Vanishing Point 第7章
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惑星「アカシア」
そこで暗殺者として裏社会で生きる「グリム・リーパー」の三人は
ある日、
依頼を受けては完遂していく三人。しかし
警戒はしつつも、雪啼と
そんな折に受けた依頼、現場にに現れた
突如乱入してきたカグラ・コントラクター特殊第四部隊隊長の
まずいところに喧嘩を売った、と不安になる三人。そんな折、これまで何度か辰弥たちが破壊工作を行ってきた「サイバボーン・テクノロジー」が
雨の日。
突然現れた男たちに「僕」の母親はどこかへと連れ去られていく。
今回の依頼は「サイバボーン・テクノロジー」の重役の護衛。しかしその護衛対象の女性は
そんな折、
護衛対象とゲームに興じる
護衛対象は
武器持ち込み禁止のセキュリティホテルに武装した人間が乗り込んできたことで
護衛対象の
本来なら依頼最優先となるところではあるが、敵が真奈美の位置情報をロストしたらしいということで一同はひとまず
妨害も追跡もなく、装甲車は闇
日翔が入り口のインターホンにまくしたて、それによって呼び出された
「Rain、しっかりしろ!」
酸素マスクを被せられた鏡介に日翔が声をかける。
真奈美も日翔に続いて声をかけ、鏡介が小さく頷く。
施術室に鏡介が運び込まれ、「施術中」のランプが点灯する。
廊下の待機スペースに設置されたベンチに腰掛け、日翔は祈るように手を組んだ。
「鏡介……」
思わず、名前を口走る。
「あの子、鏡介って言うの」
日翔の隣に座った真奈美が、そう訊ねる。
「あ? ……ああ……」
依頼の最中は絶対に口にしてはいけなかった名前を口走ったことにようやく気付き、日翔は呆然としながら頷いた。
「……助かるといいけど」
私が狙われたばかりに怪我をさせてしまった、と真奈美は小さく呟き、それから彼女も祈るように手を組む。
「……一週間一緒にいただけの見ず知らずの私を庇うなんて、ほんと、バカね……」
「……」
真奈美の言葉に、日翔がはっとしたように頭を上げて彼女を見る。
――この人は、本当に。
鏡介が自分の息子だと知らないのだと。
鏡介という名前自体、本当の名前ではなかったのか、それとも、忘れてしまっているのか。
「……なあ、あんた……」
そう、言いかけて日翔は口を閉じた。
鏡介は自分が真奈美の息子であると告げていいのか一瞬迷う。
しかし、今更それを告げたところで何かが変わるとも思えない。
真奈美は「サイバボーン・テクノロジー」の重役社員であり、鏡介はしがないフリーのハッカー。立場が違いすぎる。
いや、真奈美が「一緒に暮らそう」と声をかける可能性は十分にある。
そこまで考えてから、日翔はほんの少しだけ「嫌だ」と思った。
鏡介は仲間である。それも、自分にはない技能を持った。
戦力が半減する可能性を考えて、鏡介を手放したくないと思ってから、日翔は「違う」とその思考を否定する。
単純に離れ離れになりたくないのだ。
技術面での仲間というだけではなく、共に生きてきた仲間として、離れたくない、と思った。
苦楽を共にして、時には命を救われて、また別の時にはその借りを返して、支え合ってきた。
それは四年前辰弥が転がり込んできたときもそうだ。
このメンバーで、ずっと続けていきたい。
そう思ってから、日翔はだが、と考える。
鏡介はホワイトブラッドに置換するほどの義体を身に着けている。
親が反
「ホワイトブラッドは穢れた血だ」と親に言われて育った日翔はホワイトブラッドだけはどうしても近寄りがたい存在だった。義体自体に忌避感はない。ホワイトブラッドさえ使わなければ日翔も義体への置換を受け入れただろう。
それを思い出してから、彼は自分の手を見た。
鏡介が負傷し、闇
乾いたホワイトブラッドがこびりつく自分の手を見て、日翔はどうすればいい、と自問した。
鏡介とは離れたくない。だが彼は義体装着者である。
両親が生きていれば確実に「そんな人間とは付き合うな」と言うだろう。
そして、親の言葉は常に正しい。正しいはずである。
それでも、義体というだけで鏡介を切り捨てていいのかという疑問が日翔に浮かぶ。
「……んなわけ、あるか……」
日翔が低く呟く。
真奈美が不思議そうな顔をして彼を見る。
手についたホワイトブラッドを握り潰すかのように拳を握り、日翔は目を閉じた。
「鏡介、助かってくれ……」
――親が何と言おうと、お前はお前だ。
祈るように呟き、日翔は両手を組んだ。
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