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光舞う地の聖夜に駆けて 第1章

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もう一人いる
「なんだって?!?!
 どういうことだ、と言いかけ、それから皇帝はなるほどと呟く。
「相手の妨害に見せかけてトラックを誘導した奴がいるってことか」
「ああ、テロリストの中にかなりの腕の魔術師がいる」
 マジか、と皇帝が額に手を当てる。
 それから、思い出したように話を戻す。
「今はそいつのことは置いておこう。お前は奴らの狙いを知ってるのか?」
 ああ、と匠海は頷いた。
 それから先ほど施設からダウンロードした命令書と画像ファイルになっている書類を開く。
「あのトラックの積み荷だ。中身は、核弾頭」
「……は?!?!
 ワンテンポ遅れて皇帝が声を上げる。
「核、弾頭? 核って、あのニュークリアウェポン核兵器の、核?!?!
 再び頷く匠海。
「お前が突き止めたテロ計画に使われる弾道ミサイルにこの核弾頭が搭載されてみろ、被害は世界樹だけじゃすまないぞ」
 なんてこったと呟く皇帝。
「……トラック、見失ったロストしたぞ」
 このままでは核ミサイルが発射されてしまう。
 どうする、と匠海は考え、
「そういえば募集要項を見たと言ってたな。日程とかは分かるのか?」
「ああ、十二月二十四日、アラスカ標準時AKST十六時に発射だ」
 そう言われて時計を見る。
 今の時刻は十二月二十四日午前四時。十二時間しかない。
 アラームをその時間にセット、匠海はため息を吐いた。
「ちなみに、その募集要項どこで見たんだ? 『第二層』か?」
 自分もその募集要項を確認したい、そう思っての発言だったが、皇帝は違うと首を振る。
「アラスカの地域深層ローカルディープだ」
 全世界に量子通信のネットワークが構築された今ではあるが、一般的なネットワークの他にアンダーグラウンドな『第二層』が存在する。他にも特定の地域の人間のみアクセスできるローカルネットワークも各地に存在し、その中でも『第二層』に相当する特殊な領域は『地域深層ローカルディープ』と呼ばれ、その地域での犯罪計画のやり取りやディープなご当地情報がやり取りされている。
 そして皇帝は「アラスカのローカルディープ」と言った。
 先ほど信号機を巡って争ったことを考えるとどうやら皇帝も匠海と同じことを考え、行動していたらしい。それなら。
「アラスカ……いや、フェアバンクスにいるようだし一度会えないか? 俺もフェアバンクスにいるからリアルで顔を合わせて情報交換したい」
 テロリストに相当な腕前の魔術師がいるならどこで聞かれているか分からない。
 今自分たちがいる場所は皇帝が防壁を展開しているため盗聴される危険性はないが如何せん匠海のオーグギアの処理能力が限界を迎えている、いつ落ちてもおかしくない。
 分かった、と皇帝が承諾する。
「よく分かったなと言いたいがお前もオレと同じことをしようとしていたようだしな。分かった、どこで待ち合わせる?」
「ウエストマーク フェアバンクス ホテルに泊まってるからそこに来てくれ」
「オーケー、ウエストマークのロビーで落ち合おう」
 そう言って皇帝は防壁を解除する。
 助かる、それじゃ後で、と匠海は皇帝のオーグギアから離脱した。

 

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