ワールドセクション-ニアリアル現代神秘

 

 

   ニアリアル現代神秘とは
   神秘の存在
   霊害
   対霊害組織/討魔師
   神秘の作用
   魔術/魔術師

 

 

ニアリアル現代神秘とは 

  

 

 ニアリアルとは現実に近いという意味だ。英語の意味的にはクロスの方が正確だが、ニアリアルの語感の良さからこちらを使っている。
 基本的には現実世界とほぼ同様の世界が広がっていると考えて良い。
 このセクションではニアリアルのさらに現代における「神秘」について説明する。
 本記述は特に断りのない場合、2010年代を想定している。

 

 可能な限りネタバレにあたる項目は避けて見かけ上の現象について言及するが、その性質上、本項目にはやや原作小説のネタバレが含まれることをご了承下さい

 

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神秘の存在

 

概要

 ニアリアル現代神秘世界観は普通に見る分には我々の生きている世界とそう変わらないように見える。我々の知る通りの国、都市、大地があり、戦争、経済、犯罪がある。その世界で、誰もが昨日は今日に、今日は明日につながっていくものと信じている。科学技術が発展を続け、世界のすべてはやがて解き明かされるだろうと信じられている。
 しかし、この世界には密かに神秘が存在する。殆どの人間は知らないが、この世界観で遊ぶあなたは知っている。

 

 故にこの世界観を扱うにあたって、神秘とは何か、と言う言及は避けて通れない。

 

 とはいえ、正直、神秘への理解は「とりあえず人智の及ばぬ現象を神秘と呼称する」という程度で問題ない。何せ多くの神秘使い達自身がその程度の認識なのだ。
 その上で下記の説明を行う。

 

 神秘と言うものを一言で表すのは難しいが、敢えて説明するなら、「神秘レイヤーによって生じる影」である。
 この世界は物理レイヤーと神秘レイヤーとそれぞれ呼称される二つのレイヤーが重なって存在しており、人々は物理レイヤーのみを認識し、物理レイヤーの上で生活している。
 一方で、神秘レイヤーと呼ばれるレイヤーはその物理レイヤーを影から支えているとされている。
 この神秘レイヤーになんらかの存在が発生し、その影が物理レイヤーに生じたものが「神秘」である。

 

 と難しく説明したが、何度も言うが神秘を知る存在の多くもその正確なところを理解してはいない。全く神秘と関係ない存在を単に「何か人智の及ばぬ不思議な力を使っている」という理由で「神秘」に分類しているケースもある。
 なので、先の説明を難しいと思ったら、「とりあえず人智の及ばぬ現象を神秘と呼称する」とだけ考えておけばいい。

 

神秘レイヤー

 神秘レイヤーについて本当に簡単に触れる。
 神秘レイヤーとは、この世界にもう一つ存在する重なった現実である。
 感覚的な例えとしては、「紫外線や赤外線のような不可視光でだけ構成された世界」と言う例えが適当だろうか。

 

 神秘レイヤーを見かけ上理解するには幽霊を使うと分かりやすい。
 幽霊は半透明な姿をしており、姿を消すことも出来る。物理的な影響を及ぼすこともできるし、消すことも出来る。
 これは幽霊が神秘レイヤーと物理レイヤーに重なって存在しているから起こる現象である。
 まず半透明なのは、もう半分が不可視の世界、神秘レイヤーに存在しているからだ。姿を消すことが出来るのも、自身の体の100%を神秘レイヤーに移動させられるからである。
 物理に影響を及ぼせる時とすり抜ける時があるのも、物理レイヤーに実体を持っている時と、いない時があるからだ。

 

 以上のように、神秘レイヤーとは不可視の領域であると理解しておけば良い。

 

神秘不拡散の原則

 神秘には後述するロアが分かりやすいが、認識されればされるほどその通りになっていくと言う性質がある。
 つまり、何か神秘がそこにあったとき周りの人達がそれを「そういうものだ」と認識し、続けると、事実に関わらず「そういうもの」に変質してしまう。

 

 そして、科学が進んだこの現代社会においては、神秘と言うものは多くの場合「何かしらのトリック」や「すごい科学技術」と認識されてしまう。
 このため、神秘が不用意に人目に触れると、却って神秘は失われてしまう。
 
 ゆえに、多くの神秘使いは、神秘使いの前でのみ神秘を行使する。
 神秘が人の目につかないようにして、神秘がこれ以上衰退するのを避けるためである。これを「神秘不拡散の原則」と呼ぶ。

 

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霊害

 

概要

 ニアリアル神秘における最大の特徴。それが「霊害」だ。英語では「Ghost Hazard」となる。
 霊害とは、幽霊やゾンビ、魔術師といった神秘によって引き起こされる人的、物的被害の総称であり、その被害を引き起こす神秘そのものの総称でもある。

 

 概ね、霊害=害のある神秘と考えておけば良い。「害のある」の定義は勢力によりまちまちである。単に犯罪を犯した神秘のことを言う場合もあれば、あらゆる神秘は全て霊害である、と言う場合もある。
 共通しているのは「「神秘不拡散の原則」を破るものは霊害である」と言う点だろう。
 この辺りの詳細については後述の「対霊害組織/討魔師」の項目で語る。

 

 ここからは霊害とされる神秘達の代表例について触れる。

 

亡霊

 霊害の代表格of代表格と言えば、その名前にもなっている亡霊種である。
 亡霊はその人の無念などのマイナスの感情が死後にその場に残留し、動き出した存在である。
 ごくごく稀な存在としてプラスの感情が残留して生まれた守護霊や人格を持った霊(のうち善良な者)と言った人間に無害な霊も存在するが、それは本当に稀な存在で、基本的には人間に害をなすのが亡霊である。
 このため、多くの場合、亡霊は亡霊であると言うだけで討滅の対象となる。

 

 亡霊は神秘レイヤーと物理レイヤーの二つのレイヤーに対し、自在に移動、変化することが出来、最もスタンダードであるとともに、最も厄介な相手の一種でもある。
 主な攻撃手段はポルターガイストによる物理攻撃と霊力(魔力)を使った非実体の武器による神秘攻撃で、攻撃面でも神秘物理両方の攻撃を使うため、油断ならない。

 

 亡霊は地縛霊と背後霊の二種類に大きく分けられ、地縛霊は土地、背後霊は人に縛られて、その土地や人からは離れられないのが常である。
 このため、可能であれば相手の行動範囲外から攻撃することが望ましいとされている。

 

上位亡霊

 先に触れた人格を持った霊の事を上位亡霊と分けて呼称することもある。良い人格の持ち主であれば良いが、悪しき人格を持った上位亡霊は極めて厄介な相手である。
 人格を持つ分、策を弄してくることが多く、先に触れた地縛霊や背後霊と違い、土地や人に縛られないため、対策も取りにくい。

 

 攻撃手段自体は通常の亡霊と大差ないが、ポルターガイストにしても魔力攻撃にしても狙いがより精密であることが多い

 

 上位亡霊は極めて珍しく滅多に存在しない。

 

霊団

 多くの亡霊が一塊となった存在。
 その強力な霊力(魔力)による攻撃手段はもちろん脅威である。
 が、なにより最大の脅威は「周囲の人間の精神に悪影響を与えること」である。
 霊団の存在する場所では自殺者が大量に発生したり、極端に治安が悪化したりする。

 

 このため、早期発見し討滅しなければ民間人への被害が計り知れない。

 人の精神を侵す性質から「無形悪魔」と呼ばれることもあるが、後述の「悪魔」と紛らわしいのでごく一部の組織以外は基本的に使わない。

 

 稀に上位亡霊を核とする霊団が存在する。上位亡霊自体が極めて珍しいため、本当に滅多に存在しないが、存在した場合、街一つをその領域にしてしまうほどの恐ろしい能力を持つ。

 

瘴気

 近代以降に出現し始めた新たな怪異、それが瘴気である。
 瘴気は亡霊が龍脈から流れ出るエネルギーにより変質したものであるとされていて、霊団と似て人の精神に悪影響を与える性質を持つ。
 瘴気に侵された人間は白目が紫に染まり、自傷的な行動を取ることが多い。周囲の瘴気を掃討すれば人間も元に戻る。

 

 紫色の霧のような見た目をしており、脅威を感じると実体化し、何かしらの戦闘可能な姿を取る。
 多くの場合ゾンビのような生ける屍の見た目だが、瘴気の勢力次第では巨大な動物や幻想生物の見た目をとることもある。
 一箇所の瘴気からは三〜四体の小型の生物か、一体の大型の生物が出現することが多い。前者の場合、連携を取って攻撃してくるため、注意が必要。

 

 亡霊と違い完全な実体を持つので、対処は亡霊より容易。また出現も龍脈を監視することで予測が出来るため、霊団と違って早期対処も可能。
 ただ、その出現頻度回数が極めて高く、近代以降に霊害と戦う組織は瘴気とのいたちごっこに明け暮れるのが基本となる。

 

動く死体ムービングコープス

 所謂ゾンビなどと呼ばれる怪異である。
 亡霊の中には死体に取り憑く種類がおり、主にその種の亡霊により出現した動く死体をこう呼ぶ。
 墓場は性質上亡霊が発生しやすいエリアであり、土葬文化の土地では墓場の死体が地面から自ら出てくることも珍しくはない。

 

 実体を持つため、亡霊そのものと比べれば対処は比較的容易だが、死の判定は取り憑いている亡霊の「自己の定義」に基づく点が厄介。
 例えば「頭を飛ばされれば死ぬ」動く死体もあれば、「心臓を貫かれれば死ぬ」動く死体もあり、動く死体の個々によりそれがことなるのである。場合によっては機能停止に追い込むまでバラバラにしなければならないため、非常に厄介。

 

ブードゥーの禁忌

 動く死体のうち、人為的に操られている死体を、その代表的な魔術の名前からとってこう呼ぶ。

 

 基本的な特性は動く死体とそう変わらないが、操り主により戦術を駆使したり、連携を取ってきたりする点が厄介。

 

上級悪魔

 魔界と呼ばれる異界から現れ、人間と似た思考を持ち超常能力を駆使し、部下を使役する厄介な相手、それが上級悪魔だ。
 彼らはこの世界をゲーム盤に見立てて陣取りゲームをしている。
 そのための手勢が後述する下級悪魔であり、上級悪魔は普通、自身の本陣に居を構えるのみで、外に出てくることは極めて稀である。

 

 ただし、仮の外殻を纏って前線に現れる事を好む上級悪魔もいる。この場合、外殻を破壊しただけでは、撃退したに過ぎず、撃破には至れない。

 

 多くの上級悪魔は周囲に自身に有利な空間を生成する「隣接魔界」能力を持ち、彼らの本陣はこの隣接魔界であることがほとんど。
 さらに当然、その周囲は下級悪魔にガッチリと守られており、本陣に攻め入るには、複数人、下手をすると軍隊レベルの人数で攻め入る必要性があるとされる。

 

 もう一つ厄介なのは、上級悪魔は「ゲーム」をしていると言う点で、上級悪魔の現れる場所には当然のように対戦相手に当たるもう一体の上級悪魔とその配下達がいる。
 上級悪魔との戦いは往々にして三つ巴の形を取るため、戦局は常に混迷を極める。

 

下級悪魔

 魔力により生成される上級悪魔の手勢、それが下級悪魔だ。上級悪魔により下級悪魔の見た目も千差万別であり、また基本的に複数種類の手勢を持っているか、生成に用いる魔力の量で強さをコントロール出来る。
 ただ、人型や蜘蛛型など、好まれやすい見た目はあるようだ。派閥が同じ上級悪魔同士は同じ下級悪魔を使う事も多い。

 

 下級悪魔の生成には魔力が必要なため、ゲームは基本的に魔力溜まりである龍穴や龍脈結集地の取り合いの形を成す。

 

ロア

 噂話が実体化した存在、それがロアだ。
 近代以降に出没する妖怪や怪談は基本的にこのロアであると考えて良い。
 基本的に噂通りの性質を持ち、噂通りの動きをする。
 このため多くの神秘と戦う者達は、常に噂話などを調査している。

 

※ロア化

 ロアに付随する形で触れておきたいもう一つの脅威、それが「ロア化」だ。
 ロアが何もないところから噂話によって生まれる存在だとしたら、ロア化は何かあるところに噂話によりロアに「なってしまう」現象のことを言う。
 すごく極端なことをいえば、「あの人間は吸血鬼らしい」と言う噂が極端に広まり、誰も否定しなければ、その人間が吸血鬼になる、と言ったような現象を言う。
 通常はその噂を否定するような光景が目撃されることで否定の噂も強まるので問題ないのだが、近年はネット社会の発達により「リアルの姿は見たことないが、ネットで交流はある」と言う現象が多発しており、ここにさらに引きこもりなどによりリアルの関わりが希薄であると、このロア化が起きやすくなることから、引きこもりのネットユーザーや引きこもり気味なバーチャル配信者などがこの危険に晒されているとされている。

 

魔術師

 神秘基盤と呼ばれる神秘レイヤーに刻まれたプログラムのようなものを起動させることで事象を発生させる神秘「魔術」を行使する者達。
 詳細は後述。

 

その他の神秘

 ここで挙げられた例以外にも霊害となりうる神秘は存在する。
 例えば、妖精や鬼、妖怪と言った異種族などである。(あるいは天使や神などもここに含まれるかもしれない)
 ロアの項目で妖怪について触れた通り、彼らは近代以降ほぼ存在しない珍しい存在である(妖精は後述の通りやや例外といえるが)。
 彼らに対しても基本は同じで、「人類に仇なすなら霊害」である。
 霊害でなさそうなら、貴重な存在として保護されるケースもあるかもしれない。

 

神秘根絶派閥

 神秘には様々な恩恵がある。
 我々は日頃理解こそしていないが、例えば神の加護、御仏の加護というのは確かに存在するのである。
 しかし、「そんなものより霊害のリスクが高すぎる」と主張し、「神秘そのものを廃絶すべきだ」と主張する者もいる。
 厄介な事にこの思想は霊害と戦う者達の間でも浸透しており、時には神秘の存在をめぐり、霊害と戦う者達との間で抗争が繰り広げられることすらある。

 

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対霊害組織/討魔師

 

 先に触れた恐るべし霊害達。それらと戦うために組織された国家組織(例外あり)が対霊害組織である。
 そしてそこに所属していたり、フリーランスだったりで活動している霊害と戦う者たちを日本では「討魔師」と呼ぶ。本作は日本語の作品なので基本的に「討魔師」で表記を統一している。

 

 多くの対霊害組織は霊害と戦うための「対霊害兵装」を持っている(というか無ければ戦えない)。

 

 ここからは各国の対霊害組織について触れる。

 

日本

 日本の対霊害事情を説明する上で説明が欠かせないのが、天皇の存在である。
 天皇は神武天皇の直系の末裔にあたり、神武天皇は天照大御神(日本神話の最高神)の五世孫にあたる。
 つまり、天皇は神の末裔にあたり、神の力「神性」を持っているのである。
 日本列島は基本的にこの天皇が展開する結界の中にあり、霊害の発生が大きく抑えられている状態にある。

 

 日本には大きく分けて四種類の対霊害組織が存在する。
 共通するのは対霊害兵装として「日本刀」を用いると言う点だ。
 日本刀を作るのに使われる玉鋼には特殊な性質があり、神秘レイヤーに影響を与えられる他、写しを作れば「神秘プライオリティ」と「伝承効果」(いずれも後述)を引き継ぐ性質を持つ。

 

 また、中島美琴が陰陽術を受け継いだ世界(受け継がない世界もある)では、巫術や陰陽術が少しずつ討魔師の間で広まりつつある。

 

 対霊害組織の最初の一つが「宮内庁霊害対策課」だ。名前の通り宮内庁の部署の一つにあたる。日本の対霊害組織の元締め的存在で、日本の全ての対霊害組織がこの宮内庁霊害対策課とやりとりをして業務をこなしている。
 また、宮内庁霊害対策課の戦闘要員達は神の末裔である天皇陛下の加護により、「神性」と呼ばれる神の力を預かっており、その力を使って戦う。
 ただし、代を追うごとに天皇陛下の神の力は弱まっており、宮内庁霊害対策課の戦闘要員は少数精鋭を余儀なくされている。
 宮内庁霊害対策課は日本刀の他に、付喪神を操ることでも知られる。
 付喪神は結界を張ったり、魔術の弾丸を放ったりと言った、簡易的な魔術を使う使い魔として宮内庁の戦闘員に協力する。

 

 対霊害組織の二つ目が「討魔組」である。これは、日本におけるフリーランスの討魔師達の互助会であり、基本的に宮内庁とのやりとりは討魔組が担っている。
 古い討魔師の家系の多くは、古き時代に妖や鬼と血を交えており、「血の力」と呼ばれる不思議な力を持つ。
 例えば真柄の家なら怪力、宝蔵院の家なら短期未来予知、などである。
 彼らは家系を大事にしており、「<家名>の<名前>」と名乗り、また呼ばれることが多い。
 討魔組は基本的に月夜家という家系が代々代表を勤めている。如月家が存続している世界の場合、2018年に成人した如月アンジェが代表を引き継ぐ事が多い。

 

 三つ目が「警視庁刑事部刑事総務課資料2係」である。通称は「警視庁対霊害捜査班」。
 霊害との戦闘そのものより、霊害が関わっている可能性のある事件の捜査が専門である。彼らの捜査により霊害の関与が明らかになれば、宮内庁に連絡が行き、宮内庁から討魔組に連絡がいく(あるいは宮内庁が独力で対処する)という仕組みである。
 警視庁と名が付いているが、その捜査範囲は日本全国に渡り、日本中の霊害が関与してる疑いのある事件の調査に赴く。
 資料係に扮しているのもそのためで、資料2係には未解決事件や不審な点の残る事件の資料が多く回ってくるようになっている。
 時には何も霊害に関係ない事件を迷宮入り事件を解決してしまう事もあるとか。

 

 四つ目が「自衛隊陸上総隊特殊作戦群霊害対応部隊」である。
 自衛隊の誇る対霊害部隊であり、大規模な霊害事件に対し出動出来るように努めている。
 基本的な仕事は政治的に重要な人間や会議の警護などで、神秘を使ったテロに備えていることが多い。
 基本的な武装は「シルバージャケット弾」と呼ばれる銀でコーティングされた弾丸を使った装備である。
 基本的に出動になるケースが少なく、実戦経験が乏しいのが目下の悩み所。

 

中国

 中国は膨大な神秘の歴史を持つが、最新の中華人民共和国はそれらに関与していない。

 

 彼らの主な対霊害組織は「人民解放軍」内の部署である。
 先述の自衛隊と同じく、シルバージャケット弾を用いる。

 

ヨーロッパ

 ヨーロッパの対霊害事情は日本と似ている。
 日本にとっての天皇にあたるのが、バチカンの教皇である。
 教皇は神の力を借りて、ヨーロッパ中に結界を張っている。

 

 そして、そんな結界の元で密かに神秘と戦っているのが未だに存在し続けている「テンプル騎士団」である。

 

 テンプル騎士団は、神秘の観点から十字教を推し進める秘密組織「インクィジター」によって助けられ、インクィジターの下部組織として、霊害と交戦している。

 

 インクィジターの霊害の定義は「我らの神の奇跡に基づかない全ての神秘」であり、究極的には日本の刀や付喪神、天皇なども全て敵ということになるが、テンプル騎士団は程度現実的な対処をしている。

 

 テンプル騎士団の対霊害兵装は擬似聖痕と呼ばれるタトゥーに祈ることで出現させる「霊光装備」である。
 光り輝く鎧である「霊光甲冑」を身に纏い、エネルギー体の剣である「霊光剣」を振るう。
 危機には祈祷することで出家する巨大な大盾「霊光大盾」を活用して危機を脱する。
 これらの装備はいずれも強力な「神性」を帯びており、並の霊害ではその前に形を維持することすら難しい。
 またテンプル騎士団は上下関係のはっきりした「軍隊」であり、基本的に集団戦法を用いて戦う。

 

 超強力な武装を持ちながら、一糸乱れぬ隊列で確実に敵を掃討する。それがテンプル騎士団である。

 

 騎士団長の下に複数人の聖騎士パラディンがおり、聖騎士が騎士ナイト達を従え、騎士隊を編成している。
 そのほか、各聖騎士には一人の騎士見習い、従騎士エスクワイアが就く。という構造で成立している。

 

 また、インクィジターは「咎人」と呼ばれる七つの大罪の名を冠した暗殺部隊を私有している。
 彼らは極めて特殊な暗器を持ち、基本的にはインクィジターの命令にのみ従う。
 稀に強力な霊害との戦闘に駆り出される時もあるが、基本的には「神の意向」とインクィジターが呼ぶ何らかの計画のために暗殺を始めとした非合法な発動を行なっている。
 その様はむしろ神秘を悪用する霊害そのものであり、他国で活動するインクィジターの咎人と現地の対霊害組織による戦闘に発展することもある。

 

イギリス

 イギリスの対霊害組織は「リチャード騎士団」だ。
 リチャード騎士団は第三次十字軍の折、リチャード一世が敵の神秘使いに対策するために結成した対霊害組織である。

 

 魔力攻撃をある程度遮断できる鎧と、幽霊の神秘部分に攻撃を到達させる特殊な紋様の刻まれた剣「霊基構造破壊剣」、それ以外の怪異と戦うための「銀の剣」、高い神秘プライオリティを持つ「高い樹齢を持つ木を使った矢」などを用いる。

 

 2016年以降は「妖精銃」と「人工妖精」という新装備を使い始める。
 妖精銃はSMLE小銃を改良した銃で、霊害にダメージを与えられる銃である。魔術を除くと遠距離に攻撃出来てコストが安い武器は珍しく、世界から注目されている。
 また、妖精銃には妖精の力を込めることができる機構が備わっており、妖精銃そのものに特殊な効果を及ぼす「ガンエンチャント」と妖精弾と呼ばれる特殊な弾に特殊な効果を及ぼす「バレットエンチャント」と呼ばれる行為が可能。
 例えば風を操るE型人工妖精(後述)をガンエンチャントすると、銃に弾道変更能力を付与する。バレットエンチャントすると、風圧で相手を吹き飛ばす効果を弾丸に付与する。

 

 そしてそのために使われるのが人工妖精。
 特殊なケースに入れて持ち歩き、必要に応じてケースから解放することで利用する。
 人工妖精は色のついた光の球体に光の羽が生えたような見た目の生物で、指示に従い自身の属性の魔法を使ったり、先述のガンエンチャントやバレットエンチャントを行わせることが出来る。

 

 現在確認されているのは火炎属性のA型、氷属性のB型、魔法防壁のC型、治癒魔法のD型、風属性のE型。
 なお、命名は型の文字を頭文字にして命名される。(A型ならアリス、B型ならブルー、D型ならデルタ、C型ならカティ、E型ならエンターなど)

 

 また、イギリスにはその他に英国の魔女と国教会魔術師団という二つと魔術師勢力が存在する。

 

 英国の魔女は森に住む魔女達で、イギリス王室から襲名制でその名前を与えられる。
 リチャード騎士団の鎧と剣を加工するのも彼女達だ。
 ごく稀に、リチャード騎士団では対処困難な事態に対して対応に動く場合もある。
 ただし、2000年代に新たに襲名された英国の魔女はイギリスを捨てて出奔してしまったため、2000年代以降は空位となっている。

 

 国教会魔術師団は先に触れたインクィジターのようや他の宗教的武装集団に対抗するために結成したイギリス国教会の魔術師集団で、霊害には基本的に関わらない。

 

アメリカ

 アメリカは歴史が浅く、必然的に神秘に対する耐性が低い。
 アメリカ独立以降も霊害への対処は秘密裏にリチャード騎士団に委任していたほどである。

 

 モンロー主義を掲げ、イギリス・ヨーロッパからの独立をより強く宣言したのちには有志の魔術師による霊害退治が行われ、それゆえアメリカは魔術師達に寛容な国となっていた。
 西海岸のミスカトニック大学に密かに魔術部門が創設され、魔導書図書館を設立されたことさえ、アメリカ政府は黙認していた。

 

 第二次世界大戦において神秘が戦争に投入されたのをきっかけに、アメリカも公的に神秘補強を目指すこととなる。
 これに伴い、アメリカは他国と違い神秘の歴史がないことを自認し、魔術師に寛容であった点をアメリカの強みであると決め、多額の予算を密かに投入し、魔術の才能さえあれば扱いが容易な魔道具を発注。魔術師部隊「Anti Ghost Hazard Force対霊害軍」、通称「AGHFアグバフ」を設立した。
 AGHFの使う対霊害兵装は「マルチツール」と呼ばれる文庫本サイズの魔道具である。
 変形する機構があり、拳銃や非実体剣の柄などになる他、様々な部位を分離させ、魔力の探知や脚力の増強など様々な用途に使用出来る。

 

 また、魔術師を養成するため、東海岸に「アメリカ国立魔術学校」を設立している。

 

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神秘の作用

 

概要

 先の説明で何度か後述すると述べた通り、神秘の持つ作用の中には討魔師達を有利に導くものも存在する(もちろん一転不利にしてしまう事もあるだろう)。
 この項目ではそう言った要素について触れる。
 また、討魔師達が利用する見かけ上の概念についても触れる。

 

神秘プライオリティ

 あらゆる物体は古い物ほど新しいものに対して優先度を持つという見かけ上の性質。それが「神秘プライオリティ」だ。
 1年や10年程度の差では誤差だが、100年も違うと、かなりの差が出てくる。
 神秘使いの多くが古い武器を使いたがるのはそのためだ。
 中でも玉鋼で作られた日本刀は写しを作ると、元の刀の神秘プライオリティを引き継ぐという強力な性質を持つ。
 例えば1500年に作られた刀を現代に写しにすると、その神秘プライオリティは1500年に作られたものと扱われる。
 量産に向いた神秘プライオリティ兵装、それが日本刀なのである。

 

神秘強度

 神秘プライオリティが古さによる神秘の強さだとすると、それ以外の純粋な神秘としての強さを「神秘強度」と呼ぶ。
 例えばたくさんの血を吸った武器と、一度も振るわれなかった武器では、同じ神秘プライオリティでも、たくさんの人を切ってその怨念を保存している分、たくさんの血を吸った武器の方が神秘強度が高い。
 また純粋に、高い魔力を持つ武器はそれだけ神秘強度が強い。
 まぁなんにせよ、神秘の強さを示すのが神秘強度だ。

 

神性/魔性

 「神性」は神の持つ性質。「魔性」は神性と逆ベクトルの力を持つ神性と類似した性質のことを言う。
 神性と魔性は基本的に神性と魔性によってしか傷つけられない。
 神性同士がぶつかれば、より神性強度の高い方が勝つ。
 神秘において絶対的な強さを持つ権限。それが「神性」と「魔性」である。
 神性を持って戦える宮内庁霊害対策課やテンプル騎士団の強さが分かるというものだろう。

 

伝承効果

 特定の属性の存在を切ったという実績、それが積み重なって生まれるのが「伝承効果」だ。
 神を切ったとされる剣は神殺しの伝承効果を持つし、鬼を殺したとされる剣は鬼殺しの伝承効果を持つ。
 伝承効果は神性や魔性をも上回って機能するため、多くの対霊害組織は密かに強力な伝承効果を持つ武器を「決戦兵装」として隠し持っている。
 例えば竜殺しなら日本だとアメノハバキリ、ヨーロッパだとアスカロン、密かに保管されている伝説上の武器である。

 

神秘物理比率

 神秘レイヤーの説明をする際、部分的に神秘で部分的に物理、という状態の説明をした。
 討魔師達はこれを「神秘物理比率」という比率で認識している。
 神秘が10%、物理が90%、と言った形だ。

 

 これは神秘レイヤーに影響を及ぼす武器にも存在し、例えば日本刀や霊光剣も神秘物理比率を持つ。
 特に霊光剣や日本刀はある程度神秘物理比率を変更出来るため、相手にあわせて最も的確にダメージを与えられる強力な装備であると言える。

 

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魔術/魔術師

 

概要

 先に触れた通り、神秘基盤と呼ばれる神秘レイヤーに刻まれたプログラムのようなものを起動させることで事象を発生させる神秘「魔術」を行使する者達、それが「魔術師」だ。
 魔術師は人間がなるものだから、普通の人間がそうであるように千差万別だが、彼らの使う魔術にはいくつかのカテゴリー分けがある。
 この項目では、魔術師が普段どのような扱いを受けていて、どう言った存在なのかと、魔術師の大まかな種別について触れる

 

登録魔術師制度

 多くの場合、魔術は学んでいるというだけで罪となる。(アメリカなど一部の魔術師に寛容な地域を除く)
 これは魔術の研鑽をすると言う行為が銃や刀剣を用意するに等しい行為であるから、と説明すれば理解しやすいかもしれない。
 しかし、銃や刀剣も正しく申請すれば持つことが許されるように、多くの国では「登録魔術師制度」が存在する(テンプル騎士団傘下のような特別厳しい地域を除く)。
 登録魔術師はその動向が討魔師により監視される上、魔術による霊害が発生した場合には真っ先に疑われてしまうが、犯罪行為にあたらない限り自由に魔術を研鑽することが許される。
 ただし、秘匿されるべき魔術を公開しなければならないこと、そもそも魔術師の多くは犯罪を厭わず魔術を研鑽したいこと、などから、実際に登録魔術師となっている例は極めて少ない。

 

古術使いメイガス

 魔術師は大きく分けて三種類に分けられる。そのうち最も古くから存在し、スタンダードでステレオタイプな魔術師が古術使いメイガスだ。
 古術使いは呪文や印、陣、触媒などを用いて魔術を発動する魔術師の総称である。
 魔術の種類は極めて多岐に渡り、対峙する相手としては最も厄介な部類に割り当てられる。
 反面、呪文や印、陣、触媒といった何かしらの準備なしでは強力な魔術をほぼ使えないため、如何にそれらの準備を破るかが攻略の鍵となる。
 また、後述する残り二種類の魔術師も大なり小なり古術使いを兼ねている場合も多い。

 

邪本使いマギウス

 本を用いて魔術を使う魔術師、それが邪本使いマギウスである。
 邪本使いの使う本には二種類がある。古術使いが使うような呪文が記されたスペルブックと、魔術の法則そのものが記されたローブックだ。
 スペルブックは簡単に説明してしまうと詠唱を本が代わりに実行してくれると言う代物で、本に対し魔力を通したり、起句と呼ばれる短い呪文を唱えることで魔術を発動させられる。
 ローブックはやや複雑で簡単に言うと「本来神秘レイヤーに刻まれているべき神秘基盤を本に記したもの」である。基本的にはその本に儀式や術式が記されており、その通りの事を行うことで魔術を発動出来る。本が必須なだけでやる事は古術使いに近いのが特徴だ。
 いずれの場合も、本を携行するのが必須であるのが弱点で、本さえなんとかすれば無力化出来る。
 ただし、多くの邪本使いは古術使いを兼ねている事が多く、そう簡単に対処を許してはくれないだろう。

 

魔導具使いウィザード

 魔導具と呼ばれる最新式の魔術道具を用いる魔術師、それが魔導具使いウィザードだ。
 魔導具とは魔術で出来た魔術を自動で発動する道具の事を指す。術者は特別な才能すらいらず、ただ各魔導具ごとに決められたコマンドワードや印を刻むだけで良い。それも多くの場合、古術使いが使うそれより圧倒的に簡易的なものである。
 魔導具使いは極めて短い動作で強力な魔術を行使可能なため、全魔術師の中で最も単純な脅威となりうる。
 反面、多くの魔導具使いはただ魔導具を持っているだけで魔術の知識が無いことも多い。如何に相手の無知を突くか、が攻略の鍵になる。

 

 ちなみに魔導具使いを作る魔術師(多くの場合、古術使いだ)の事を、魔導具鍛治師マジックスミスと呼んだりもする。

 

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