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Vanishing Point 第3章

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 惑星「アカシア」桜花国上町府うえまちふのとある街。
 そこで暗殺者として裏社会で生きる「グリム・リーパー」の三人は暗殺連盟アライアンスから依頼を受けて各種仕事をこなしていた。
 そんなある日、辰弥たつやは自宅マンションのエントランスで白い少女を拾う。
 家族のことも何も分からないという彼女は何故か辰弥のことを「パパ」と呼び、懐いてくる
 外見の相似から血縁関係を疑われる辰弥であったが彼はそれを否定、それでも少女が彼に懐いていることから日翔あきと鏡介きょうすけを含めた三人は身元が判明するまで少女を預かることにし、「雪啼せつな」と名付けたのだった。

 

 あかねから「仕事」の依頼が届いた辰弥たつやは依頼のあらましを聞き、食事を開始する。
 そんな折、待っていた雪啼せつなが辰弥に勢い余ってスプーンを口に突っ込んでしまったりする。

 夜、雪啼せつなを寝かしつけた辰弥たつやは今回届いた依頼についての打ち合わせを開始する。
 今回の依頼はとある企業のサーバ破壊かとぼやく日翔あきとだが、そのタイミングでなぎさが来訪、辰弥に「ピアノ線を使うな」と宣言する。

 

 
 

 

 依頼の決行当日深夜。
 対象のビルに潜入するためにスタート地点に向かっている日翔と鏡介の連絡を待ちながら、辰弥は現場から約一キロメートル離れたビルの屋上ヘリポートで待機していた。
 その間、いつものゲン担ぎでニュース配信チャンネルを開く。
《――先日発見された変死体についての続報が入ってきました。当局の発表によると、この遺体も血液が全て抜かれていたとのことで、連続殺人事件として――》
 ――またか。
 茜の話が本当ならこれで四件目。
 気になって鏡介にも情報収集をしてもらったところ、一件目は報道では言及されていなかったが先日辰弥が斥候ポイントマンを務め日翔が暗殺を実行した天空樹建設の会長殺害の際に排除した巡回の警備員だった。
 彼を殺害したのは確かに辰弥である。だが、血を抜くという行為には及んでいない。
 実はあの現場に他に侵入者がいて、遺体から血を抜いたというのだろうか。
 二件目はその数日後、一件目とは別の地区で浮浪者が被害に遭ったという。
 これに関しては被害者は何故か全裸になっており、一件目と三件目との関連性は疑問視されている。
 三件目は辰弥の家の近所で起きた事件。この事件のことを茜から聞いたことで辰弥は三件目ということを知り、連続殺人事件なのか模倣犯なのかたまたま同じような猟奇殺人が行われただけなのか気になり鏡介に調査を依頼した次第だった。
 そして今回の報道で四件目と確定した一連の事件。
 四件目の初報は今回の依頼に関しての打ち合わせの翌日だった。
 辰弥の家の近所というほど近くではないがそれでも歩いて行けるくらいの場所で被害者は発生している。
 最初、ニュースではただ変死体が発見されたと報道されただけだったが流石に血液を抜くという異常な行為に最近はマスメディアも連続殺人事件のニュースとして取り扱うことにしたようだ。
(嫌な予感がするな)
 夜風に前髪を揺らしながら辰弥は目標のビルの方向に視線を投げ、それから足元のハードケースを開ける。
 そこに入っていたのは輸送のために分解されたスナイパーライフルT200 Arbitration
 ケースから取り出し、慣れた手つきで組み立て、スコープのカバーを開ける。
 銃身をチェックして問題がないことを確認し辰弥は改めてスコープ越しに対象のビルを見た。
 窓ガラスは防弾ガラスでもない限り普通に破れるだろう。
 位置取りの都合もあり、何かあった際は極力窓側に誘導しろと打ち合わせてある。
 鏡介によって機密度の高い軍事衛星の類まで追跡可能なレベルに改造された人工衛星追跡アプリを起動、現時点で目標の観測に最適な狙撃用観測衛星をサーチする。
(……ここからだとIoLイオルDead-Hawk EyeDHEか……)
 いつでもハッキングして利用可能となるように準備だけ行い、配置に付く。
 そのタイミングで、
辰弥Bloody Blue、配置に付いた》
 鏡介から通信が入った。
(了解)
 辰弥の視界の、邪魔にならない部分にビルの見取り図が表示され、日翔と鏡介の現在地が光点として表示される。
(GPSの感度良好。観測衛星DHEのハッキング準備もできてる)
 そう報告すると、鏡介から「大丈夫だ」と返事が来た。
《侵入は任せろ。日翔Gene、援護頼むぞ》
《そりゃ勿論》
 鏡介の護身術程度の実力では万一発見された場合、足手まといとなる。
 発見されないに越したことはないが排除した巡回が発見された、またはサーバーの破壊が察知された等で侵入が発覚すれば不利になるのは日翔たちの方である。
 いくら辰弥が狙撃で援護するといっても限度がある。
 今回はかなり危険な仕事になるな、と辰弥は小さくため息を吐いた。
 やはり俺も行くべきだったか? と考えるものの渚にピアノ線を禁止された以上万一囲まれても鮮血の幻影ブラッディ・ミラージュで一掃ができず、逆に大人数での侵入で察知される危険性が高まるだけだろう。
 これが最適解であるとは理解しているが、それでも胸を締め付ける不安は一体何だろうか。
 いや、こんな不安に負けていては何かあった時に致命的なミスを犯す。
 いつでも狙撃の態勢に入れるようにT200を抱え、辰弥はヘリポートの縁に腰を下ろした。

 

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