A-AWs ワールドセクション - チパランド
黒き壁により4つに分かたれた平面世界
チパランド創世神話
魔術という技術
魔術体系の種類
魔物
「魔女」と「外法」
コンクエスター
チパランドの文明と文化
チパランドの地理
武器
精霊武器
黒き壁により4つに分かたれた平面世界
AWsの数ある世界の中でも一際異質に見える(2020年4月時点)世界といえば、『Legend of Tipaland』の舞台、チパランドだろう。
天動説に基づく平面の世界に、世界を四つに分ける巨大な黒い壁。
そしてその世界に住む者なら誰でも使える「魔術」。
ワールドセクション「チパランド」では、この世界について、本編で既に判明していることと、明かしてもネタバレにはならない程度の情報を記述する。
チパランド創世神話
チパランドの歴史は他の国や世界と同じように創世神話から始まる。
あらゆる創世神話に言えることだが、誰がそれを観測して記述したというのだろうか。
折角なのでこのワールドセクションではまずはこの創世神話の大枠を語るところから始めていこう。
あくまで、ここに記述する創世神話はチパランドの人々が広め信じているそれに過ぎないということは注記しておく。
世界のハジマリ
そこは真っ黒で何も無い世界。
否、そこには光などという概念もなく、音などという概念もなく。
即ちただただ何も無い空間であった。
そこに何かの波動だけがただ響いていた。
その波動に流されて、一人の哀しき少年が漂着した。
哀しき少年は何も無いこの場所に何かが欲しいと感じた。
「ここに大地があり。人はここに立つ。大地は高いところと低いところがあり、低いところには水が満ちる」
そうであったら良い、と少年は考えた。
そうすると、そうなった。
そこには大地があり、大地には高いところと低いところがあり、低いところには水が満ちた。
「いや。高くも低くも無いところも必要だ。んー、基本的にそれは真ん中の方に集まっている。そうだ。高くも低くも無い大地の周りを海……低い大地に満ちた水が覆っているのだ」
しかし、少年は最初に生まれたその世界の姿を良しとされず、さらに考えた。
そうすると、そうなった。
ドウブツの誕生
それから、少年は何度とない試行錯誤の末に、その世界を完成とされた。
「なら、次は動物だな」
しかし、少年には動物を生み出せなかった。その方法が分からなかった。大地を作った時のように考えても、動物はその通りにはならなかった。
少年は自分の機能が世界の創造に限定されていることを理解し、かつての自分のように世界の外側を飛ぶ光を捕まえて「生」の少女を作り出した。そして、自分の事は「世界」と名乗る事にした。
「生」により世界に生命が生まれた。「世界」はそれを見て頷き、木々の中で眠りにつこうとして、この世界を照らす光がない事に気付いた。
「世界」は起き上がり、世界を照らす太陽を作り出した。今度こそ、明るい日が照らす中で、「世界」は眠りについた。
新たな神達と不和の予兆
「世界」が目覚めると、大地は生命に満ち、溢れていた。多くの生命が多すぎる生命に苦しんでいた。
「世界」は慌てて、「生」を二つに分かち、「生」の兄として「死」の少年を作り、生命に終わりが訪れるようになった。
ところが今度はそれがあまりにランダムなので「世界」は迷った末に再び世界の外側を飛ぶ光を捕まえて「運命」の少年を作った。
「運命」は一つ一つの命の運びを慎重に決定し、「生」と「死」はそれに従った。
ある日、「死」は言った。太陽は生の象徴とされている。妹には象徴があるのに私にはない。これは不公平だ、と。
「世界」はこれをもっともだと思い、太陽が沈む時間を作った。そして、その時間に月と無数の星々が浮かぶようにした。月は「死」の象徴であり、周囲を浮かぶ星々は死した命の名残であるとした。
「死」は大変喜んだ。
ある日、「世界」は思った。
人間達はずっと同じ場所に止まっている。世界はこんなに広いのに、と。
こうしてまたしても世界の外側を飛ぶ光を捕まえて「冒険」の少年が生み出された。「冒険」の少年は人々が冒険に出ることを後押しし、そして、たくさんの報酬を与えた。
こうして、人々は未知への挑戦をするようになった。
ある日、関心によって動き始めた人間が、空を飛ぶようになった。
「世界」は慌てて自身を分割して「重力」の少年を作り、人間をはじめとするほとんどの存在は大地に縛り受けられる事になった。
「重力」は「世界」の被造物と強く結びついていたため、「世界」の弟という事になった。
ある日、「生」「死」兄妹と「運命」、そして「冒険」が喧嘩を始めた。「生」「死」兄妹は「運命」に行動の自由を奪われていると言った。「運命」は「冒険」によって予定を狂わせれていると言った。
つまり、「運命」が命の運びを決める以上、「生」と「死」はただただ「運命」の指示に従うしか出来ない。兄妹はこれを不満に思ったのだ。
一方、「冒険」は人を好奇心のまま動かそうとするが、それによって生じる危機は「運命」の予定を大きく狂わせていた。
どう解決していいか悩んだ末、「世界」は世界の外側を飛ぶ光を捕まえて「調停」を作った。
「調停」は四人の権限の範囲を調整し、それぞれが自由に動けるようになり、そして神は神を攻撃出来ないと定められた。
人々は予期せぬ死や、生の誕生を得るようになり、逆に冒険の中で危機にあっても、不思議と助かるようなことも起きるようになった。
しかし、「運命」は内心、この結果に不満を持っていた。
来訪者と「普通」
ある日、世界の外側からの来訪者があった。
そのものは恐ろしい外側の技術を使い、世界の人間達を圧倒した。
「世界」達は彼らを外から来たる技術、外法を用いる魔女だと恐れた。
外法がこの世界に氾濫することを恐れた
「世界」は世界の外側を飛ぶ光を捕まえて「普通」の少女を生み出し、この世界の普通を定めた。これにより、魔女は以前程は自由に力を使えなくなった。
最後の神「願い」
それからしばらくが経ち、「世界」は今度こそあらゆる問題は解決されたのだと考えた。
しかし、それでも人間達は多くのことを望んでいた。そのほとんどは人間達自身さえ頑張ればどうにかなるようなことで、自分達が何かする必要自体はなかったが。
悩んだ末、「世界」は世界の外側を飛ぶ光の中でも一際美しく輝く光を捕まえて「願い」の少女を作った。
「願い」は人々の願いを聞き取り、限定的にあらゆる能力を行使して願いを叶えた。
ところで「願い」は「世界」の願いをも受けて形作られたが故に、「世界」にとってとても理想的で魅力的な存在だった。
やがて、「世界」と「願い」は夫婦となった。
「運命」の反乱
それから何百年も平和で豊かな日々が続いた。
そして、それは突然に破壊された。
かつての「調停」の決定を不満に思っていた「運命」の煽動によって、人々が"神"に牙を剥いた。 「世界」はそもそも自分たちが"神"と呼ばれていたことすら初めて知ったが、とにかく驚いた。
庇護すべき対象であるはずの人々がこちらに襲いかかって来るのだ。
神は神によっては傷付けられないが、それ以外に対しては不死でも無敵でもなかったため、最初の不意打ちで「調停」を始めとする何人かの神が死んだ。
精霊武器 の生成と堕神戦争
「世界」は仲間を失った悲しみから、武器を手に取った。
ただの武器ではない、自身の力で精霊と呼ばれる存在を武器に封じた武器、
また、神は神を傷つけられないので、「世界」達は人間側についた「運命」を倒すため魂を持たない兵隊を生み出し戦力とした。
こうして始まった戦争を堕神戦争と呼ぶ。
三賢者の台頭
やがて「運命」は討たれたが、それで戦いは終わらなかった。
戦いは長く続いた。無数の精霊武器を持ち死を恐れない兵士を従える神は強かったが、しかし人は多かった。
少しずつ、仲間は失われていった。
気がつけば、「世界」はまた一人になっていた。
どうしてこんなことになったのか分からなかった。なぜ「運命」が裏切ったのか、なぜ人々が彼に従ったのか、何一つとして分からなかった。
困ったことにこれは人々も同じだった。人にとって長すぎる戦いはもはや戦いの理由を忘れさせていた。
いや、それどころか、人間同士の利益を求める戦いも起きていた。「世界」が彼の美的センスに任せて適当に作った大地は人間達にとってひどく不平等だったのだ。
そんな中、三人の賢者が名乗りを上げた。
もはや人間同士の戦争に成り果てたこの戦いを終わらせよう、と。
三人の賢者は異世界の邪神を召喚し、巨大な黒き壁で世界を4つに分割した。
これにより、人間同士は争う理由を失った。
なにせ不平等だと言い合っていた同士がそれぞれ壁により隔たれたのだ。相手を不平等だ、などとと言う暇はない。自分達も生きなければならないのだ。
「世界」の眠り
「世界」は主導権を失った世界で、その様子を見つめていた。
世界の壁と呼ばれるその壁が出来た時点で、もはや、「世界」がこの世界に出来ることは無かった。
ひとりぼっちに戻ってしまった「世界」は、大地の一部を空高くに持ち上げ、そこを自分の場所とする事にした。
いつか、いつの日か、他の神達が再び現れてくれることを願って、あるいは二度と目覚めることはないかもしれない眠りについた。
神話の大戦から地続きの今「四分歴」
世界を四つに分かつ壁が出来て、人々はこれを忘れないために「四分歴」と呼ぶ新たな暦を作った。
これが今でも継続している。(『Legend of Tipaland』本編随所に登場する年表記はこの四分歴である)
つまり四分歴0年こそが四つの壁が生まれ、戦争が終結したまさにその年なのである。(実際にはそう言われているだけで新たな暦を持つに至るまでに数百年単位のズレがある、という説もある)
チパランドの「今」とされるのは四分歴2000年代。
神話の大戦が起き、終結した2000年後が今なのである。
魔術という技術
ここからはチパランドで誰もが使える技術「魔術」について記述する。
実のところチパランド人がいつから魔術を使用可能となったのかは不透明である。
一般的な俗説としては神話大戦の中、
ともかく、「今」のチパランド人にとっては魔術と呼ばれる技術が当たり前に使える環境にある、という事さえ分かれば「今」のチパランドを理解する上では十分だろう。
前置き「魔術という言葉について」
あなたが既に他のワールドセクションを読んでいる場合、もしかしたしたら、「魔術」という言葉とその意味を知っているかもしれない。
だが、「魔術」という言葉が指す技術の中身は世界毎にかなり異なるので、混乱しないように注意する必要がある。
参考までにAWsラボラトリーはチパランドの魔術のことを「感情型念動力」と呼称して区別している。
魔術の概要
チパランド人の使う魔術を極めて端的に説明すると、
感情に反応して制御が可能な「魔力」を使い、「原子」(厳密には電子や重力子などの素粒子等を含む)を操る。
という事になる。
例えば火の玉を放つ魔術ならその辺の空気を操り、発火させた上で燃焼現象の方向を指定する事で実現する事が出来る。
そしてより精密な制御を可能になればなるほど、魔術は当然強くなる。
例えば燃焼させる空気の酸素だけをより分ける事で酸素比率を上げて火力を上げたり、燃焼現象の方向の指定をより精密にして命中率を上げたり、というわけだ。
この例を聞くと、そもそも相手の側で発火させれば良いのでは? と考えつく人がほとんどだが、実際にはこれはなかなか上手くいかない。
というのは、術者から遠くの魔力ほど制御が困難になるからで、まして対人の魔術戦では相手も周囲の魔力を制御下に置くため、より干渉は困難になる。
大半の魔術が術者を起点に「放つ」ものであるのはこれが理由である。
強化魔術
魔術とは念動力であると説明したが、一方で魔力そのものには魔力と結びついたものを育てたり、強度をあげたりする力を持つ。これを活用する事で植物の急速な成長を促したり、武器や防具の強度を上げることができる。
専門的な分類としてはこれを「強化魔術」と呼び、通常の魔術と区別する場合がある。が、一般には浸透していない。
というのも、基本的に多くのチパランド人はこれをほぼ無意識的に行なっており、鎧や盾、剣の強度はその時の精神状態、感情の状態に応じて(見かけ上)自動的に変化する。
"想い"が力となるチパランドにあっては、強い意志に裏打ちされ、強い裂帛と共に放たれた一撃は、例え得物が木刀であろうとも、強靭な岩を両断するのである。
属性
精霊の力を借りた要素魔術などと違い、強い相関関係を持つわけでこそないが、チパランド人は魔術を属性という分類で区別する事がある。
属性は「氷」「草木」「火」「雷」「土」「水」「風」「金」「音」の9つに分けられている。
また、チパランド人はその人の性格と得意な属性には関係があると考えていて、エニアグラムと対応すると見られている。
対応関係は以下の画像を参考のこと。(この図の相関関係はエニアグラムの人間関係を表すものであり、属性の相関関係を意味しない点に注意)
空間魔力量
先に説明した通り、チパランドにおける魔術とは空気中に存在する魔力を使うものであり、自身の中にあるなんらかのリソース(例:MP)を消費するものではない。
ただ、リソースが内にあるか外にあるかの違いであって、有限のリソースを費やすものである事には違いない。
チパランド人はこれを「空間魔力」という形で認識している。
余程の遠距離戦でない限り、向かい合う術者は同じ空間魔力を消費して魔術を使う。
魔術の発動工程
魔術は一般的に「
また優れた魔術師は可能な限り短時間でこの精神集中を終える事が可能。
感情調律は自身とリンクしている魔力を自身の感情によって変質させ、これから行使する魔術に適した状態にする工程。
この部分を正確、かつ確実に行うため後述されるような様々な魔術体系が編み出された。
ちなみに魔力はそれが意図した感情なのか、自然に発露した感情なのかを区別したりはしないため、激しい激昂により周囲の空気が発火する、などと言った「精神集中を経ない魔術」が自然発動してしまうこともある。多くの場合、まともな制御もされていないため、大した強さの魔力にはならないが、あまりに激しい感情の発露は時に、周囲の環境次第では恐ろしい現象へと変じることがある。
精神集中で感情をリセットしようとするのは、このような事態を防ぐためのスイッチとも言える。
操作予約は優れた魔術師のみが可能とする技術で、魔術をを発動直前で止まった状態を意図的に引き起こす事を言う。これを応用し、連鎖魔術、多重詠唱と言った、複数の魔術を同時に発動させる技術も存在する。
発動はその名の通り、魔術を発動する事を言う。周囲の魔力が可能な限り術者の指示した通りに周囲の物質を制御する。
※魔術は手から放つ?
チパランドにおける魔術の多くは手や腕の先から放たれることが多い。
これは自身の体の近くに存在する魔力ほど精密に制御出来るという仕組みと、可能な限り精密に対象を狙いたいという目的によって発生した方法論で、
対象に向けて伸ばした腕の先の魔力を操り、魔術を放つのが最も確実に対象の可能な限り近くの魔力を操る方法であるからである。
それが当たり前になっているが故に、騎士剣と呼ばれるチパランドの剣は片手で持ち、もう片手で魔術を使えるようになっている。
ただ、この方法論には欠点があり、いいとこ両腕分の二発程度しか同時発射出来ない点である。
例えば炎の魔術一つとっても、腕の先一つに生成できる火の玉の大きさにはどうしても上限があり、それを超えるにはさらなる発射口が必要になる。しかし、腕の先に頼ってる分には二つまでしか作れない。
優れた魔術師は肩や肘など体の各部位を起点に魔術を発動したり、完全に何もない空中に生成することすらなし得る。
腕の先端から魔術を放つ、という方式からいかに脱却できるか、が魔術師として大成できるかの分岐点となっていると言える。
魔術体系の種類
チパランドにおける魔術は突き詰めると単なる
ただ誤解して欲しくないのはこれらの体系は排他的なものではなく、むしろケースバイケースで使い分けることの方が多いという事だ。どちらかというと各体系の中にある細かい方式の派閥同士がかなり排他的である。
呪文魔術
本人の気分の乗る呪文を唱える事で魔術の発動を安定させる魔術体系。単純なロジックなのもあり多くの魔術使いがこの体系を用いる。
気分の乗る呪文、とはいうが、この体系の最終的な到達点はその呪文をトリガーとして魔術発動に適した感情状態へと移行する一種の催眠術的な手法である。
理論上は長く唱えれば唱えるほど高揚感を得られるため複雑な魔術の成功率が上がる理屈になるが、最終到達点にまで至れているのなら、たった一言でも複雑な魔術を行使可能。
似た体系(あるいは分派)として「罵声魔術」が存在する。相手に罵声を浴びせて相手の精神集中、感情調律を妨害した上で、自身の感情を調律するそれ自体が攻撃を兼ねた体系である。
とはいえやりすぎて怒りや憎悪の感情に基づく魔術を振るわれることもあるため、言葉で見るほど簡単な体系ではない。
魔法陣魔術
感情を記憶する円形の陣「魔法陣」を展開してその呼び起こされた感情によって魔術を行使する魔術体系。
どんなに複雑かつ強力な魔術であろうと魔力さえあれば確実に魔術を行使可能な体系であるが、魔法陣は量産不可能で使い捨てのため、あくまで補助的な体系という位置付けでメインには呪文魔術などを使う、というのが基本。
魔法陣は地面や紙に刻んだ後、薄い円柱状に加工された特殊な石「記憶石」に触れさせる事で記録させることができ、戦闘中にこの記憶石から魔法陣をいつでも呼び出すことができる。
一つの記憶石に記録させることの出来る魔法陣は5つまでとなっているため、魔法陣魔術を多用する術者は多くの記憶石を腰に下げている。
感情の形は個々人で違うため、他人のために作った魔法陣をまた別の他人が使う事はできない。
この体系の理論を利用したアイテムとして
魔法陣魔術体系の一家の一つ「キザミ家」が技術を独占している商品で、見た目は極めて薄い記憶石。魔力を込めてやるとその石に封印されていた魔術が発動し、その後石は砕けて消える。
本人の魔術の実力とは一切関係なく魔術が使えるため重宝されている。
歌唱魔術
歌により自身や他者の感情を揺さぶり感情を調律する魔術体系。
基本的な仕組みは呪文魔術と同じだが、特筆すべきは周囲の人間にも影響を与えるという点。
他の魔術体系以上に細かい分派があり、
歌唱する本人は魔術は使わず、歌唱のみに集中し、周囲の術者の感情調律を支援する「独唱型」、
集団で同時、あるいは意図的にズラして全体で感情を調律する「合唱型」及び「輪唱型」などが、分派の中でも大きな勢力を誇っている。
変わり種としては、集団で耳栓をして自身の歌にのみ集中し、あえて全員で異なる歌唱を行う事で本人達は魔術を行使しつつ、相手に不快感を与え感情の調律を妨害する「不協和型」なども存在する。
いずれにせよ個人戦闘ではなく集団戦でこそ効果を発揮する体系であり、個人戦が基本のコンクエスターやハンターはあまりこの体系を修めていない事が多い。その一方で自警団やグンなどの集団戦を基本とする集団には必ず一人は歌唱要員がいると言っていい。
似た体系としては「演説魔術」という体型が存在する。体系としては呪文魔術の一種とされているが、術者本人は演説することによる高揚感を、周囲の術者は演説を聞く事による高揚感を、それぞれ利用して魔術を使う。ただ、ひたすら高揚させる一方なので魔術戦というよりは戦闘能力向上に用いる体系であると言える。
魔物
あるタイミングからチパランドに発生するようになったと言われる既存の生物をベースに異形の部位と魔術特性を持ちひたすら破壊活動を繰り返す魔力の塊。
一般的に信じられている俗説によると神話に語られる「運命」による反乱、すなわち堕神戦争の勃発と同時に発生するようになったとされている。
詳細はかなり多岐に渡り、神の加護が失われた結果として生じていると言う説と「世界」らが作った魂の無い兵士こそが魔物であると言う説の2種類が主流となっている。
実際のところ魔術学者は魔物の発生機序をほぼ完全に把握しており、結論から言うと魔物は世界が生まれてからかなり早い段階から存在した可能性が高いとされている。
特徴
基本的にこの世界に存在する他の生命体の姿を模倣している。
良く見かける下級の魔物を取っても、
犬のような姿をしたハウンド。
蜂のような姿をしたシニ。
樹木のような姿をしたトレント。
といった風である。
また、必ず一属性の魔術を使いこなす。
例えば、ハウンドなら火、シニなら金、トレントなら草木。
そして、中級以上の魔物には異常発達した一部位を持つ。
例えば、
ハウンドの上位種で首を二つ持つヘルハウンド。
シニの上位種で剣の如き巨大な針を持つイチバイト。
トレントの上位種で巨大なギザ刃の口を持つマンイータートレンド。
などが上がる。
さらに上級以上の魔物には魔術特性という特性が付く。これはその条件を満たさないと攻撃できないと言う極めて強力な特徴であり、内容次第では後述するコンクエストの対象となったこともあるほど。
例えば、
ヘルハウンドのさらに上位種であるケルベロスは「警戒中の頭の数だけ防御能力が上昇する」。
イチバイトのさらに上位種であるオクトーは「8人組の戦闘員以外との戦闘では傷を受けない」。
マンイータートレントのさらに上位種であるトネリコトレントは「火、金以外の属性の攻撃を受けない」。
などの魔術特性を持っていた。
また、理論上はこれより上の「超級」とも言うべき魔物が存在しているとされるが、チパランドには過去これまで一度もそれらしき個体が現れた事はない。
全ての魔物に共通する特徴として、魔力の浸透していない物体を問答無用で破壊できるという特徴がある。この時、破片は残らず、細かい粒子となって魔物の中に吸収される。
これを"破壊"と呼ぶ。
また、魔力の浸透した武器であっても少しずつ魔物の"破壊"のダメージは蓄積されており、いつかは"破壊"されてしまう。このため、チパランドの戦闘員達は必ず予備の武器を携行する。
ゴールド
魔物は倒されると魔力として分解されて消失する。この時、「ゴールド」と呼ばれる鉱物のような固まりを落とす。
これは金や銀、銅などの貴金属を含む鉱石で、かつてはこのゴールドがそのまま通貨として通用し、重さで取引が出来た。
現在も一部では取引に使える他、銀行で適正なレートで通貨「
その正体
その正体は
チパランドでは人間文明中心の考えから
サーキュレタリィリソースと呼ばれる世界を循環するべき資源の循環を正常に戻すための機構であり、循環を滞らせている原因を破壊したり、ソースを溜め込んでいる存在を破壊して後に別の場所で倒される事で異なる場所に資源を運んだり、と資源の循環を促進させるために活動している。
このため魔物の多くは資源を溜め込んでいる人間の街を襲撃する事が多い。
必然的に人類は自らの生活を守るために魔物と戦うこととなる。
近年は都市構造を工夫してリソースの滞りを抑えたり、街の外に意図的にリソースの澱みを作って魔物の発生箇所を制御したり、と街が突然襲撃される事自体は珍しくなっている他、上級個体の発生はほぼ見られなくなっている。
「魔女」と「外法」
神話においても存在が語られる異世界からの来訪者。
どういうわけかチパランドは外の世界からよく色んな人やものが迷い込んでくる。
基本的に来訪者達は単なる念動力に過ぎないチパランドの魔術以上の力を持つことが大半のため、人々は恐れから、これを「魔女」と呼び、彼らの持つ力のことを外なる法則の力「外法」と呼ぶ。
今となってはチパランドに住む事を選んだ魔女も多く、魔女や外法という言葉は外聞が悪いため「魔法使い」と「魔法」と置き換えようという動きがあるが、十分に浸透しているとは言い難い。
すなわちチパランドにおける魔法とは「チパランドの魔術以外の全ての能力」である。
チパランドに住む魔法使い達
チパランドに住む主な魔法使い達を紹介する。
彼らに対するチパランド人の認知は様々である。いずれも等しく魔女であるという者もいれば、自身に都合の良い錬金術師や癒し手はそう呼ぶがそれ以外は魔女であるという者もいる。魔女を魔法使いと置き換えても同じ事である。
錬金術師
実際には薬を作る
癒し手
回復系の能力を持つ能力の持ち主の総称。
チパランドでは能力の内容にかかわらず癒し手達による互助会「癒し手組合」が存在し、多くの戦闘員が彼らのお世話になっている。
竜使い
こちらはほぼ単一世界からやってきた竜と呼ばれる種族を従える能力の持ち主。
彼らの定住に合わせて、ドラゴン型の魔物が現れるようになったこともあり、チパランド人の中では彼らを嫌う者も多い。
今となってはライン家以外はほぼまた別の世界へと移民していった。
異邦人
魔女/魔法使いの中でも特に異世界から来たばかりの存在のことを特にこう呼ぶ。あくまで通りすがりの存在のことを呼ぶので、定住地を得ると異邦人とは呼ばれなくなることが多い。
コンクエスター
人類文明の敵である魔物や、人に危害を加える魔女との戦いのために組織されたのがコンクエスターである。
組織名と職業名がどちらも「コンクエスター」でややこしいため、組織名を「コンクエスターギルド」と呼ぶ事もある。
コンクエスターは身も蓋も無い言い方をしてしまうと、日本における中世風ファンタジー作品によく登場する冒険者ギルドをもう少し組織だったものにしたような存在である。
組織構造
コンクエスターはチパランド四つの州それぞれの州都に本部を持ち、そのトップに本部長が一人ずつ配置されている。後述するコンクエストの発令をはじめとしたコンクエスターの運営は四人の本部長による会議により決定される。表向きは四人の本部長は対等だが、歴史的にも事実的にも力関係は首都とされる北西州ルプスの本部長の権限がやや他より強めであり、意見が対立した場合には北西州本部長が最終的な決を採ることが多い。
本部長会議で決められるコンクエスター全体の運営とは別に、各本部長はその州のコンクエスターを運営を決める必要がある。
各本部の下には各地の支部があり、そのトップには支部長が配置されていて、本部長と支部長で州独自の運営方針が定められる。
クエスト
コンクエスターには二つの仕事がある。「クエスト」と「コンクエスト」だ。
後者は事によっては一生に一度あるかないかと言うほどなので、基本的な仕事はクエストという事になる。
クエストは基本的に立場を問わない民間人や民間組織からの依頼を依頼受付窓口で受け付け、依頼の裏取りや真偽調査などの審査を実施、審査を通った後に最低報酬額を依頼者に伝え、依頼者が最低報酬額以上の報酬を確定させる事でクエストが発行される。
ちなみに多くの場合、クエストの報酬には国か州からの支援金が降りる。
発行されたクエストは本部や支部の掲示板に張り出される他、本部長や支部長がそのクエストに適任だと判断したコンクエスターがいる場合、直接話が行く事もある。
いずれの場合でもクエストを受ける受けないは原則的にコンクエスターの自由意志に委ねられる。
ただし、最後のクエスト完了から、特別な理由なしに半年以上クエストを一切行っていない場合、所属する本部もしくは支部の長から警告が行われ、その後さらに半年間理由なしにクエストが行われていない場合、コンクエスターとしての資格が剥奪される可能性がある。
ライセンス
コンクエスターはコンクエスターである資格の他に様々な認可を出している。これをまとめてライセンスと呼ぶ。
ライセンスの発行には筆記試験と実技試験があり、これに受かりさえすればコンクエスターでなくてもライセンスは得られる。
ここでは代表的なライセンスを紹介しておく。
・魔物討伐認可ライセンス
魔物を自由に討伐しゴールドを得て良いと言うライセンス。
このライセンスを持たず、かつクエスト中などの特別に認可される状況以外で魔物を討伐しゴールドを採取した場合、「密猟」と判定される。
・クラスライセンス類
コンクエスター、もしくは国、州が規定する戦闘スタイル「クラス」に準拠して戦闘を行うことを証明するライセンス。
クラスとは所謂ところの
そのまま武器や記憶石の装備を認可するものでもあり、その装備品の装備を認可するクラスなしに装備品を身につけていると、傷害可能装備等取締法に違反となる。
また複数のクラスライセンスを持っていても有効化しておけるクラスは一つだけとされており、既存のクラスでは同時に装備出来ない装備品を組み合わせたい場合、その戦闘スタイルをコンクエスターを通して認可させる必要がある。もちろん、容易ではない。
・騎乗ライセンス
馬や馬車、
ナイトなどの騎乗戦闘を行うクラスライセンスを前提としたライセンスである。
馬は貴重な資源のため、損失する可能性の高い戦闘に連れて行く事やそもそも私有する事は認可が必要な事象となっている。
特に国中を移動する事になるコンクエスターにとっては馬の私有は一つの憧れである。
コンクエスト
さてコンクエスターのもう一つの仕事は「コンクエスト」である。
これはコンクエスターを総動員して臨む大規模作戦である。
四人程度の少人数のコンクエスター達ではどうしようもないような強大な魔物や魔女相手に発令される。
ここ数百年単位で発令されておらず、今後もよほどのことがない限り発令されないだろうから、「そう言うものがあるんだな」と言う程度に思っておけば良い。
もちろん、コンクエストを扱うセッションをしてはいけないと言うことではない。
チパランドの文明と文化
チパランドは魔術が公に存在する異世界だけはあり、私達の住む世界やそれと似たニアリアル世界とは異なる部分が多い。
ここではそんなチパランドの文明と文化について解説していく。
言語
チパランドには大きく分けて三つの言語がある。
まず、「大陸共通語」が共通言語として使われている。
完全に浸透するまでの間各地で使われていた言葉は「方言」として今も残っている。
文字としてはアルファベットによく似た「人間文字」を用いる。
ちなみに「大陸」の言葉が示す通り、チパランドの大陸から離れたところにある一部の諸島や群島では独自の言語が残っていることもあるとされる。
さらに、神の使っていた言語として私達のよく知る日本語が「神聖語」として伝承されている。
ただ、その殆どが失伝しており、完全な神聖語の会話が出来るのはごくごくわずかな特殊な出自の存在のみであり、基本的に動詞が僅かに残っている程度である。
文字としてはひらがなとカタカナである「神聖文字」と漢字である「上位神聖文字」がある。
そして、神と会話するために作られたとされる「人神契約語」が存在する。
これは私達のよく知る英語そのものであり、文字として使われる「神授文字」もアルファベットそのものである。
こちらは失伝しておらず、今でもほぼ完全な文法と単語が残っている。
ちなみに人間文字は堕神戦争の最中に、神からの独立の意志を示すために神授文字に代わる文字として作られたものであり、相互に置き換えが可能な文字である。
交通
チパランドの交通網は駅伝制により確保されている。
街道沿いに宿場が点在しており、馬や馬車を借り、他の宿場で返却が出来る。
また、御者もレンタルが可能な事がほとんどである。
チパランドにおける首都以外の町は基本的に宿場町である事が多い。
また、街中を走行する馬車は「指示器」を両側面に装着する事が義務付けられている。
これは私達の世界の車につけられた指示器と同様の機能を果たすもので、アポロ式や矢羽式と呼ばれるタイプの指示器に似た形をしている。
両方の指示器を同時に出すと停止の意味になる。
これを装着しなかったり、あるいは装着していてもしっかりと見えない状態になっていたり、と言った状態で走行していると、街区走行法違反となる。
私達の世界では馬車の時代には手信号のみで十分とされているのにチパランドでは方向指示器が使われているのは、車体の外に手を出すという行為が魔術行使などの攻撃の予兆である可能性もあるからである。
馬車に代わるものとして蒸気機関で動く「自動車」が開発されているが、現時点ではお金持ちの道楽用程度の認識であり、
民間人が利用できる自動車といえば、南東州の州都「コンビナート」にて「タクシー」と呼ばれる自動車が巡回している程度である。
海上輸送は盛んではないが、漁業や孤島との連絡船として船が使われている。帆船と蒸気機関船の2種類が主に存在していて、実態としては帆船の方がまだまだ多い。
そしてチパランドに存在する交通手段の中でも最速のものがわずか一日でチパランドを一周してしまう列車である。
電気で動く列車を電車、蒸気で動く列車を蒸気機関車と呼ぶように、光の粒子を媒介して加速するチパランドの列車は「フォトンライナー」と呼ばれる。
フォトンライナーの形成する粒子加速フィールドは世界の壁を無効化し通過する事が可能で、現時点では唯一世界の壁を確実に越えられる手段である。
駅は四つの州都に一つずつの四つ。
旅客用の列車が内回りと外回りで二台(「ハシル」と「カケル」)、運送用の列車が同じく二台(「ハコブ」と「オクル」)存在している。
魔術結晶と蒸気機関
チパランドの一部で出土する不思議な結晶、それが魔術結晶である。
堕神戦争のかなり初期の段階で、神々により結晶化された魔力が砕けて地面に埋まったものとされているが、その正確な正体は不明である。
いずれにせよ、この魔術結晶はチパランドのインフラや科学技術を支える重要なものである。
重要な下支えに厳密には正体が不明なものを使うことの是非はあると思うが、私達の世界でも厳密には正体が不明な石油という資源をとりあえず燃料になると言う理由で使っているので、それと似たようなものである。
魔術結晶の持つ特性は二つ。
魔術をぶつけるとその魔術を記録し、指向性を持つ魔力をぶつけられるとその魔術をそのまま返す、というのが一つ目。
そして、適切な処理を施し出口を作ってやると、その方向に指向性を持つ魔力を発する、と言うのが二つ目である。
この二つの特性を利用し、作り上げられるのが魔術結晶回路である。
出口のついた結晶の方を電池だと考えるとわかりやすい。
棒状の道具の底部に出口付き魔術結晶を装着して、先端に発光する魔術を記録させる。
出口の先から、先端までチューブを繋ぐ。
こうすると、底部の結晶から発された魔力が先端の結晶に到達し、先端が光る。
つまり、懐中電灯になるわけだ。
ちなみにこれはあくまで例であって、実際には単に発光する、と言う魔術はないので、先端で燃焼させ、それのさらに先にレンズなどをつけて光の範囲を限定するなどの工夫が必要だろう
そしてこの魔術結晶回路を利用した最新の駆動機関が蒸気機関である。
タンクにセットされた魔術結晶がタンクの中の水を蒸発させ蒸気を作り、その蒸気でピストンやタービンを回す事で動力を得る。
冷えた蒸気は再びタンクに戻るようになっているため、「密閉式」もしくは「循環式」と呼ばれる。(この方式が生み出されるまでは、蒸気を逃していたため逐次タンクに水を追加する必要があった)
ちなみにチパランド人は雷の事を「死の光」と呼ぶ程度には電気の事を理解できておらず、電気エネルギーの利用はほぼ行われていない。
なので蒸気機関の成果も単なる前後往復運動か回転運動としてしか取り出せない。
ちなみにチパランドでは魔術結晶以外の石炭や原油などのエネルギー資源が存在しないため、魔術結晶が唯一のエネルギー資源である。
食文化と嗜好品
主食は麦によるパン。
小麦、飼料、家畜のスペースをローテションして回す所謂混合農業に似た農法が確立されている。
小麦粉を挽くのは風車が多く、もっとも農業が盛んな北西州ではたくさんの風車が並んでいるのを見ることができる。
例外的に南西州のみ狩りの成果として得られる肉を主な主食としていた過去があるが、フォトンライナー貨物車両が運送を始めてからはパン食を浸透しつつある。
嗜好品としてはリンゴ、イチゴ、スイカなどの果物が挙げられる他、それを使った果汁ジュースが主で、お茶類、コーヒー、煙草の類はごくわずかな地域で愛される特産品扱いで浸透はしていない。ただ、販路がいずれかの州都にさえつけばすぐにでも一気に浸透することは疑いなく、もう間も無くであるとされる。
近年は魔術結晶を利用したホットファームと呼ばれる私たちの世界における「ビニールハウス」のような農法も確立されており、季節を超えて様々な果物を楽しめる。
近年では魔術を使い果汁ジュースに空気を含ませた「炭酸ジュース」が新感覚として注目を集めており、チパランド中でチェーン店が見られる。
ただし、私達の世界のタピオカやナタデココなどのような一過性の流行であり、ひとときの夢である。
チパランドの地理
世界の壁で四つに分たれたチパランドだが、その大きさは私達の世界のオーストラリア大陸程度である。
ここではそんなチパランドの地理について説明していく。
世界の壁
大陸を四つに分けるどこまでも続く黒い壁、それが世界の壁である。
堕神戦争を終わらせるために召喚された異世界の邪神により作られたとされている。
時空間そのものを歪めており、世界球を形作る壁「フォルト」と同質の物質で形成される壁である。
誤解を恐れずに表現するなら、チパランドは四つの世界に分割された上で綺麗にくっついている状態である、と言える。
物質で形成された壁である以上、チパランド人が魔術を使えば操作が可能であるはずだが、異世界の邪神によるものとはまた異なる力により、チパランド人の魔術を弾いているらしい。
北西州
4つに分割されたうち、もともと首都と呼ばれていた街を有していた州で、現在でも最大の人口を持つ。
州都はかつて首都であったルプスがそのまま使われている。
下水道が完備され、格子状に道が広がる整備された街。魔物の襲撃対策などにより外縁部は人工林が広がっている。
平原が多く、農地として使われている事が多いが、南に行けば行くほど山が多い起伏の激しい地域となっており、山に囲まれ盆地となっている南東の平たい土地にはシュラウド森林という深い森林が広がる。
南西州
元々シュラウド森林やそれを囲う山々と繋がっていたため、森林と山に囲まれた州。
州都「ランバージャック」も森を切り開いて作られた都市であり、都市の維持のためにも林業と狩猟業が主な生業となっている。
森林に囲まれた起伏の激しい土地のため、麦を作るのには向かず、長く狩猟による肉と僅かな土地で育てた野菜が主な食料だった。
また、南西州中央付近には周辺の気候状況を完全に無視した熱帯雲霧林が広がり、しかも年々と拡大を続けており、ランバージャックや普通の森林が飲み込まれないかどうかは、南西州の多くの人々の不安事項となっている。
しかもこの熱帯雲霧林はどういうわけか膨大なサーキュレタリィリソースを有しており、極めて強力な魔物が徘徊している。
この地は竜使い達が初めてこの世界に降り立った場所とされており、かつてはドラゴニア平原と呼ばれる平原であったらしい。
ランバージャックの民の中には異常発生した熱帯雲霧林はウィバン山に住む竜使い達がもたらした災禍である、と信じる者達もいる。
熱帯雲霧林と化したドラゴニア平原の外縁部には畑とラビット、トゥーバードでささやかな生活を続ける集落「ポトフ」が存在する。
その周囲にはもはや由来すら分からない古い遺跡が眠っている。
南東州
北西州の州都に次ぐ人口を持つ発展した襲撃都「コンビナート」を持つ州。
北にわずかに世界の壁を超えて存在している「ザ・マウンテン」(後述)の麓部分で独自に魔術結晶を採掘し、魔術結晶技術を最大限に活用した都市計画を実施している。
また、独自の武装組織「グン」を形成している。
コンビナートは二層構造の美しい街だが、その一方で十分な稼ぎを持たない貧民は日の当たらない下層での生活を余儀なくされている。
南東州のコンクエスター本部も下層にある事から南東州政府から見たコンクエスターの位置づけがわかる。
しかし、コンビナート下層に住める人間はまだいい方で、それだけの稼ぎすらない人間は、棄てられた旧州都の廃墟に住んでおり、南東州の手の及ばない独自のコロニーを形成している。
この旧州都の民の中には盗賊団を形成して生きる者達も少なくなく、小規模なものはコンクエスターが、大規模なものにはグンが、対処にあたる。前者は日常茶飯事と化しており、扱いが悪いなりに南東州に住むコンクエスターの安定した稼ぎとなっている。
東にはラスクという港町があり、美しい大きな魔術結晶式の灯台で有名。
潮流とうまくかち合った場所で、新鮮な魚が多く水揚げされる。
北東州
魔術結晶の一大山地「ザ・マウンテン」を始めとした魔術結晶の鉱山を多く持つ州。
ザ・マウンテンを始めとした鉱山に多くの事業を講じているのもあり、州都「カナリア」はかなり小規模な街である。
小規模さゆえに対魔物用の防御は十分と言えず、カナリアの近くに3つの要塞「オリハルコン」「ミスリル」「アダマンタイト」を持ち、サーキュレタリィリソースの流れを意図的に遮る事でここに魔物を集めて対処している。
武器
魔術を誰もが使えるチパランドにあっても、戦争にせよ魔物退治にせよ、主に使われるのはやはり武器である。
ここではチパランドで用いられる武器について簡単に説明する。
片手武器
チパランドにおいて、もっともよく使われる武器は片手武器である。これは先に述べたとおりチパランド人のほとんどが魔術と武器を併用するためで、魔術の行使には片手を開ける必要があるからである。この性質上、チパランドにおいてはあまり集団戦法の前衛に防御役を置く、と言った役割以外で盾が用いられるケースは少ない。
主に使われるのは「片手剣」「騎士剣」「メイス」「ハンドアックス」「レイピア」「エストック」「ダガー」などである。
※騎士剣
騎士剣は現実世界のそれとは少し違う、チパランド特有の武器である。これは片手剣よりは大ぶりで両手剣よりは小さく、先端は尖っているが、片刃、と言った特徴を持つ。
これは純粋な戦闘用武器として両手で持って使うことも、魔術を併用しての戦闘のために片手で持って使うことも出来、切断以外にも刺突と殴打も使える、という特徴を持つ。
非常に扱いにくい武器だが、古くからチパランドの騎士が使う武器として広く知られている。
両手武器
多くの場合魔術が併用されるチパランドではあるものの、魔術があまり得意ではない、という人間も存在はする。そんな彼らは多くの場合、両手武器を使用することが多い。一般的な魔術の行使は出来ないが、その分を両手持ちの力で補う強さがある。
主に使われるのは「両手剣」「戟」「槍」「アックス」「大型ランス」「カタナ」(と「騎士剣」)などである。
※カタナ
カタナは北東州で開発された新型の両手武器である。
もともと神話で語られていた武器であり、北東州の武器鍛治師がこれを再現しようと試みた結果生じた武器である。
このカタナは周囲や持ち主の魔力を吸収する性質があり、十分に魔力が充填された状態で特殊な構えから技を放つと、魔術らしき不思議な力が発動するという性質を持つ。
また優れた魔術師はこれを後述の杖として扱うこともできるらしい。
射撃武器
遠距離から攻撃するなら魔術という手段があるこのチパランドにおいて、あえて武器で遠距離攻撃を行う、というケースは滅多にない。
ただ実体弾を打ち出す武器はこちらが高所を取っている場合にはより遠くに攻撃できて有利だったり、放物線を描く弓は遮蔽物を無視した曲射が可能だったり、また集団戦においては一律同じ性能の攻撃を放てる方が有利な場合もあったり、とメリットもあるためチパランドにも存在はする。ただ、使用する人間はあまり多いとは言えない。
主な種類は「弓」「連弩」「クロスボウ」「ハンドガン」「ライフル」などである。
※銃
チパランドには火薬は存在しない。ではどうやって弾丸を放つかというと、「爆発銃」「空気銃」「蒸気機関銃」の三種類が存在する。三つ目の「蒸気機関銃」は砦などに設置される大型の大砲やガトリング銃に使われるものなのでここでは除外する。
爆発銃は使用者の爆発魔術で弾丸を発射する銃である。火薬を雷管で叩く代わりに魔術で代用した形である。性質上、魔術発動位置を誤ると銃自体が爆発し、銃が使い物にならなくなる危険もある。
空気銃は爆発魔術の代わりに風の魔術で弾丸を飛ばす銃である。音が鳴らないことと破損の危険がないことがメリットであるが、代償として射程や威力は爆発銃に大きく劣る、というかなり致命的なデメリットもある。
またこういった方式で打ち出す仕様上、チパランドの銃には引き金は存在しない。
魔術武器
純粋な魔術行使を得てとする戦闘員が魔術のみによる戦闘を行う場合にそれを支援するための武器が魔術武器である。基本的に棒状のため、殴打にも使えそうに見えるが、基本的に繊細な構造をしているため格闘武器として使うのは推奨されない。
また、自身の外部器官として認識させるため、生成過程に使用者の血を使うため、基本的に作成はオーダーメイド、貸し借りも不可能である。
主な種類として「集中杖」「拡散杖」「魔術盾」がある。
※杖
杖は魔術師の外部器官として働く武器であり、その性質は拡散杖を見るとわかりやすい。
拡散杖は先端がいくつもに枝分かれした形をしており、この枝分かれした先端一本一本を手の先として魔術を放てる。優れた魔術師でも両手の十本から魔術を放つのが限界と考えると。拡散杖の強さを想像しやすいかもしれない。高価な拡散杖になると100以上に枝分かれした先端を持ち、100を超える魔術を弾幕のごとく発射可能。もちろん、それだけの制御が可能な実力があればの話である。
一方で集中杖は魔術の効果を強化するような性質を持つ宝玉が先端についており、これにより素手の魔術行使よりも高い効果を得られる。
ちなみにこの二種類をいいところどりしようとした中途半端な杖も考案されたことがあるが、あまり流行らずに終わっている。
また、杖は純魔術師の象徴であり、絢爛さを競い合う風潮がある。
※魔術盾
魔術盾は両手で保持することを求められるほどの巨大なタワーシールドである。
この盾は敵の攻撃を防ぐことでその攻撃に含まれる魔力を吸収する能力を持ち、使用者は必要に応じて盾に溜め込まれた魔力を使って魔術を発動させることができる。
ただ、純魔術師は通常、後衛にいることを望むため、最前衛に置くことを前提としたタワーシールドとは明らかに相性が悪い。
堕神戦争の最中に開発されたものらしく、魔術師に盾役を兼ねさせなければならないほどに厳しい戦いだった、という話のタネによく使われる。
精霊武器
チパランドにおける伝説の武器、それが精霊武器である。
かつて堕神戦争の中で神が作り出し、やがて一部の人間も作り上げることに成功し、そして、今となってはすっかりとその製法が失伝している。
チパランドで語られる伝説の戦士達の物語にはほぼ必ずこの精霊武器がセットで登場する。中には箔付けのためにでっち上げられたものもあるため、全ての精霊武器が実在するわけではないにしろ、少なくとも精霊武器という存在が実在することだけは、現存することが確認されている僅かな精霊武器からも判明している。
これは気体の状態にある精霊を封じ込め、不思議な能力を宿した武器であり、その能力は様々だが、魔物の"破壊"の影響を受けないという共通した特徴を持つ。
精霊
精霊について解説する。
精霊とはなんらかの要因で魔力が変質し固まったもので、チパランド人の多くは生きている、と信じている。
周囲の魔力状況により固体の姿と気体の姿を変化させる。
固体の姿では双角錐状の結晶の姿を取り、空中を漂っている。
周囲の魔力を吸収し、成長する。魔術などを使い人間を襲うこともある。
この状態の精霊の事を、チパランド人は「エレメンタル」と呼んでおり、なんらかの要因でカケラが分離した際には、それを賜り物として活用する。
気体の姿では、色のついた光る煙のような姿で風ではない、なんらかの流れに沿って移動する。
自身に溜め込んだ魔力を代謝(精霊生命体説に則った表現)し、周囲にばら撒きながら進むため、気体の姿をした精霊の周囲は極めて高い空間魔力量を持つ。
この状態の精霊の事をチパランド人は「マナ」と呼ぶ。
※精霊は生きているのか
チパランド人の学者の中でさえ判断が分かれるテーマである。
非生命説では、空間魔力量が十分あるところでは魔力を溜めて固体の姿を取る。人間を襲うのも人間の持つ魔力を奪おうとするからで、魔術が発動するのも、その結果生じる見かけ状のものである。また、周囲の魔力がなくなると固体の姿(魔力を貯めるための外郭)を維持できなくなり、魔力をばら撒いてしまいながら、気体の姿へと返っていくとされている。
生命説では、それらを意志を持って行なっているとしており、気体の姿はむしろ魔力噴出により魔力量が多い場所へ向かおうとする生命機能によるもので、魔術を使うのは感情を持つ証拠であるとされている。
さらにここに精霊が生命だと信じられているからゆえか、エレメンタル型の魔物も存在しており、話をややこしくしている。
答えはもちろん決まっているのだが、明かす意味もないだろう。
このセクションを読んでいるあなたが精霊を物語に登場させる時、意識を持っているものと扱ってもいいし、持っていないものと扱ってもいい。いずれにせよ精霊は物を言わない。その物語の中で描かれた精霊の動きだけが確かな事実である。