Vanishing Point 第6章
分冊版インデックス
6-1 6-2 6-3 6-4 6-5 6-6 6-7 6-8
惑星「アカシア」
そこで暗殺者として裏社会で生きる「グリム・リーパー」の三人は
ある日、
依頼を受けては完遂していく三人。しかし
そんな折、
チケットを譲り受けた辰弥は雪啼を連れて遊びに行くが、それは日翔が自分の
普段の怪力はそのALSの対症療法としてひそかに導入していた
突如乱入してきたカグラ・コントラクター特殊第四部隊隊長の
前回の依頼から数日、いつものように料理をしている
微笑ましく見守っていたりした
その結果、「
その際に
通話が終わり、
しかし雪啼はカッターナイフで遊んでおり、それを止めようとした辰弥は彼女を傷つけてしまう。
その血を舐め、さらに血が欲しいという衝動に駆られる辰弥。それは抑えたものの雪啼を怯えさせてしまう。
「あきと、パパこわい」
「辰弥が……?」
どういうことだと訝しんで辰弥を見る日翔。
その辰弥の手に刃が剥き出しになったカッターナイフが握られているのを見て顔色を変える。
「辰弥! お前、何を!」
「違う。雪啼が刃物で遊んでたから取り上げただけ」
ドアを開け放し、雪啼を抱えて乗り込もうとする日翔に辰弥が慌てて言い訳をする。
「雪啼がカッターナイフでソフビ人形をばらばらにして遊んでたんだ、危ないから……」
カッターナイフの刃を収納し、辰弥が日翔に見せつけるように手渡す。
「なんで雪啼にカッターナイフ渡したの。危ないのは分かってるよね?」
「え? 俺雪啼にカッターなんて渡してないぞ」
雪啼を床に下ろし、カッターナイフを受け取った日翔が首をかしげる。
「それに……うちにそんなデザインのカッターあったか? お前いつも使うメーカー決めてるだろ、見たこともないが新モデルか?」
カッターナイフをまじまじと見つめながら日翔が辰弥に訊く。
そう言われて、辰弥も改めてカッターナイフを見た。
普段自分が使っているものに似てはいるが、細部が違う。
決定的な相違点はカッターナイフにメーカーのロゴの刻印がないこと。
明らかに、家に置いているものではない。
それなら、一体誰が、何処から持ち込んで雪啼に渡したのか。
「雪啼、誰からもらったの」
しゃがんで雪啼に目線を合わせ、辰弥が訊く。
しかし、雪啼は彼を見ることなく顔を背け、日翔の脚に顔をうずめる。
「……辰弥ァ……」
呆れたように日翔が呟く。
「よっぼど怖がらせたんだな、お前。怯えてんじゃねーか」
「……」
ダメか、と辰弥が呟く。
その時、雪啼の手に何かが握られていることに気が付く。
「……雪啼?」
よく見ると、それは別のカッターナイフだった。
先ほど辰弥が奪い取ったのと同じデザイン、彼女はまだ隠し持っていたらしい。
「……雪啼」
ちら、と雪啼が辰弥を見る。
それから、
「パパのばかー!」
そう叫び、辰弥に向けてカッターナイフを振り下ろした。
「うわっ!?!?」
咄嗟に辰弥が回避、雪啼の腕を掴む。
「危ないからダメだって!」
「むぅー!」
激しい抵抗を受けたものの二本目のカッターナイフをもぎ取り、辰弥はいつになく強めの口調で、
「そんなにパパのこと殺したいの?」
そう、言い放った。
辰弥の強い言葉に雪啼が一瞬、キョトンとする。
が、次の瞬間、わっと泣き出して再び日翔の脚に顔をうずめた。
「……辰弥ァ……」
流石にお前、言いすぎだろと日翔が辰弥をたしなめる。
だが、辰弥は首を横に振ってそれを否定する。
「こっちは何度も危ない目に遭ってるの。いくら子供でもやっていいことと悪いことがある」
本当はお尻を叩きたいところだけど、とぼやきつつ辰弥は日翔から一本目のカッターナイフを受け取り、部屋を出る。
「とりあえずこれは処分するよ。何があるか分からないから。あと、出どころは気になるけど――この調子じゃ教えてくれないだろうね」
ちら、と日翔の脚にしがみついて泣く雪啼に視線を落とし辰弥が自分に言い聞かせるように言う。
雪啼がどこでこのカッターナイフを入手したのかは結局分からずじまい。
ただ、他に危ないものがあったら、と想定して一度部屋をちゃんと調べるか、と考える。
しかし、日翔の来るタイミングが遅くて助かった。
――もし、見られていたら。
先ほどの
雪啼に危害を加えるかもしれないと隔離されたのか、それとも
いずれにせよ、日翔には知られずに済んで助かった、と辰弥は心底そう思った。
流石にあの姿を見られていれば日翔も「何かある」と思うだろう。
いや、既に「何かある」とは分かっていてもその「何か」が危険なものだと思うに違いない。
そう考えれば本当に運がよかった。だが、それだけである。
幸運なんてものはそう何度も続かない。
今後、あの衝動が雪啼の前で起きないことを、と思いつつ辰弥は雪啼の部屋を出た。
◆◇◆ ◆◇◆
「いいね」と思ったらtweet! そのままのツイートでもするとしないでは作者のやる気に大きな差が出ます。