Vanishing Point 第6章
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惑星「アカシア」
そこで暗殺者として裏社会で生きる「グリム・リーパー」の三人は
ある日、
依頼を受けては完遂していく三人。しかし
そんな折、
チケットを譲り受けた辰弥は雪啼を連れて遊びに行くが、それは日翔が自分の
普段の怪力はそのALSの対症療法としてひそかに導入していた
突如乱入してきたカグラ・コントラクター特殊第四部隊隊長の
前回の依頼から数日、いつものように料理をしている
微笑ましく見守っていたりした
その結果、「
その際に
通話が終わり、
しかし雪啼はカッターナイフで遊んでおり、それを止めようとした辰弥は彼女を傷つけてしまう。
その血を舐め、さらに血が欲しいという衝動に駆られる辰弥。それは抑えたものの雪啼を怯えさせてしまう。
騒ぎに
フルダイブVRシミュレーションでトレーニングを行う
そこへ
いつものごとく日翔がCCTのTVアプリでニュースを見ている。
流れてくるニュースはここしばらくでお馴染みとなってしまった吸血殺人事件。
《――遺体は同一町内の同一番地内で複数発見されており、当局は被害者の関係も含めて調査を開始したとのことです。なお、今回発見された遺体は一部が焼け焦げた上に一部欠損しており、周囲に火の手が見当たらなかったことから、犯人が遺体だけに火をつけたものとして調査を――》
「……辰弥、今回は一度に複数見つかったってよー」
テーブルの向かいに腰かけてぼんやりと考え事をしていた辰弥に日翔が声をかける。
それに何の反応も見せなかった辰弥だったため、日翔がもう一度声をかけると。
「……あ、ああ、複数って?」
一応は話が耳に入っていたのか、辰弥が反応する。
「ああ、今回は派手だな。まるで人間の肉を炙り焼きにして食べたみたいじゃないか。しかも一人分じゃ足りないかのように食い漁ってないか?」
ニュースをそのまま流しながら日翔が唸る。
「しかも、今回はかなり近所だよな。一件はこのマンションの住人らしいぞ」
「……マジか」
アライアンスに被害者が? と辰弥が呟く。
日翔が入居しているこのマンション、
これはアライアンス自体が加盟フリーランスの双助会のような役割を果たしているため何かあった際すぐに対応できるように、との配慮である。
当然、被害者側からのお礼参りの可能性もあるためこのマンションだけがアライアンスの管理下にあるわけではなく、上町府だけでも数件のマンションがセーフハウスとして準備されている。
日翔も万が一の避難先としてあてがわれているマンションは他にもあるが、現時点では特にトラブルに巻き込まれることがないため利用することはほとんどない。
それはともかく、住人に被害者が出たということはアライアンスのメンバーに被害者が、と考えるのは当然である。
もちろん、隠れ蓑として機能させるためにアライアンスとは何の関係もない人間もそれなりに居住しているが吸血殺人事件が騒がれる今、夜間に出歩くような一般の住人は恐らくいない。
辰弥の疑問に、日翔がCCTのメールボックスを開く。
「あー……アライアンスから通達来てるわ……チーム『ブロードソード』で一人殺られたってさ」
「……ほんとだ」
辰弥もGNSのメールボックスを確認し、眉間にしわを寄せる。
「これはかなりマズい案件になってきたね。流石に身内で被害者が出たらアライアンスも動くんじゃない?」
「……多分な。俺たちも動員されるんじゃね?」
そうなったら面倒だよなー、と日翔がぼやく。
「鏡介大丈夫か? あいつもやしだから狙われたら一発で殺られるぞ」
「まぁ、鏡介は基本的に出歩かないから」
本人が聞いていたら確実に怒るだろう表現を使いながら二人が話し合う。
口こそは悪いが、辰弥も日翔も鏡介のことは心配している。
この吸血殺人事件が近隣で頻発するようになってから、特に鏡介の「
通勤の配慮だけで済む問題かは分からなかったが、ただ共に仕事をする関係としてだけでなく、仲間として心配していた。
確かに、鏡介ほどのハッカーはそうそういない。いたとしても「グリム・リーパー」に協力してくれるとは限らない。
その点では鏡介を失うのは戦力半減にも匹敵する損失であるが、それ以上になんだかんだで話を聞いてくれる、世話を焼いてくれる彼を手放したくはなかった。
なんとなくの不安はある。
何かきっかけがあれば鏡介は「グリム・リーパー」を離れるのではないかという。
辰弥と日翔は鏡介を仲間として認めてはいるが、鏡介はどうなのか、と。
ただの「仕事仲間」として見ているだけではないかという思いもある。
実際、日翔と辰弥は同居しているが鏡介は同じ建物の別の部屋にいる。
単純に辰弥の身元がはっきりしていないから日翔が居候させているという話でもあるのだが、鏡介は辰弥の引き取りを拒んでいたし少し二人から距離を置いているようにも見える。
実際はどうだろう、と思いつつも結局聞き出せていない鏡介の本音。
辰弥とは四年の付き合いとはいえ、日翔と鏡介の付き合いはもっと長い。
鏡介の奴、本当はどうしたいんだろうかと日翔が考えていたら不意に
辰弥がGNSで応答し、玄関に向かう。
「やっほー、せっちゃん元気にしてる?」
辰弥に連れられて入ってきたのはメッセンジャーの
「あー、姉崎か。ってことは『仕事』か?」
茜の姿を見るなり、日翔が「またか」と言わんばかりの顔をする。
「まあまあ、気にしてたらハゲるわよ。ということでし・ご・と」
「うへぇ~」
がくり、と日翔が肩を落とす。
「最近、ヤバい案件多すぎだからいやだ~」
その日翔の言葉が半分冗談であるということは辰弥も理解している。
依頼を受けなければ日翔は両親が遺した借金を返済できない。
それでも、嫌だと言いたくなることもあるのだろう。
だから辰弥も敢えてそれには触れず、
「……できれば楽な仕事であってほしいけど」
そう、呟いた。
「うーん、
「マジ?」
雪啼いるんだけど? と、茜の言葉に辰弥が抗議する。
「それは私にも仕事が来たわ。せっちゃん預かるから」
「マジか」
再び辰弥が抗議するかのように唸る。
「最近、この辺で吸血殺人事件が増えてるけど、大丈夫?」
心配なのはそこである。
うっかり雪啼が外に出て事件に巻き込まれるようなことがあった場合、両親を発見した場合に申し訳が立たない。
ましてやアライアンスのメンバーにも被害が出ている以上、多少腕に覚えのある人間でもターゲットになりかねない、ということ。
それを考えると身体能力が高めの雪啼であってもまだ五歳児、到底太刀打ちできるものではない。
そうでなくても子供の誘拐などよくある話なので辰弥も日翔も外出の際は警戒を怠らなかったのだが。
「大丈夫よ、せっちゃんには申し訳ないけどなるべく外に出さずに面倒見るから。そのためにわたしも一週間缶詰よ」
「……了解」
それでも、心配だと思いつつ辰弥は頷いた。
それから、茜からデータチップを受け取る。
「一週間の出張って、何するの」
辰弥ががそう尋ねると、茜は軽く肩を竦め、それから、
「要人護衛らしいわ。
辰弥と日翔の反応を察したか、茜が軽口を叩こうとして謝る。
そのタイミングで再びインターホンが鳴る。
誰だ? と日翔が応答し、玄関に移動する。
「……アライアンスに要人護衛の依頼って珍しいよね」
玄関に移動する日翔を横目で見ながら辰弥が呟く。
「普通、要人護衛なんてメガコープならお抱えのSPくらいいると思うけど」
「それも、全く信用できないらしいし、
そんなやばい案件受けたの、と辰弥が驚く。
「正直なところ、受けたくないって思いたくなる案件」
普段なら特に文句を言うことなく「分かった」と言う辰弥が珍しく消極的な発言をする。
それと同時に、リビングに人影が増える。
「話は聞いた。要人護衛なんて俺たちらしくない」
ぬっ、と鏡介が姿を現しながらそう言う。
「あ、鏡介来たの」
今の来客、鏡介だったんだ、と辰弥は彼に視線を投げた。
「先に姉崎から連絡来てたからな、一緒に話を聞こうかと」
ついでに打ち合わするか? 姉崎も巻き込んでるみたいだからと言う鏡介に「そうだね」と頷く辰弥。
「雪啼、悪いけど部屋で遊んでて」
雪啼にはあまり聞かせたくないから、と辰弥が部屋に誘導する。
「えー」と言いながらも雪啼が部屋に連行され、次いで辰弥の「ちょっと待ったー!」という叫びが聞こえてくる。
「……なにやってるんだあいつら」
鏡介が少し引きながら呟くが日翔は日常茶飯事だとばかりに「多分、本棚を登った」と返す。
「いやいやいやいや本棚登るって猫じゃあるまいし」
にわかには信じられなかったのだろう、鏡介が否定するが辰弥が少々げっそりしたような顔で出てきたことで「マジか」と呟く。
「ごめん、待たせた」
雪啼のことは話題にしたくない、とばかりに辰弥が鏡介を見る。
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