
咄嗟に辰弥を庇った日翔が低く呻く。
ロケット弾そのものの直撃は受けていないが爆風だけはしっかり二人に届いている。
「Gene!」
辰弥が即座にトランスを解除、日翔に声をかける。
「大丈夫!?!?」
《大丈夫だ、いてて……》
怪我自体はないが爆風に少し吹き飛ばされて打撲くらいはある。
だが、動きには支障がないので日翔も辰弥もすぐに身体を起こした。
「大丈夫ですか?」
敵はすべて排除できたため、千歳が二人に駆け寄ってくる。
「うん、大丈夫」
そう辰弥が答えるが、その顔面は蒼白で立っているのもやっとの状態。
「何やったんですか。っていうか、どうしてティルトジェット機が墜ちたんですか」
何が起こったのか飲み込めず、千歳が辰弥に詰め寄る。
「……いや、なんかMTHELが落ちてたからそれ使った」
「落ちてたって……」
そんな軍用のものが落ちてるものなんですか、と半信半疑の千歳。
《……おい、疑われてるぞ》
どうすんだよこれ、と日翔が辰弥に訊ねる。
「落ちてた。誰が何と言おうとも落ちてた」
「……はぁ」
納得いかない顔で、千歳がため息を吐く。
「……何か信じられないんですが、それのおかげで助かった、と」
「うん」
即答する辰弥に、千歳が再びため息を吐く。
「……分かりました。そういうことにしておきます」
《そうしておいてくれると助かる》
日翔もそう言い、それから千歳を見た。
《そう言うお前も無茶するよなあ……》
まさか一人で飛び出すとは思わなかった、と日翔がぼやく。
「だって、降りてきた人たちを排除しないと殺されるのはこちらですから」
それはそうだ、と日翔は頷いた。
そんな日翔に、千歳が冷たい目を向ける。
「……そんなすぐ動けない身体で、まだ『仕事』、するんですか」
千歳の冷たい声が日翔に投げかけられる。
「Snow、それは――」
言いすぎ、という言葉を辰弥が呑み込む。
分かっている、日翔はこれ以上現場に立たせるわけにはいかないのだと。
それでも、辰弥は日翔に寄り添っていたかった。
日翔が現場に立ちたいというのであれば、彼が動ける限りは側にいたい。
しかし、暗殺者という立場である以上そんな甘いことは言っていられない。
千歳の言いたいことも分かるのだ。それでも、日翔の希望には添いたい。
千歳が辰弥を見る。
「BBさんも甘すぎます。どうしてそこまでGeneさんを」
「……君には関係ないよ」
ぽつり、と辰弥が呟く。
「俺はGeneが現場に立ちたいと言うならそれに応えたい。それにさっきも話したよね、この話題。何度言っても俺は同じ考えだよ。本人が降りると言わない限り、現場に立たせる」
「……そんな下らない理由で私は死にたくありません」
「だったら『グリム・リーパー』を抜ければ?」
千歳に劣らず冷たい声で辰弥が言う。
沈黙が辺りを満たす。
《BB……》
たまらず日翔が声をかけるが二人はそれを無視する。
「本気で言ってます? 私が抜けるなら『グリム・リーパー』はGeneさんの借金を即時一括返済という条件がありますよね?」
「……分かってる。だから君に抜けろという権利は俺たちにはない。だけど、いや、だから俺はGeneを現場に立たせる」
はっきりと、辰弥は言い切った。
「Gene本人が『自分で借金を返済する』と言い続ける限り、俺はGeneを現場に立たせる。君は不本意かもしれないけど『グリム・リーパー』のリーダーはRainだ。どうしてもGeneを外したいならRainを説得して」
辰弥がそこまで言うと、千歳は小さくため息を吐いた。
「……あの人、私の言うこと聞く人じゃないですよね」
「まぁ、それはそう」
鏡介のことはそれなりに理解している辰弥、ため息交じりにそう答える。
そんな辰弥を見て、千歳がふっと笑った。
「冗談ですよ。BBさんがGeneさんをどうしても現場に立たせたいというのは分かっています。ですが……これだけは分かっててください。Geneさんも、もう限界に近いんですよ」
「それは……」
分かっている、と辰弥が俯く。
「Geneさんが現場に立てる間はそれに付き合います。BBさんがGeneさんを守るというのなら、私はBBさんを守りますよ」
「Snow……」
微笑む千歳に辰弥が軽く目眩を覚える。
千歳の考えが分からない。同時に千歳の手を煩わせたくない、と思う。
どうしてここまで気にしてしまうのか、そんなことを考えていると千歳はぐるりと周りを見回した。
「とにかく、長居は無用です。早く帰りましょう」
「……うん」
辰弥が頷き、日翔を見る。
日翔も小さく頷き、三人は「生命遺伝子研究所」の敷地から離脱した。
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