Vanishing Point 第7章
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惑星「アカシア」
そこで暗殺者として裏社会で生きる「グリム・リーパー」の三人は
ある日、
依頼を受けては完遂していく三人。しかし
警戒はしつつも、雪啼と
そんな折に受けた依頼、現場にに現れた
突如乱入してきたカグラ・コントラクター特殊第四部隊隊長の
まずいところに喧嘩を売った、と不安になる三人。そんな折、これまで何度か辰弥たちが破壊工作を行ってきた「サイバボーン・テクノロジー」が
雨の日。
突然現れた男たちに「僕」の母親はどこかへと連れ去られていく。
今回の依頼は「サイバボーン・テクノロジー」の重役の護衛。しかしその護衛対象の女性は
そんな折、
護衛対象とゲームに興じる
護衛対象は
「どうする、BB」
日翔が倒れた男の手元から銃を蹴り飛ばし、辰弥を見る。
辰弥はというと何かを考え込むかのように眉間にしわを寄せていたが、すぐに日翔を見て、それから何かを押し付けてきた。
「え、一体何を――って!」
日翔が驚きの声を上げて自分の手元、辰弥が渡してきたものを見る。
それは、日翔が普段の依頼で使用している
いや、よく見れば細部が違う気がしないでもないがそれでも使い慣れた銃とそのマガジン数個が日翔の手の中にある。
「ごめん、準備が遅れた。それ使って」
いささか青白い顔をした辰弥も普段愛用している
「おま、これ、どうやって……」
入館時に受けた厳重なチェックを思い出し、日翔が尋ねる。
だが、それには答えず辰弥は蹴破られた客室のドアから身を乗り出して廊下を確認した。
防衛システムが作動したことで館内に警報が鳴り響き、そこかしこから叫び声が聞こえる。
その防衛システムもこの部屋から離れたところでも作動していることを確認し、辰弥は今の襲撃で全てが終わったわけではないと判断する。
このままこの部屋にいては危険だ、と辰弥の本能が囁く。
ドアを蹴破られた時点でこちらは侵入者をひたすら防ぐ防衛戦になる。
しかし、一人でも乗り込まれればほぼこちらに勝ち目はなく、また、手榴弾でも投げこまれれば自分たちだけでなく護衛対象まで、全員が吹き飛ばされるだろう。
避難するしかない、と辰弥は考えた。
その上で、鏡介に指示を出す。
「Rain、『サイバボーン』本社に連絡を! ここも安全じゃない!」
「もう連絡済みだ、今装甲リムジンを手配してもらっている、五分後に到着する!」
自分に縋り付いて震える真奈美の肩を抱いたまま、鏡介が答える。
その判断と対応の早さにほっとしつつも、辰弥は廊下から身を乗り出して数発発砲、銃を構え迫る男を正確に撃ち抜く。
……だが、ふと不安を覚える。
「待って、向こうは『サイバボーン』の社員を偽装し、こっちの警備を把握してる。『サイバボーン』にスパイがいるのかも。『サイバボーン』の手配する車に乗るのは危険だ。アライアンスに連絡して、ポーターを手配して!」
「了解だ!」
鏡介が頷き、連絡役である茜に回線を開く。
「……事情は後で話す、装甲車を持ってるポーターを手配してくれ!」
そう一方的に告げて回線を切り、鏡介が辰弥に頷いて見せる。
日翔も銃にマガジンをセット、初弾を装填して鏡介と真奈美に移動するよう促す。
鏡介に肩を抱かれたまま、真奈美が姿勢を低くしたまま走り始める。
と、背後で防弾仕様の窓ガラスが破られ、室内に何かが飛来、床に転がるのではなく張り付いて点滅する。
遠隔操作の小型爆弾だ、と日翔が鏡介と真奈美を部屋の外へ突き飛ばし、自分も転がるように客室から出る。
直後、爆弾が爆発し、部屋の中のもの全てを吹き飛ばす。
「っぶねえ!」
少しでも反応が遅れていたら死んでたぞ、とぼやきつつ、日翔は突き飛ばした二人を助け起こした。
「Gene、助かった」
真奈美を抱えながら鏡介がそう言い、「大丈夫?」という辰弥の確認にも頷いて走り出す。
辰弥が先行して廊下を走り、鏡介に庇われながら真奈美が後を追う。
しんがりを日翔が務め、時折飛来する銃弾には当たらないことを祈りつつ四人は階段を駆け下りる。
「BB、正面ではなくて非常口に回れ! そっちに車を回してもらう!」
一階に到着したところで鏡介が指示を出す。
了解、と辰弥が頷き、それから周りを見た。
鏡介が非常口に車を回したのは正面入り口が既に封鎖されていたから。
正面からは誰も通さぬとばかりに多数の武装した男たちが待ち構えている。
防衛システムも動作はしているが、数人が
これを突破するのは辰弥と日翔の銃では不可能。
幸い、非常口は手薄になっていて、一同はすぐに外部への連絡通路に飛び込んだ。
しかし、そこで辰弥が足を止める。
「BB!?!?」
日翔が声を上げる。
急げ、どうして止まる、と。
「行って! 俺は後で合流する!」
通路に置かれたロッカーで遮蔽を取りながら辰弥が叫ぶ。
通路の向こうからは殺害対象が正面入り口ではなく非常口に回ったと察した男たちが迫り来ている。
このまま三人で車に向かったとしてもすぐに追いつかれ、車に乗り込む前に全員殺されるだろう。
それなら辰弥が一人残り足止めした方が少なくとも護衛対象は守り切る可能性が高まる。
少なくとも、護衛対象は。
だが、それをすれば――。
「BB、お前死ぬ気か!?!?」
お前を置いて行けるか、と日翔が怒鳴る。
それでも辰弥は「いいから行って」と振り返ることなく怒鳴る。
「俺よりも護衛対象の方が命は重いの! それにこの依頼、失敗すれば『サイバボーン』から報復を受ける可能性がある! だから行って!」
数発発砲しながら辰弥が続ける。その視線の先で数人の男が倒れるも、それを乗り越えるように別の男が迫ってくる。
男たちが撃つ銃弾が日翔の頬をかすめる。
「クソッ、いいからお前も来い!」
鏡介と真奈美を庇いながら日翔も応戦する。
しかし、それでも辰弥は頑としてその場を動こうとしなかった。
むしろ、正面からの攻撃に構わず振り返り――。
その銃声だけがやけに大きく響いて聞こえた。
「B、B……」
日翔がかすれた声で呟く。
「それ以上俺に来るように言うなら本気で撃つ」
日翔に銃口を向けた辰弥が冷たい声で宣言する。
「これはリーダーの命令、二人を連れて脱出して」
再び振り返り、辰弥は改めて迫りくる男たちに向かって発砲を始める。
その圧に、日翔は辰弥の意志の硬さを思い知った。
――そこまでして、お前は。
「Gene、もたもたするな!」
それでもなお、辰弥に手を伸ばそうとした日翔に鏡介が声をかけた。
「BBの覚悟を無駄にする気か! 信じろ、そう簡単に死ぬタマじゃないだろ!」
むしろこっちの方が重要だ、依頼を失敗させるわけにはいかない、と鏡介が続ける。
「……あ、ああ」
鏡介と真奈美を見て、それから日翔はもう一度辰弥を見た。
辰弥はこちらを一切見ることなく、正確に敵を排除しつつある。
――死ぬなよ。
そう、口にせず辰弥に語り掛け、日翔は辰弥に背を向けた。
鏡介と真奈美を庇うように通路を駆け抜け、非常口から外に出る。
その目の前に、一台の装甲車が急停車した。
「あんたらか! 今回の依頼人ってのは!」
後部座席のドアが開くと同時に助手席の窓も開き、運転手が叫ぶ。
「なんかヤバいことになってんじゃねえか、とっとと乗りやがれ!」
運転手の声に、日翔は前に出て辺りを見る。
装甲車の後方からは武装した車が、それ以外にも複数の武装した敵の姿が見える。
「マジで殺る気だな! Rain、走れ!」
こちらに向けて発砲しようとする敵に応戦するように発砲し、日翔が怒鳴る。
鏡介に誘導され、真奈美が装甲車に駆け寄る。
鏡介もそれに並走し、真奈美に手を貸して車に乗せようとして――
「――っ!」
日翔の死角、そして確実に真奈美を撃ち抜ける位置に控える敵の姿を視認した。
――マズい!
咄嗟に真奈美に覆いかぶさり、鏡介は同時に彼女を車に押し込むように突き飛ばした。
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