Vanishing Point 第9章
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惑星「アカシア」
そこで暗殺者として裏社会で生きる「グリム・リーパー」の三人は
ある日、
依頼を受けては完遂していく三人。しかし
警戒はしつつも、雪啼と
その後に受けた依頼で辰弥が
まずいところに喧嘩を売ったと思うもののそれでも依頼を断ることもできず、三人は「サイバボーン・テクノロジー」からの要人護衛の依頼を受けることになる。
しかし、その要人とは
最終日に襲撃に遭い鏡介が撃たれるものの護衛対象を守り切った三人は鏡介が内臓を義体化していたことから彼の過去を知ることになる。
帰宅してから反省会を行い、辰弥が武器を持ち込んだことについて言及されたタイミングで、御神楽
「それは貴方が
確保するという久遠に対し、逃走する辰弥。
しかし、逃げ切れないと知り彼は抵抗することを選択する。
それでも圧倒的な彼女の戦闘能力を上回ることができず、辰弥は拘束されてしまう。
捕えられた
一人は
「吸血殺人事件がまた発生したわ」
「……そう、」
そう呟くように言った辰弥の声は重い。
「……だから、俺はやってないと」
「そうね、でも手口は仮に人間にできたとしても人間が血を奪う理由が見つからない。しかも最近は人肉まで口にしている様子もある――と考えると、ね……」
そう言ってから、久遠はほんの少しだけ考えるようなそぶりを見せた。
「……まさか、
ノインがここにいる以上、考えられるLEBは四年前に失踪したエルステ以外存在しない、それとも永江博士はまだLEBを隠していたの、と久遠は呟いた。
「……」
だから、俺はノインじゃない、と言いかけるが話がこじれそうでつい黙ってしまう。
「でも、これで貴方が吸血殺人事件の犯人ではないということがはっきりしたわね」
久遠がいささか悔しそうにそう言い、屈み込んで辰弥を見る。
「ノイン、教えて。永江博士が造ったLEBは本当に貴方が最後なの?」
「……知らない」
永江博士がどれだけのLEBを開発したかなんてものは知らない。
それに、自分はノインではない。
それなのに久遠は頑なに自分をノインだと認識している。
むしろ四年前に失踪したエルステが事件を起こしていると思い込んで。
「第二研究所発のLEBでしょ、貴方は。どうして知らないの」
「……違う」
たまらず、辰弥はそう答えた。
違う、俺はノインなんかじゃない。そう、久遠を見る。
「ノインじゃないって……エルステは四年前に失踪したきり生死不明よ? あれから御神楽の力で桜花で発生した全ての死体を確認してる。でもエルステの死体が確認されたって報告は上がってない。生きてるかもしれないと思ってるけど、そんな、今まで私たちの目から逃れてきたのよ? それをこのタイミングで都合良く現れるなんて考えられない」
四年前の襲撃で、ナノテルミット弾に焼かれたと考えた方がまだ辻褄が合う、と久遠は呟いた。
「……」
――まぁ、こっちも姿を見せる気はなかったけど。
言葉にはせず、辰弥は久遠を見続ける。
「それとも、永江博士以外にLEBの研究を再開したところがあるというの?」
あり得ない、と久遠は唸る。
「永江博士が生み出したLEBはたった一つの欠点を除いて完成されたと言ってもいい。あれほどの遺伝子工学の天才でなければ漏洩した僅かな資料から研究を再開させるなんて不可能よ」
「欠点?」
思わず辰弥が訊ねる。
そもそも自分の時点でほぼ完成されたと言われていたのだ。第二世代は永江 晃によって様々なカスタムを施されているらしいが、そこに欠点があるというのか。
ええ、と久遠が頷く。
「貴方たちは理解してるかどうかわからないけど、第二世代LEBは造血機能が圧倒的に低い。そして、血を作り出せなければ武器が作れない貴方にとって『輸血されない』は相当辛いはずよ。経口摂取でも補充はできるらしいけど、それでもノイン、そろそろ血が欲しいんじゃなくて?」
「……」
血が欲しい、それは事実だ。
あの久遠との戦闘で使用した血液を考えると現在の造血機能では全力を出すほどの血が作り出せていない。
どうしても輸血、または経口摂取で血液の補給は行っておきたかったところだがその対策だろう、捕えられてから辰弥には血液は一滴も与えられていない。
しかし、第二世代のLEBにそんな欠陥があったとは。
そこまで考えてから辰弥はふと心当たりに思いついた。
――せっちゃん、造血機能がひどく低いの。ほとんどないって言ってもいいかもしれない――。
「……
思わず、辰弥が呻くように呟く。
まさか。いや、やはり雪啼は――
「どうしたの?」
久遠が首をかしげる。
「雪啼、ああ、そういえば貴方父親の真似事してたみたいね」
その辺りは調査済みよ、と久遠が続ける。
「LEBでありながら、人の親として生きていたかったの?」
だったら、と久遠は提案した。
「一般市民になりなさい。監視下に置かれるという条件はあるけど、能力を使わない限り私たちは干渉しないし結婚だって――」
「違う、そうじゃない」
久遠の言葉を、辰弥が否定する。
「俺が望んでるのはそういうことじゃない」
「じゃあ、何を――」
そう言った瞬間、久遠は眉をひそめた。
耳元に手を当てたことで辰弥は彼女に何かしらの通信が入ったことを察知する。
「……嘘でしょ!?!? ここまで来て、振出しに戻ったって言うの!?!?」
GNSによる通話のため、辰弥は久遠が何を話しているのかは分からない。
それでも、久遠が自分を見たことによって話題の主軸が自分にあることを察する。
「……分かったわよ、確認すればいいんでしょ? でも違った場合――大変なことになるわよ」
そんなことを言いながら久遠は通信を終了し、辰弥に手を伸ばした。
まずい、と辰弥がその手をかわそうとするが食事時でも何でもないためGNSロックは全身の動きをほぼ封じており、抵抗することすら叶わない。
久遠が辰弥からジャケットをはぎ取り、上半身を押さえつけ、Tシャツに手をかける。
「ちょ、やめろ――」
辰弥の制止も聞かず、久遠は強引に辰弥のTシャツを脱がせた。
細身だが引き締まった上半身が露になる。
「――っ」
久遠が息を呑む。
「嘘……でしょ……」
信じられない、と久遠は辰弥の顔を身体を交互に見比べ、それから何かに気づいたように彼の左鎖骨のあたりを爪でこすった。
シールをはがそうとするかのように何度かこすると本当に何かが貼ってあったかのように皮膚の一部がめくれる。
それを摘まんで剥がすと、人工皮膚の下からバーコード状のタトゥーが現れた。
「……まさか……」
久遠が義眼のスキャン機能でバーコードをスキャンする。
その結果がGNSを通じて視界に表示される。
久遠の眼が、義眼の絞りが人間の瞳孔のように開かれる。
「……本当に……エルステ……?」
そう言った久遠の声が震えている。
そんなはずはない、どうしてこんなところにいるのという響きが声に含まれている。
辰弥が久遠に鋭い視線を投げる。
「……あんたの言う『一般人』とは少し違うけど、一般人として、生きてたよ」
久遠を睨みつけ、
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