Vanishing Point Re: Birth 第1章
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「グリム・リーパー」に補充要員が派遣されるという話が
話に加わった日翔の体調を気遣う辰弥。
しかし、GNSに不慣れな日翔は
補充要員こと
千歳の一挙一動に、辰弥は心をかき乱される。
《全員揃ったか? 打ち合わせするぞ》
辰弥の聴覚に鏡介の言葉が届く。
鏡介が開いた秘匿回線のグループ通話のメンバーが自分を含めて四人揃っていることを確認し、辰弥も頷く。
(いいよ。始めて)
今までも打ち合わせは鏡介が主体で行われていたが今は「グリム・リーパー」のリーダーも鏡介である。下手に口出しする必要もない、と思い鏡介を待つ。
《今回の依頼は肩慣らしみたいなものとは言われているが
《上町でもよくあったやつだな、対象だけ殺って後は深掘りしないって》
日翔の言葉に鏡介がああ、と頷く。
《今回の密売現場には密売グループの中でも比較的重要ポジにいる奴が出張ってくるという情報が入っている。暗殺ターゲットだな。で、取引物品も強奪して指定場所に輸送しろとのことらしい》
(初手でなかなかハードな仕事もってくるね……)
思わず辰弥がぼやく。
上町府にいた頃も似たような依頼はしばしばあった。ただし、大抵は「ターゲットを暗殺する」か「別チームがターゲットを暗殺するから物品の輸送を行え」というどちらか一方のもの。いきなりその両方をやれとは穏やかな話ではない。
よほど信用されていないのか、よそ者は排除したいという封鎖的な方針のアライアンスなのか、そんなことを考えながら「それでも受けるしかない」と考える。
アライアンスの依頼はあまりにも理不尽だと思えば拒絶することもできる。しかし、今回ばかりは「内容が危険すぎる」と拒絶をすればアライアンスの「グリム・リーパー」に対する印象は下がるし「実力はそんなものか」と思われてしまう。
それを避けるためにもこの依頼は受けざるを得なかった。
鏡介もそれは思っていたようで、ため息交じりに「できるか?」と訊いてくる。
(できるもなにも受けるしかないでしょこれ)
《それはそうだな。日翔、お前も行けるか?》
《問題ないぜ。話、進めてくれ》
日翔も頷き、千歳も「大丈夫です」と返してくる。
《それなら、話を進める。取引自体は
鏡介がデータチップの資料を転送しながら確認していく。
《ただし、輸送ルートに関しては俺たちはまだ土地勘がない。一応交通状況や衛星写真からルートは割り出すが場合によってはお前らの判断に任せることになるかもしれない》
《大丈夫ですよ、この辺りは庭なのでナビはできます》
懸念事項を口にした鏡介に、千歳がすかさず声を上げる。
《分かった、それならナビは秋葉原に任せる》
一応事前にルートを作っておきたいから後で個チャに来てくれ、という鏡介の指示に秋葉原が頷く。
その会話を聞きながら、辰弥は「案外使えるかもしれない」とふと思った。
一応はアライアンスで、しかもソロで活動していた暗殺者である。普段の依頼がこのレベルでハードであるならこれくらいできなければこの社会では生きていけない。
そう考えると千歳の実力は本物だろう。
視界に映る千歳の顔をまじまじと見る。
整った顔立ち。一般的には「可愛い」部類に入るのだろう。
顔合わせの時は少々取り乱してしまったが、今こうやってみると特に胸がざわつくというほどではない。
しかし、鏡介に言われた「一目惚れか?」という言葉を思い出すと妙に意識してしまう。
これが一目惚れということなのか? それともただそう言われて慌てているだけか?
それは分からなかったが、この秋葉原 千歳という女性に対して全くの無関心でないということは事実だった。
鏡介の言う通り、全くの無関心であれば資料を見た時点で「で、使えるの?」とでも発言していただろう。
千歳のどこに興味を持ったのかは分からない。
もしかしたら興味というよりも新たなメンバーにほんの少しでも期待しているのかもしれない。
それは分からなかったが、今こうやって千歳を見ていると考えることは色々ある。
(……死ななきゃいいけど)
ふと、思考を回線に乗せてしまう。
《? どうした辰弥》
細かいことを打ち合わせしていた鏡介が辰弥に訊く。
(え? あ、なんでもない)
思考の切り替えができていなかったことで自分を内心で叱責し、辰弥は首を振った。
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